毎日のように気温が30℃を超える夏、暑さ対策は必須ですよね。まだまだ暑い日は続きます。扇風機で何とか過ごしていたエアコンなしの部屋は、もう無理。そこで設置工事がいらず、エアコンを取り付けられない場所も涼しくできるスポットエアコンを使ってみました。
一般的なエアコンとスポットエアコンの違いを簡単に説明すると、室外機と室内機に分かれているのがいわゆる「エアコン」です(セパレートタイプとも)。対して、スポットエアコンは室外機と室内機が一体型になっています。スポットクーラー、移動式クーラー、ポータブルクーラーなどとも呼ばれます。
もうひとつ、エアコンの仕組みをサラリと。セパレートタイプのエアコンでは、室内機と室外機の間を冷媒が行き来しています。冷房のときは、室内機の熱交換器で部屋の中の熱を冷媒に移して、室外機へと送ります。室外機の熱交換器によって冷媒から熱を除き、熱を大気に放出します。よって、セパレートタイプのエアコンで冷房運転をすると、室内には冷たい空気が送り込まれ、室外機からは熱い空気が排出されるわけです。
室内機と室外機が一体のスポットエアコンは、本体の前側からは冷たい空気が出てきますが、本体の後ろ側からは熱い空気が。そこで、本体の後ろ側に取り付けた排気用ダクト、およびダクトを窓に通すパネルを使って、熱い空気を部屋の外へ排出します。こうした構造のため、スポットエアコンはセパレートタイプのように専用コンセントや壁の穴を必要とせず、業者に設置工事を依頼しなくても使えます。
キャスター付きの本体は移動もラクラク
今回お借りしたのは、ハイセンスの「スポットエアコン HPAC-22F」です(暖房機能はありません)。2023年7月中旬の時点で、家電量販店での実勢価格は42,800円。本体サイズは幅30×奥行き33×高さ67cm、重さは21.5kgです。底面にキャスターを備えているので、軽く押すだけで移動はスムーズ。
本体カラーはホワイト。フラットでゴチャゴチャしないデザインは、使わないときも家の中で変な風に目立たないと思います。
冷房能力は2.0(50Hz)/2.2Kw(60Hz)。セパレートタイプのエアコンでいうと、6畳用の冷房くらいです。運転モードは冷風・除湿・送風の3通り。
取扱説明書には、「付属の窓パネルと排気ダクトを使用せずに閉めきった室内で使用すると室温が上昇します」と書いてあります。熱を外に逃がさなければ、部屋の温度が上がるのは分かります(HPAC-22F自体が1つの熱源でもあるため)。実際にどれくらい熱いのかを確認するため、キッチンで使ってみました。排気ダクトは隣の部屋に向けいます。
スイッチを入れるとブワンという音がして、すぐに冷たい風が吹き出しました。冷風の温度は16℃から30℃の範囲で設定可能。風量は強弱の2段階です。
ざっくりとした計測ですが、本体正面から左右1m20cm前後の範囲で冷風が当たり、気持ちがよく感じます。フラップを手動で動かし、いい感じの角度を自分で調節。扇風機の風と違ってちゃんと冷たい風なので、料理中も汗だくにならずに快適でした。
ただ、運転音は大きめ。料理など何か作業をしているときは気になりませんが、レシピを動画でチェックしたりテレビを見ていたりするときは、HPAC-22Fの運転音がうるさく感じます。
排気ダクトから出てくる風の温度を測ってみたところ、約31℃と高温になっていました。キッチンで筆者だけは涼しいですが、隣の部屋は熱気がひどい! やはり冷風を使う場合は排気処理をしたほうがよいでしょう(それが正しい使い方です)。
窓パネル×4枚が付属し、窓の対応範囲が広い
窓パネルを設置してみましょう。HPAC-22Fには窓パネル×4枚が付属し、組み合わせることで高さ60cm~154cmの窓に対応します。高さが154cm~190cmの窓には、別売りの延長窓パネルセットを使います。
窓パネルは、プラスドライバーを用意して取り付けていきます。今回は納戸を兼ねた家族の趣味部屋です。CDやマンガを大量に保管している部屋で、時々こもって読書などにふけるスペース。エアコンは設置していないので、夏場に過ごすのは大変です。窓の高さは130cmだったので、4枚のパネルを組み合わせ、レール用のアタッチメントを接続してネジで固定します。
窓のほうにも準備が必要。窓枠の上下や溝に付属の隙間シールを貼り付けます。窓ガラスの隙間から虫の侵入が気になる場合は、同じく付属のスポンジで埋めておきます。
窓パネルは組み合わせる構造のため、それぞれ幅が違います。組み合わせによっては隙間シールと窓パネルの間が微妙な空くことがあります。ハイセンスのサポートに相談したところ、「窓枠ではなく窓パネル側に隙間シールを付けて調節する」という方法を紹介されました。それでも隙間ができたところは、一般的なビニールテープで塞ぐことにしました。
注意が必要なのは窓の鍵です。HPAC-22Fに限らずスポットエアコンの場合、ダクトを取り付けると窓の鍵をかけられません。補助鍵を設置するか、窓パネルを取り外してから窓の鍵をかけることになります。住環境や周辺環境にもよりますが、運転音や防犯は頭に入れておきたいところ。また、たとえば寝室よりは、ガレージで何か作業をするときのまさに「スポット」的な使い方に向いているのでしょう。
ドレン水の排水は本体を傾ける
HPAC-22Fは、発生したドレン水を本体内部の熱交換器によって蒸発させる「ノンドレン式」です。基本的には排水処理は不要なのですが、湿度が高い場所で使うと、本体にドレン水が溜まりやすくなるとのこと。
内部のドレンタンクが満水になると、本体の表示部に「E5」の満水サインが。このときは、本体背面の排水ドレン栓とゴム栓を外して、製品内のドレン水を排水します。
除湿機のような水タンクはないため、本体を持ち上げて排水する必要があります。本体背面に取っ手はありますが、持ち上げるのはけっこう大変。取扱説明書には持ち上げるときは2人以上で行うよう記載されています。
このほか、市販の排水ホースを取り付けて「連続排水」する方法もありますが、ドレン水を流せる場所に設置するか持っていくか、バケツなどに溜める準備が必要です。
しっかり冷える。購入前に窓サイズなどの確認を
HPAC-22Fを動かすと、すぐに冷えてとてもいい気持ち。特に、外から帰ってきたときに「パワフル」モードを使うと、大風量の冷たい風が最高です。専門業者に依頼する必要がなく、窓パネル×4枚を同梱していて対応する窓の範囲が広いほか、隙間シールやスポンジなども付属しているため、設置しやすいところも魅力といえます。
気になったところとしては、「運転音が大きい」「ドレン水の排水がちょっと大変」「窓パネルを使うと窓の鍵が閉められない」などがあります。また、冷風が当たるところは涼しいのですが、セパレートタイプのエアコンのように部屋全体の室温を下げるのは難しいようです。熱の放出に排気ダクトを使うため、室内が陰圧になって隙間から外気が入りやすくなることも関係しているかもしれません。
「スポットエアコン」という名前の通り、「部分的に冷たい風を浴びたい!」「一時的に涼しいならOK」という割り切りが必要でしょう。暑い季節が過ぎて片付けるときは窓パネルも外すことになりますが、翌年の使い始めには再び窓パネルの取り付け作業が発生する点も、セパレートタイプのエアコンとは違います。こうしたポイントを理解した上で購入を検討してみてください。
伊森ちづる
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