シャープのスマートフォン「AQUOS R9」。昨今ではハイエンドスマートフォンが軒並み10万円を超えている中、10万円を下回る価格が魅力です。スペック的にはハイエンドとは言いがたいのですが、バランスの取れたスマートフォンと言えるでしょう。

特に名門カメラメーカーであるライカカメラが監修したカメラが特徴的。今回、ライカカメラの母国であるドイツにおいて「AQUOS R9」で撮影を行う機会があったので、そこでの写真を中心に「AQUOS R9」を紹介していきましょう。

  • AQUOS R9

    AQUOS R9

ドイツで撮る「AQUOS R9」

「AQUOS R9」のカメラは、メインが有効画素数5,030万画素CMOSセンサーを搭載。センサーサイズは1/1.55型で、レンズはライカブランドのHEKTORレンズを採用。F値はF1.9、焦点距離は23mm相当(35mm判換算時)となっています。

  • カメラ部

    カメラはデュアルカメラ。レンズはHEKTOR 1:1.9-2.2/13-23 ASPH.なので、超広角とメインをあわせてHEKTORレンズとしています

超広角カメラも有効画素数5,030万画素CMOSセンサーとなっていますが、センサーサイズは非公表、レンズはF値F2.2、焦点距離は13mm相当です。

HEKTORと少し珍しいライカ銘を冠したレンズですが、ライカの監修があるため期待が持てるところ。「AQUOS R Pro」シリーズとは異なり、1型センサーを搭載しているわけではありませんが、メインカメラは1/1.55型とそれなりに大きなサイズのセンサーにピクセルビニングを活用しており、画質は十分なレベルになりそうです。

  • カメラのUI

    カメラのUI。一般的なカメラのUIです。自動でモードが変わるオートナイト、オートHDRの設定が1タッチでできるのは便利です

というわけで、このカメラがライカ監修だからというわけではありませんが、ドイツ・ベルリンとポツダムを訪問する機会があったので、「AQUOS R9」で撮影に挑んでみました。

訪れたのは9月初旬のドイツ。今年はまだ暑い日が続いていて、晩夏の涼しさとはほど遠い日が続いていました。

  • ベルリン動物園での撮影例

    ベルリンの中心部にあるベルリン動物園。パンダもいる名物観光地です。色味に不自然さもなく、細部までよく描写されています

  • 街中での撮影例

    強い日差しのためゴーストが発生していますが、コントラストの低下はあまりないようです

  • カイザー・ヴィルヘルム記念協会での撮影例

    ベルリン動物園にも近いカイザー・ヴィルヘルム記念教会。戦後修復された旧鐘楼部分です。細部までよく描写されています

今回は仕事の関係上、いくつかイベント会場を回りました。以前の建物を改修して新たな用途に使うというのは、欧州では比較的よく見かけます。

  • Eventlocation Wasserwerkの外観の撮影例

    元々は下水ポンプ場だったらしい、ベルリンのイベント会場Eventlocation Wasserwerk。レンガの建物はその当時のままのようです

  • Eventlocation Wasserwerk内部の撮影例

    バーが設置され、飲食も提供できるようです。施設の名残の巨大な機器がインパクトのあるイベント会場です

  • Kraftwerk Berlin内部の撮影例1
  • Kraftwerk Berlin内部の撮影例2
  • Kraftwerk Berlinは1960年代に建設されたミッテ火力発電所を改装したイベント会場。内部はコンクリート打ちっぱなしの殺伐とした印象で、ライトアップによってサイバーパンク感を醸し出しています

ベルリンには多彩なレストランもあって食には困りませんが、名物は食べておきたいところ。手軽なのはカリーヴルストやケバブで、スタンドからレストランまで至る所にあります。

