ここ数年、海外アニメーション映画の日本公開がかなり増えてきていますが、その中でこういった名作のリバイバルも成されるのは嬉しい限り。
本作はフランスのルネ・ラルー監督による1973年度作品で、カンヌ国際映画祭で初めてアニメ映画で審査員特別賞を受賞した作品でもあります。
日本では自主上映などを経て1985年にようやく初公開されましたが、ローラン・トポールによるどこかしら異様でグロテスクながらもブラックユーモアあふれる絵柄と、それを切り絵アニメにして動かす技法、また人種同士の対立や闘争といったモチーフなどがカルト的な評判を呼び、1997年、2000年にもリバイバルされるほどの人気作となり、そして今回は初のDCP上映となります。
宮崎駿監督はこれを見て「日本のアニメには美術が不在である」ことを痛感するとともに、『風の谷のナウシカ』の漫画(82~94)&アニメ映画(84)の美術及びクリーチャーデザインなどの構築に多大な影響をもたらした事でもあまりにも有名な作品。
(巨神兵や王蟲などの原型みたいなものもチラホラと……)
特に青い肌と魚のような耳、そして赤い目をしたドラーグ族の造型は、一度見たら忘れられないほどのインパクト!
また、現在では宇宙のどこかの惑星イガムで巨人型生命体(ドラーグ族)が人間型生命体(オム族)を奴隷もしくはペットにしているという設定から『進撃の巨人』を彷彿させられるという若い世代の声もよく聞かれます(もっとも作者の諌山創は、ゲーム「マブラヴ」を参考にしたと公言しています)。
制作時の時代の空気を知る世代としては、むしろ『猿の惑星』(68)など文明批判SFの流れとしてスムーズに入ってくる作品でもありましたが、全体的にサイケなタッチも今の時代には新鮮に受け入れられるのだろうとも思います(サントラCDも今はかなりプレミア価格となっているようですね)。
アニメーションのみならず、クリエイトなことを将来実践していきたいと思う方は、何はともあれ見ておいたほうが絶対に良い作品です。
一種異様な世界観ではありますが、脳裏にこびりついて離れない「何か」が見る側のクリエイティヴなセンスを刺激すること間違いなし!
またこの機会にルネ・ラルー監督の『時の支配者』(82)や『ガンダーラ』(89)など他作品にも注目していただきたいものです(これらも素晴らしい出来栄えですよ!)。
(文:増當竜也)
–{『ファンタスティック・プラネット』作品情報}–
『ファンタスティック・プラネット』作品情報
ストーリー
人間より遥かに巨大で、全身真っ青の皮膚に目だけが赤いドラーク族が支配し、人間は虫けら同然の惑星。孤児となった人間の赤ん坊がドラーグ族の知事の娘ディーヴァに拾われ、ペットとして育てられた。テール(地球の意)と名付けられた赤ん坊は少年となり、ディーヴァが勉強に使っている学習器をこっそり使い、この惑星についての知識を深めていく。彼はディーヴァが瞑想の儀式に入った隙に学習器を抱えて逃げ出し、ひっそり暮らす人間たちに様々な知識を共有させた。やがてドラーグ族が人間狩りを開始。知識を得た人間たちは、ドラーグ族が捨てたロケットを改造して隣の星である未開の惑星へ、移住のための調査隊を派遣する。その折、テールを含む調査隊は、ドラーグ族が瞑想によってこの惑星に魂を飛ばし、マネキン人形を相手に踊るという行為で生命エネルギーを得て種の保存を図っていたことを知った。テールたちは踊りの最中の人形を破壊し、ドラーグ族を狂わせて大混乱に陥らせる。ドラーグ文明は崩壊の危機を迎え、やがて人間との間に協定が結ばれた。人間たちは未開の惑星と同じような人工惑星を作りそこに住むことになる。その人間の星には、テールの名がつけられた。
予告編
基本情報
監督:ルネ・ラルー
公開日:2021年5月28日(金)
製作国:フランス/チェコスロヴァキア