ついに姿を現した、ニコンの高性能フルサイズミラーレス「Z 8」。撮影性能や使い勝手の高さで定評のあるフラッグシップモデル「Z 9」の機能や装備をほぼそのまま継承しつつ、ボディをグッと小型軽量化したのが目を引きます。“Z 9ジュニア”というべき仕上がりのZ 8、いち早く手にして試した落合カメラマンも「こんなカメラを待っていた!」と大いに手応えを感じたようです。

  • “Z 9ジュニア”ともいえる高性能&小型軽量のフルサイズミラーレス「Z 8」が登場!

    “Z 9ジュニア”ともいえる内容のフルサイズミラーレス「Z 8」が登場! 歴代のニコンの「ひとケタ型番のフラッグシップ機相当の機能を持つ3ケタ型番モデル」をこよなく愛してきた落合カメラマンにいち早く試してもらった。Z 8の予想実売価格は60万円前後。Z 9は、5月18日に価格改定を実施することが発表され、ニコンダイレクトでの直販価格が772,200円に値上げされる

Z 9発表時から期待されていた“Z 9ジュニア”の登場

おそらく、多くの人が登場を予感していたハズだ。そのうちの何割かは、ニコン「Z 9」が出てきた瞬間、「カメラに関わる煩悩の一部」として、あたかも脊髄反射のごとく、当該の予感、いや、妄想がムクムクと沸き起こっていたものと想像する。

ニコンの新型FXフォーマットミラーレス機「Z 8」。「ついに出た!」「やっぱり出た!」「えー、こんなの出しちゃうの・・・」。ニコンZに一喜一憂し、Z 9の仕上がり(性能)に頷き、ニッコールZの拡充に胸をなで下ろしつつある・・・そんな「ニコンZの趨勢に着目してきた」人々の頭の中には今、さまざまな思いが駆け巡っていることだろう。

かくいうワタシは、Z 9がお目見えすると同時に「Z 8(のようなカメラ)」の登場を期待したクチだ。F5ではなくF100を、D3と併用しつつもD700を、さらにはD5ではなくD750やD850を現実に重宝してきた思考と指向と嗜好がそうさせたことは、同類のアナタなら先刻ご承知のことと思う。これは、要するに「Z 9に相似の性能をよりコンパクトに使いたい」というワガママなのだが、歴代の「そういうモデルたち」がきわめて有能かつ有用であったことは歴史に刻まれている厳然たる事実。Z 8に対する期待は、Z 9が誕生した瞬間から密かに盛り上がっていたのだ。

Z 9で評価の高い機能や装備を出し惜しみなく継承

まず最初に思わずオオッとなったのは、イメージセンサーのみならず、秒間コマ速やプリキャプチャーなど、いわば“動力性能”を示す部分がスペック上Z 9と同一であるところ。イメージセンサーは同じでもコマ速は落ちるなど従来、同様のポジションに位置してきたモデルにありがちだった「構造上、宿命的に存在する差別化」のようなものがZ 8には見当たらないのだ。

しかも、それがZ 6やZ 7シリーズと同じバッテリーで実現されている。そこにも驚いた。Z 8のような「フラッグシップモデルの小型版」実現にあたり、一番問題になるのが電源(バッテリーの電圧や容量の確保)であろうと考えていたからだ。果たしてどんな魔法を使ってその壁を越えたのか。気になるところである。

EVF周りも、光学系を含めZ 9と同等だ。Z 9で、そのあまりに素晴らしい仕上がりに驚かされた「あのファインダーの見え」が、体積比でZ 9より約30%もの小型化を実現している(質量は約430g減の)Z 8でも得られるのである。これはウレシイ。ボタンイルミネーションや赤色画面表示も同じく装備するなど、現場での使い勝手をフォローする縁の下の力持ち的な機能、装備にも一切の手抜きはナシだ。

Z 8の実機を半日使っての手応えは

そんなZ 8の実機に関して、ワタシは本稿執筆時点、わずか半日ほどしか使えていない状態なので、深イイ話はまだまだできない状態である。しかし、ファインダーが確かに「Z 9クオリティ」であることはしっかり確認。動体に対するシビアなフレーミングが容易であったり、露出補正の判断がしやすい(それだけ仕上がり印象に忠実な表示を見せる)ところは、完全にZ 9譲りの仕上がりだといっていい。

また、Z 9との比較では、なるほど小さくなっていることが明確なボディは、しかしミラーレス機として単体で見た場合には「堂々たるサイズ感&質量」であるとの判断もあり得るレベル。とはいえ、Z 9と同じEVFが備わるのであれば、このサイズ感に納得することも難しくはないはずだ。そもそも、Z 8のダイレクトな先達に位置づけられそうな「D850」との比較でも、Z 8は体積比で15%ほど小さくなっているワケで、歴代45MPフルサイズ機との比較において「大きさ、重さ」について文句を言われる筋合いはないと思うのである。

  • 各社のフルサイズミラーレスと比べれば確かに存在感のあるボディだが、性能や装備を考えれば不満はない。センサーへのゴミの付着を防ぐセンサーシールドもZ 9から継承する

そして、AF関連。Z 9でミラーレス機初採用となっていた3D-トラッキングAFをそのまま搭載するなど、フラッグシップモデルの実力を真っ直ぐに引き継ぎつつ、被写体認識の「飛行機」を独立枠に移行するなど独自の味付けも見せてきている。ただ、ひっくるめていえば「イイところも悪い(弱い)ところもZ 9と一緒」な感じ。これも半日使用のサラッとした印象でしかないのだが、相応に評価が分かれる可能性はありそうだ。

一方、スペック上ちょっぴり不安を抱かせる“燃費”については、現在までのところほぼ連写のみ(プリキャプチャ多用)の使い方において、4,700コマほど撮影したところでバッテリー残量表示が残り1セグメントになる(EVFやモニターでは赤色表示になる)実績のみが得られている。たった一度きりの実績なので、参考になるかどうかもアヤシい参考値に過ぎないのだが、連写主体であればバッテリーの持続力に我慢ならぬほどのネガティブな印象は抱かずに済むかもしれない。とはいえ、使い方によって大きく結果が異なってきそうな要素であるがゆえ、遠からずユーザーサイドから出そろうであろうナマの燃費データを待ち、それをもって最終判断につなげたいところではある。

さて、あくまでも個人的には、Z 8は時間泥棒な撮影機能「プリキャプチャー」を思う存分、無遠慮に使い倒してこそ価値が高まるボディであると考えている。このボディサイズでZ 9ばりの芸当がこなせるのであれば御の字ってことだ。そのあたりは、おそらくVer3.00で機能強化が図られたZ 9と同等の能力を有するものと思われ、おかげでたったの半日、使っただけで、ワタシはモーレツに購買意欲を刺激され困っている(チョロいヤツでスンマセン)。

で、実は最初の一瞬、Z 8とZ 9の価格差、意外に小さくね?なんてことも思ったのだけど、ふと気づけば、Z 8の発表日当日、Z 9を含めた既存製品の価格改定も発表されていたようで、それによると実際には、けっこうな価格差が両者間に生じるようで…。この事実を前に、何故か知らぬがケツを蹴飛ばされたような気分になっているのはナゼ? 感覚的にはZ 8のお値打ち感、爆上がり!? とはいえ額面上、決してお安いワケではないので、ジツに悩ましいところではあるのですが。むうう…。