2019年に「inside you」でメジャーデビューし、「東京2020オリンピック」の閉会式で歌唱するなど、その歌声で人々を魅了してきたシンガーソングライターのmilet。2月28日公開の映画『知らないカノジョ』で映画初出演を果たし、中島健人が演じる主人公・神林リクの妻でヒロイン・前園ミナミを好演している。
インタビューでは、スクリーンデビューとなった今作で活きた自身の経験や、楽しさと同時に痛感したというセリフを言う難しさについて話しているほか、自身にとっての“大切な存在”を明かした。
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milet 撮影:宮田浩史
自身が演じた前園ミナミの“歌”への向き合い方に共感
――今回、以前ミュージックビデオでご一緒された三木監督からのオファーで映画初出演となりましたが、お話を聞いたときはどう感じましたか?
夢にも思っていなかったので、「映画か!」とびっくりしました! 私はセリフのあるお芝居をしたことも全然なかったですし、どうしようか悩みましたが、三木監督の作品は私も大好きですし、以前自身の楽曲MVでご一緒させていただいたこともあり、「三木監督の船に乗ろう!」と決心して、出演を決めました。
――三木監督への信頼感から出演を決められたんですね。また、今作はラブストーリーでありながらもファンタジー要素もあるストーリーですが、脚本を読んでみてどのように感じましたか?
楽しかったです! 今作は原作があるんですが、原作とも少し違う内容になっています。私が演じさせていただいた前園ミナミも、私と同じシンガーソングライターという設定になっていて、そこも出演の決め手にはなりました。初めての演技であまりにも自分とかけ離れた役は想像できなかったのですが、シンガーソングライターのミナミはとても親近感も湧いて共感もたくさんできたので、やってみたいと思いました。
――特にミナミのどんな部分に共感できましたか?
ミナミは大切な人のために歌う子。私も歌を始めるきっかけが、友人に「miletちゃんの歌には力がある」と言われたことなんです。ミナミもリクやおばあちゃんだったり、周りの人に大切にされていて、周りの人を大切にする人なので、共感できました。あと、歌・音楽がとにかく本当に大好きで、歌の中では本音で歌うところが自分に重なりました。
ファンも驚いた映画出演 家族や友人も「なぜか私より恥ずかしがって……」
――アーティストとしてのmiletさんを普段から応援されているファンの方からはどんな反響がありましたか?
「びっくりした!」って言ってました(笑)。私と同じで不安な気持ちの方もいらっしゃったり(笑)。シンガーソングライターの役を楽しみにしてくれているみたいで、すごく嬉しいです。
私が映画に出るなんて全く想像つかなかった方が多いと思います。しかもラブストーリーで! 私ですら想像してなかったですからね(笑)。
――家族や友人など周囲の人の反応はいかがでしたか?
なぜか私より恥ずかしがっている人が多いです(笑)。家族も友達も「ラブストーリー!? miletが!?」と言っていて(笑)。でも見に行くと言ってくれているので、絶対に観てほしいです! 頑張ったので!!
公園で弾き語りをしていた当時を回顧
――劇中では、歌唱シーンもありましたが、演じながら歌うというのは、普段のステージと違う部分はありましたか?
ミナミが公園で弾き語りをするシーンもあるのですが、私自身も学生時代に公園で弾き語りをしている時期もあったので、そのシーンは当時の思い出をそのまま持ってくるような感じで、演じるというより昔の自分に戻るような感覚でもありました。
ステージの上は自分のいつものフィールドでホームな感じがあったんですが、「ミナミはもう少し緊張感を持っているのかな」と考えたりもして。miletでありながら、ミナミしか持っていない気持ちを見つけるためにステージというのはすごく考えさせる場所でもありました。
――公園での弾き語りも経験されたことがあるんですね! 撮影をしていて懐かしさもあったんじゃないですか?
「こんなにお客さんはいなかったけど、こうやって歌っていたなぁ」と思って、懐かしかったですね! まだ音楽で何かをすると決めたわけじゃなかったけど、ただただ音楽が好きで、買いたてのギターを持って代々木公園に向かったときを思い出しました。友達にすごくギターが上手な子がいて、その子に公園でレクチャーしてもらうところから始めて、お金をもらったりとかはなかったんですけど、自分でコードを引けるようなって、好きなアーティストさんの歌を歌ってました。
――そうなんですね! 公園で歌っていたらスカウトとかもあったんじゃないですか?
いやいや! 路上で歌っている人Aみたいな感じだったので(笑)。
セリフを話すということの難しさ「言葉は“波”で……」
――そこで聞かれていた方が今も応援してくださっているファンの方の中にいるかもしれませんね! また、演技という面でいえば。これまでもミュージックビデオなどでも演技をすることはあったかと思います。映画作品での演技とで違いはありましたか?
全くの別物でした。映画に挑戦するとなったときに、私の中で“セリフを言うということ”がいちばん不安なところでした。撮影が始まってもなかなか慣れなくて、あたかもそのときに生まれた言葉であるかのように言わないといけないということが、今まではなかった部分なので難しかったです。でも、気持ちでキャッチボールができていると手応えを感じる瞬間もあって。そのときに“掴めるもの”がありましたし、「これがお芝居なんだ」と実感できました。
――セリフを覚えるという部分についてはいかがでしたか?
記憶力は悪くない方なので、セリフを覚えることは結構得意だなと思いました! ただ、それに気持ちを込めるというか……言葉は“波”でその上に気持ちが乗っていかないといけないという難しさを感じました。でも初挑戦することだからか、すごく新鮮で楽しかったです。
――言葉は波というのが、とても素敵な表現です。今回、小説家として成功したリクを支えるミナミと、自身がシンガーソングライターとして活躍するミナミという同じ役ながら違うキャラクターを演じられましたが、そのあたりの難しさはありましたか?
リクが小説家として成功しているもともとの世界のミナミもまるで昔の私を見ているようだったし、リクが迷い込んだもう一つの世界のミナミはシンガーソングライターで、今の私と変わらない部分もあったので、どちらもとても近い距離にいるキャラクターでした。