大人気俳優で、バラエティや歌手としても活躍する大泉洋が、“大泉洋史上最高にカッコいい男”を演じるという、映画『室町無頼』が2025年1月17日に公開される。垣根涼介氏による同名小説を実写化した同作は、応仁の乱(1467年)直前の荒廃した京の都を舞台に、己の腕と才覚だけで混沌の世を泳ぐ自由人・蓮田兵衛(大泉)がひそかに悪政への反乱を画策し活躍する姿を描く。天涯孤独で棒術の才能を発揮する才蔵(長尾謙杜)や、個性たっぷりのアウトローたちを束ね、かつての悪友・骨皮道賢(堤真一)率いる幕府軍への戦いに挑んでいく。
映画『室町無頼』大泉洋が弱音を吐きつつ50歳でアクション
撮影は2023年秋の東映京都撮影所を中心に行われた。企画自体は7年ほど前から進んでいたというが、コロナ禍の影響で延期に。人気キャストがそろっているだけに、スケジュールを合わせるのも容易ではなかったが、大泉と堤は他の撮影現場でも同作について「あの企画、面白いからやりたいよね」と話し合っていたという。念願叶っての撮影スタートとなった。
観光客であふれる東映映画村だが、一歩入れば隣接したエリアに実は室町幕府の「花の御所」が再現されており、エキストラ約300人を集めた大反乱シーンの撮影が行われていた。『マッドマックス』シリーズのような世界観を目指した同作は、砂嵐を表すために終始“はったい粉”が大型扇風機で舞い上がる状態で目を開けるのも一苦労だが、常に和菓子のような匂いがするため「お腹が空く」という声も。さらには、リアルな屍を表した人形がそこかしこに落ちている。
大泉は撮影時50歳にして、主演映画で激しいアクションをすることに。堤と激しく斬り合うシーンもあるが、息が合っている様子で「これはどう?」「強すぎ!」などと確認しながら進めていく。入江悠監督は大泉の様子について「すごく弱音を吐いてます(笑)。『思っていたより全然アクションが多い』とかね」と明かしつつ、「でも仕上げてくるとすごい殺陣になっていて、見たことない殺陣です」と自信を見せる。須藤泰司プロデューサーは旧知の大泉について、「面白いのは、殺陣の練習の時に『見ないでください』『50過ぎた大人がね、一生懸命頑張ってるところを見られたくないから』と、鶴の恩返しみたいな感じで(笑)。僕らは横から会わないように見るという感じでしたけど、相当やってる」と語った。
“大泉洋史上最高にカッコいい男”というのは、須藤プロデューサーの口説き文句だったそう。三谷幸喜演出の舞台『子供の事情』に出演する大泉の姿を見た須藤プロデューサーが、作品としては面白かったものの「大事な大泉洋をかっこ悪く書かれちゃ困る。だから、これをやってください」という気持ちでオファーした。大泉自身は「台本のスケール感が大きく、そこに才能あふれる入江監督と、兵衛の悪友であり敵でもある道賢の役を堤さんが演じてくれるということで、映画史上に残るスケールの時代劇になりそうだなという気がしました。内容は少年心をくすぐられるようで、『室町無頼』というタイトルもワクワクしました」と、オファーを受けた理由について説明している。須藤プロデューサーは「いつもの面白い部分よりは、ひょうひょうとした、スナフキンみたいな感じというか。どこか悪い中年というかいかがわしさも出してもらって、今まであんまりないんじゃないかなと思うんです。魅力的な大人という役が、すごくうまくいってると思います」と語った。
なにわ男子・長尾謙杜がワイヤーアクションで活躍
また、今回作中でも成長を見せる才蔵役には、なにわ男子の長尾謙杜が抜てきされた。難しいアクションにも挑戦しており、入江監督は「特に長尾くんが演じている役は六尺棒を使うアクションなんです。原作でも重要なキーアイテムなんですけど、 時代劇も含めた日本のアクション映画の中で、『棒術』って本当にないんですよね。どう作るかというところには相当苦労があったんですけど、香港映画とかとはまた違う棒術が見られるんじゃないかなと思います」と太鼓判を押した。