  • カリーヴルストの撮影例

    ドイツらしく……ということでカリーヴルストを注文。背後まではボケすぎてしまいますが、ピントの合ったハンバーガーはバランスのよい描写

  • 室内オブジェの撮影例

    室内のオブジェ。ホワイトバランスはやや暖色寄りの印象です

  • 夜景の撮影例1

    ベルリンの夜景。夜景モードでは低ノイズでクリアな描写をしてくれます

  • 夜景の撮影例2

    明暗のバランスもよく落ち着いた夜景になりました

ベルリンも観光地が多い街ですが、実はすでに色々なところを訪問していたので、今回は少し遠出することにしました。

  • 駅の撮影例

    ベルリン動物園の最寄りである通称Zoo駅。デジタル処理による望遠2倍カメラは画質劣化がほとんどないので、積極的に使っていけます

  • ポツダムの橋の撮影例

    ポツダムに移動しました。世界的な知名度は不明ですが、日本人なら多くの人が知っているでしょう。ポツダム駅から歩いていると川を渡る橋に遭遇。細部の再現性もよいようです

  • 遊覧船をデジタルズームで拡大した撮影例

    船が見えたのでデジタルズームで拡大。8倍まで拡大するとかなり画像は荒れますが、何が写っているかは分かります。取りあえず、人がたくさん乗った遊覧船だろうと思われます。使うかどうかは状況次第でしょう

  • バルベリーニ美術館の外観の撮影例

    歩いているとバルベリーニ美術館に辿りつきました。ただ、こちらは目的地ではなかったのでひとまずパシャリと撮影して移動。逆光気味ですが無理に暗部を持ち上げすぎず、自然な見た目で描写されています

  • ツェツィーリエンホーフ宮殿の撮影例

    バスに乗ってやってきたのがツェツィーリエンホーフ宮殿。世界遺産に登録されていて、建立は1917年と比較的新しい建築物です。ただ、世界史的には第二次世界大戦の戦後処理が話し合われたポツダム会談の場として有名で、館内もそれが中心となって見学コースが作られていました

  • 室内の超広角カメラによる撮影例

    超広角カメラでも描写性能は十分。HDRもよく効いています

  • ポツダム会談の参加者パネルの撮影例

    こんな人たちが集まって会談していたようです

  • 室内の円卓の撮影例

    会談が行われていた円卓。タバコと灰皿があるのは時代でしょう。HDRは不自然ではないレベルで、室内の明るさも良好。もう少し露出をマイナス補正すると雰囲気が出たでしょう

  • 回廊から見た中庭の撮影例

    外回廊から中庭を望みます

  • 中庭のRed Starの撮影例

    中庭にはRed Starの形に花が植えられています。手持ちではこの角度がせいぜいでしたが、2階ぐらいの高さから撮影すると星の形がよく分かりそうです

  • 建物の撮影例
  • 小道の撮影例
  • 人の顔に見えたので思わず撮影(左)。歩く道すがらでも1枚(右)。気軽に高画質な撮影ができて楽しいカメラです。エッジディスプレイではないのですが、やや画面ギリギリの反応が敏感で、構えようとした指に反応してシャッターボタンが押せないこともありました。ケースがあった方が安定しそうです

  • サンスーシ宮殿の撮影例

    さらに移動してサンスーシ宮殿へ。いわゆる無憂宮です。ノイエ(新)がつけばスペースオペラ作品になりますね

  • 宮殿内部の撮影例1

    宮殿らしく内部は豪奢。細部まできちんとカメラは描写してくれています

  • 宮殿内部の撮影例2

    天井の装飾も細かく、落ち着いた金の表現も良好

  • 宮殿内部の撮影例3

    廊下も様々な装飾や絵が施されていました

  • 彫像の撮影例

    廊下に置かれていた彫像

  • 扉の細工の撮影例

    扉に施された木彫りの細工

  • 宮殿全体の外観の撮影例

    こちらがサンスーシ宮殿全体の外観。少しHDRは強めですが、くっきりとした描写

  • 宮殿外観のデジタルズームの撮影例

    こちらはデジタルズームで。8倍ですが結果は悪くありません

大画面でコスパに優れたスマートフォン

カメラに続いて、ボディの外観を見ていきしましょう。

「AQUOS R9」はガラスの光沢のあるボディを採用しています。今回試用したのは独特のグリーンカラーで見栄えのよいデザインで、カメラ周辺のデザインは独自性があって好感が持てます。不揃いなレイアウトというのもかわいらしさもあっていい感じです。

