フェンダー ミュージカル インストゥルメンツ コーポレーションとフェンダーミュージックは、2023年6月29日、フェンダー初となる旗艦店「FENDER FLAGSHIP TOKYO」をオープン前日に、プレス向けに記念セレモニーおよび内覧会を開催した。記念セレモニーでは、フェンダー ミュージカル インストゥルメンツ コーポレーションのCEOであるアンディ・ムーニー氏と、フェンダーミュージック代表取締役社長/アジア・パシフィック統括のエドワード・コール氏から世界初の旗艦店を原宿にオープンする背景などが語られたのち、Fenderを愛用するミュージシャン16人が登壇し、祝辞を述べた。セレモニーの後半はMCに霜降り明星の粗品を迎え、女優/創作あーちすと・のんとフジファブリックの山内総一郎で鼎談のち、Fenderの愛機を抱えての演奏を披露と、イベントを盛り上げた。
ムーニー氏、コール氏ともに創業者であるレオ・フェンダーの「アーティストは天使であり、自分の仕事は彼らが飛ぶための翼を授けることだ」という言葉を引用し、世界初の旗艦店を原宿にオープンする背景、2015年以降連続2桁の成長率を遂げている日本市場の今後の展望、ブランドの今後について述べた。ギターソロが始まるとリスナーはスキップする(ミュージシャン・高野寛のツイートより)とも言われる時代に旗艦店をオープンさせるのは、意外に思われるかもしれないが、Covid-19禍前に売上は5億USドルだったが、現在は10億USドルに伸長しているという。また、ムーニー氏はCovid-19禍の間に3,000万人が新たにギターを手にしたと報告していたが、この中の10%が残ってくれたら、向こう10年300億USドルの売り上げを見込めると強調した。ギター初心者にとって、Fenderの「F」コードを押さえられるかが、次のステップに進めるかどうかの鍵となるのだが、多くの人はそこで挫折してしまう。だが、それを乗り越えた人たちは、次々に新しい楽器を追い求めるようになるのだ。
ムーニー氏、コール氏は続いて、Fenderを愛用するミュージシャン16人、順にKen(L’Arc-en-Ciel)、J(LUNA SEA)、MIYAVI、山内総一郎(フジファブリック)、日野”JINO”賢二、弓木英梨乃、すぅ(SILENT SIREN)、あいにゃん(SILENT SIREN)、塩塚モエカ(羊文学)、Rei、春畑道哉(TUBE)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、INORAN(LUNA SEA)、TOMOMI(SCANDAL)、MAMI(SCANDAL)、HARUNA(SCANDAL)を呼び込み、全員でオープニングを祝うストラミングをキメると、呼び込まれた16人はそれぞれ祝辞を述べた。
セレモニーの後半はMCに霜降り明星の粗品を迎え、女優/創作あーちすと・のんとフジファブリックの山内総一郎でトーク。途中、3人でFenderの愛機を抱えてジャムセッションを繰り広げる場面もあった。
内覧会では各フロアの様子を伺うことができた。フロアの構成については、こちらの記事を参照いただきたい。この日は、3階の「ドリームファクトリー」と呼ばれるフェンダーの最上級ギターを生み出す「Fender Custom Shop」専用のフロアに設置されたカスタムオーダー用の特別ルームに入ることも出来た(顧客が来店しない時はクローズになっている模様)。まさにVIPルームという趣きであったが、Fender Custom Shopで製作された楽器は、基本的にここで受け渡しされるとのことだった。例えば、海外からの観光客が「ドリームファクトリー」で製作を依頼した場合でも、受け取りの際は、こちらまでお越しいただき、オーダー通りに仕上がっているかどうか確認いただくとのことである。
また、地下1階のアコースティックギターフロアには、イベントスペース、フェンダー初のオリジナルカフェ「FENDER CAFE powered by VERVE COFFEE ROASTERS」のほかに、楽器のリペアを受け付ける「Fender care」が設置されることが分かった。このリペアコーナーでは、正規品であれば、他のショップで購入したものでも対応するとのことである。ただし、持ち込みの際には予約が必要となる模様。
1階、2階にディスプレイされているギター/ベースは試奏が可能だが、その際には小型アンプ「MUSTANG MICRO」を使用してヘッドホンを着用していただくスタイルになるという。なお、2階には好みのフェンダーアンプを使用し大音量で試奏できる特設防音ルームも併設されているので、他のフロアの楽器をこちらに持ち込んでの試奏も可能。アンプの試聴に際しては、持ち込みの楽器にも対応してくれる。こちらは飛び込みでもOKで、当日配布する整理券の順番での案内となる。特に制限時間は設定していないとのことであるが、節度を弁えて試奏/試聴いただければ幸甚だ。
楽器やアクセサリー以外に、ウェアやキャップ、ステーショナリーを含むオリジナルグッズ、島津由行氏をクリエイティブディレクターに迎えたアパレルブランド「F IS FOR FENDER」など、様々なライフスタイル商品を展開していくとアナウンスされていたが、内覧会では意外なアイテムが販売されることも明らかになった。それはファーニチャーである。
什器として導入されているティアドロップのピック型テーブルだが、こちらは店舗のデザインを手掛けたクライン ダイサム アーキテクツ(KDa)とのコラボによるもので、「価格応談」で販売するとのことだ。
旗艦店オープンが発表された際、御茶ノ水のように楽器店が密集しているエリアでなく、何故、原宿なのか?と疑問に思うこともあったが、実際の店舗を覗いてみて、それは大いに納得できた。音楽を基点とした、ファッション、カルチャーの発信地として、原宿以外にどこが候補地となろうか?
セレモニーの冒頭、コール氏は「ラルフローレン、シャネル、ナイキ、アップル、ルイ・ヴィトンなど、世界の偉大なブランドと並ぶのを目標としている」と語っていたが、この店舗はその目標に向けた第一歩なのである。ただ楽器を売るのではなく、ここは、人々の交流を深める場所であったり、文化を発信していく場所なのだ。