2月19日から21日まで東京ビックサイトで開催されているスマートエネルギーWeek(春)において、シャープが同社の住宅用エネルギーソリューション「Eeeコネクト」や次世代の太陽電池として期待されているペロブスカイト太陽電池などを展示していた。
「スマートエネルギーWeek」は、新エネルギーに関わる7つの展示会を同時に開催し、エネルギー技術に関心を持つ専門家・企業が情報交換を行う場。シャープはこれまで、「スマートエネルギーWeek」を構成する展示会のひとつである「PV EXPO 太陽光発電展」にブースを出展してきたが、今回は会場レイアウトの都合もあって、家庭や工場などに分散したエネルギーリソースを統合制御するVPP(バーチャルパワープラント)に関わる技術・設備などが集まる「SMART GRID EXPO スマートグリッド展」の一角にブースを出展している。
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「SMART GRID EXPO スマートグリッド展」の一角にあるシャープブース
ブースでもっとも目を引くのは、マイナビニュースでも何度か紹介したEVコンセプトモデル「LDK+」。「LDK+」はコンセプトモデルが発表されたときから、たんなる移動手段としてではなく、「リビングルームの拡張空間」と居住空間としてのありかたをアピールしてきた。そして今回の展示では、家の一部としてエネルギーマネジメントに組み込まれるものとして位置づけられ、展示されている。
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「LDK+」。内部はリビングルームの延長のような空間となっている
その「LDK+」をも含めて住宅のエネルギーを一括して管理する仕組みが「Eeeコネクト」だ。「Eeeコネクト」では、屋根などに設定した太陽光パネルで発電を行い、その電気を極力家庭内で利用することを目指している。
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「Eeeコネクト」の3つの「E」は、Energy、Environment、Economyをあらわしている
太陽光発電では、日中に発電量が大きくなり、好天の日は発電量が大きく曇天・雨天だと発電量が下がるという変動がある。電力消費も生活リズムに合わせて1日のうちで変動する。加えて電力会社から供給される電力を使う場合、夜間に料金が下がることもある。こういったさまざまな要素が影響しあう中で、太陽光による発電量を最大限に活用し、電力会社へ支払う電気代を抑制することが住宅用のエネルギーソリューションには求められるわけだ。
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「Eeeコネクト」が導入された住宅の屋内のイメージ。エアコン、冷蔵庫、洗濯機などが、中央にあるエネルギーモニターに接続されている
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そしてこちらが屋外のイメージ。太陽光パネルや給湯器に接続されるとともに、電力会社からの給電も受ける形になっている
シャープの「Eeeコネクト」では、AIが気象や過去の利用データなどに基づいて発電量や消費電力を予測し、太陽光による発電を最大限に活用できるように制御する。太陽光で発電された電力が余剰になっているタイミングでは電力を積極的に使い、発電量が少ないときには抑制的に電力を使うことで、ロス・電力購入を減らそうというわけだ。前述の「LDK+」が実用化されれば、EVへの充電も電力が余剰なタイミングで行うといった管理がされることになるだろう。
この「Eeeコネクト」は、シャープが販売するエアコン/給湯器/冷蔵庫/洗濯機に加え、他社のエアコンにも対応するようになっているという。この、自社製品だけでなく他社製品にも対象を広げるという姿勢も評価され、「Eeeコネクト」は令和6年の“新エネ大賞”で資源エネルギー庁長官賞を受賞した。エアコンにおいて他社製品にいちはやく対応したのは、エアコンでは家電をIoT化するための通信仕様である「ECHONET Lite」への対応が進んでいるため。今後さらに対応製品を広げるにあたっては家電製品の同仕様への対応が必要になるとのことだった。
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「Eeeコネクト」は令和6年の“新エネ大賞”で資源エネルギー庁長官賞を受賞している
ちなみに、発電を行う太陽光パネルについては、ほぼベンダーフリーになっているとのこと。
次世代のペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池のタンデム型を開発中
もうひとつ目立っていたのが、ペロブスカイト/シリコンタンデム型太陽電池に関する展示だ。ペロブスカイト太陽電池は、現在広く利用されているシリコン系の太陽電池に代わる次世代太陽電池の有力な候補とされている。シャープではペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池を組み合わせるタンデム型の太陽電池の開発について、サンプルとパネルの展示を行っており、注目を集めていた。
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開発中のペロブスカイト/シリコンタンデム型太陽電池のサンプル。透過型/分割型の2タイプがある
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こちらはEVへの導入を想定した車載型モジュールのサンプル
ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池の組み合わせ方により、タンデム型の太陽電池は透過型と分割型のふたつのタイプにわかれる。現時点では透過型のほうが高い変換効率を実現できているとのことだが、分割型の変換効率向上も進みつつあり、2026年~2027年ごろには透過型・分割型ともに30%前後の変換効率を達成できる見通しがあるとの説明。ただし、製造および開発にあたってのコストは不透明なところが大きく、商品化の時期についても現時点では不明とのことだった。
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ペロブスカイト/シリコンタンデム型太陽電池の想定用途。高効率の透過型と光環境の変化に強い分割型というそれぞれの強みを活かせる用途が想定されている
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ペロブスカイト/シリコンタンデム型太陽電池の開発ロードマップ
このほか、すでに設置済みの太陽光パネルのリプレイス需要への対応や、積雪・塩害地域などにも対応できるパネルのラインナップについての展示も行われていた。とくに設置済みのパネルのリプレイスについては、サイズや仕様が必ずしも(他社製品も含め)現在主力として販売される仕様と合致しないことも多いのだという。シャープでは、リプレイスが必要になっている設備の仕様に合致するパネルを供給することで、パネルの増設・更新を行いたいという事業者のニーズに対応しているとのことだった。
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法人顧客向けのリプレイス需要への対応やパネルラインナップ展開についての展示