  • 本体正面

    大画面のボディ

  • 本体背面

    背面は独特のカメラ周りのデザイン

ガラスの背面はハイエンドらしい雰囲気がありますが、光を反射する点と平面の上に置いた際に滑りやすい点が気になります。個人的に、そうしたことからガラス素材のスマートフォンは使いにくいと感じているのですが、このあたりは人それぞれでしょう。ただ、手に持った場合は逆に滑りにくいので、その意味では安心して使えます。

本体サイズは約H156mm×W75×D8.9mm、重さは約195g。画面サイズは6.5型でフルHD+(1,080×2,340ドット)のPro IGZO OLEDを搭載しています。ディスプレイはピーク輝度2,000nit、1~240Hz駆動で、消費電力を抑えながら滑らかな映像再生が可能です。ゲーム時などには通常の60Hzから120Hzに切り替わり、さらに黒画面を挿入することで240Hzを実現しています。

  • 左側面

    左側面

  • 右側面

    右側面

  • 上面

    上面

  • 底面

    底面

ステレオスピーカーにハイレゾ対応など、画面品質も音質も十分なスペックで、写真から映像表示、映画やドラマの視聴、ゲームといった使い方にも問題はなさそうです。

パフォーマンスもチェック

SoCにはSnapdragon 7+ Gen 3を搭載。メモリは12GB、仮想メモリ8GB、ストレージは256GBで、ややストレージが心もとないところですが、microSDXCカードにも対応しています。
パフォーマンスとしては最上位モデルではないこともあって、Snapdragon 8シリーズに比べると一歩劣ります。ただ、用途に応じて選択すればいいので、重量級ゲームを重視しない、という立場であれば、性能としては問題ないでしょう。何より、ハイエンドにすると高額になるため、比較的手頃な価格にできるという点はポイントです。

ベンチマークテストの結果は以下のようになっています。

ベンチマーク スコア
3Dmark Wild Life Extreme 2,757
Wild Life
Solar Bay
Steel Nomad Light 947
PCMark Work 3.0 15,552
GeekBench Single-Core 1,812
Multi-Core 4,851
GPU(OpenCL) 7,894
GPU(Vulkan) 8,972
GFXBench マンハッタン3.1 6,495
マンハッタン3.1オフスクリーン 6,963
Aztec Ruins OpenGL High Tier 2,970
Aztec Ruins Vulkan High Tier 3,063

例えば3D描写性能をテストする3DmarkのWild Life Extremeテストでは2,757点を記録し、低パフォーマンス向けテストのWild Lifeではスコアが上限を突破しています。一般アプリの動作性能を測るPCMarkはWork 3.0テストが15,552、CPU性能を計測するGeekBenchはシングルコアが1,812、マルチコアが4,851などとなっています。

  • 3DmarkにおけるWild Life Extremeの結果

    3DmarkにおけるWild Life Extremeの結果

  • GeekBenchの結果

    GeekBenchの結果

「AQUOS R」シリーズにはこれまで「Pro」モデルがありました。それを考えると、「AQUOS R9」自体はあくまでハイエンドではなくミッドハイぐらいの位置づけでしょう。ただ、10万円を切る価格を考えれば順当なスペックと言えそうです。

カメラの画質も良好で、ライカブランドの名前は伊達ではなさそうです。ただ、ややカメラの動作に軽快さが足りない面はあるので、頻繁に動き回る被写体の撮影は少し難しいかもしれません。

優秀なカメラをしつつ、10万円以下のハイエンドに比べれば購入しやすい価格。ミッドハイクラスの製品として選択肢になりそうです。