長尾の起用理由について、須藤プロデューサーは「大泉さんがいて、堤さんがいて、という時に、 少年から大人になるというプロセスを出せる人じゃないといけない。しかも、最初は兵衛(大泉)の後ろにちょこちょこついていくかわいらしさが見えなきゃいけないんです。それがやがてひとかどの男になっていくという物語なんで、そういうのは誰がいいんだろうといった時に、うちの栗生プロデューサーが『長尾くんがいいと思います』という話をしてくれて、監督も『行けそうだな』という感じで」と振り返る。入江監督は「棒術があるので、身体能力の高さが必須でした。ただ、育っていくという意味では、伸びしろがないといけない。あんまり完成された大人っぽい人だと違うなと思っていて。長尾くんの名前が挙がってきた時に、『この人、いけるな』と思いました」、須藤プロデューサーは「捨てられた子犬みたいな感じから始まらないといけない。長尾くんに関しては、まだこれからの人だから、たぶんこれが代表作として出るし、新人賞とか獲るんじゃないかというくらいの頑張りで、『普通、できないな』というぐらいのことをやってもらっている」と感謝した。
長尾自身は「『アクションをやるぞ!』と意気込んでいたので、楽しみでしたが、いざアクション練習の初日を迎え、その次の日はもう全身筋肉痛で(笑)。百本の素振りを、何セットもやったのですが、泣きそうになるぐらい筋肉痛でしたね。あれ、人間ってこんなに筋肉痛で動かれへんのやって。普通は使わない筋肉だったので、最初はすごく筋肉痛で大変でしたが、だんだんそれも慣れていきました」と振り返っている。
クライマックスの脚本は、入江監督が初稿の段階から「ここはワンカットでいきます」と書き込んでいたという。須藤プロデューサーは「見たことのないものにしたい」と意気込んでおり、じっくり数日かけて撮影が行われた。この日の撮影では、長尾演じる才蔵の見せ場でもある、花の御所を駆け抜けるシーンを撮影。才蔵は六尺棒を持ちながらワイヤーで吊られ、花の御所の塀の上という高所まで着地する。そのまま間髪入れず塀の上でのアクションに入らなければならず、何度も練習が繰り返された。高所でアクションを重ねながら前進していく姿は、後ろから観光客にも見えているが、まさかワイヤーで吊られているのが長尾だとは気づいていない様子。
長尾自身は今回の撮影について「初めてですね。アクションというとすごくカットを割るイメージがあったので、どうやって撮影するんだろうというのがまずありました。ワンカットですごい長尺でアクションを撮るので、動きの数も多くて、壁を登るワイヤーも大変でしたし、そこにさらに才蔵らしさを出すことだったり、いろいろなものを詰め込んでいくことになるので、すごく大変でした(笑)。普段はちょっと大変でも『いやいや、全然大丈夫でしたよ!』と言いますが、あれは心から大変でしたね」と語る。「これまでの作品の中で一番大変だったかもしれないです。高所から飛んだり、ワイヤー使ったり」と苦労を表している。
この日の撮影では大泉と長尾のシーンはなかったものの、須藤プロデューサーは「大泉さんはすごくフレンドリーというか、前から知ってるみたいな感じで接してくれているので、スクリーンに映らないところでも、長尾くんとの師弟関係をちゃんと作ってくれている」と明かす。長尾も「大泉さんも仰ってましたが、初日、殺陣のシーンからクランクインで。大泉さんが殺陣をしている姿を見て、『ああ、こんな感じで撮影するんだ』と思いましたし、その映像がすごくかっこよくて、『僕も頑張ろう』と勇気をもらえました」と、大泉の姿から学ぶところが多かったようだった。
(C)2025「室町無頼」製作委員会