バルミューダは8月8日、2024年度上期(2024年1月~6月)業績を発表した。
売上高は前年同期比10.2%増の63億3000万円、営業利益が前年同期のマイナス6億9500万円の赤字から、6億400万円改善したものの、マイナス9100万円の赤字。経常利益は前年同期のマイナス5億9700万円の赤字から、3300万円の黒字に転換。当期純利益は前年同期のマイナス13億8500万円の赤字から、3100万円と黒字化した。
バルミューダの寺尾玄社長は、「収益性改善の各種施策が有効に働き、半期としては、2年ぶりに黒字化した。売上高は、地域別では海外、製品カテゴリー別ではキッチン関連が増加した。営業利益では、収益性改善とともに、為替予約の評価差益などによるプラス効果もあった。バルミューダにとって、最も重要な指標と位置づけている売上総利益率は前年同期の29.9%から、0.5ポイント改善し、30.4%となった。平均為替レートが前年同期には1ドル135円だったが、今期は152円というなかで、同等の売上総利益率を達成している。モノづくりにおいて、部品レベルでのコストダウン、物流の工夫などが効いている」と総括した。
キッチン製品と海外事業の好調が支える
第2四半期(2024年4月~6月)は、売上高が39億7000万円、営業利益が1億4500万円、経常利益が1億9300万円、当期純利益が1億9200万円となり、「第2四半期はさらに円安が進み、1ドル156円という厳しい為替レートのなかでも、すべての利益項目で黒字化している」と、収益性改善施策の手応えを強調した。既存商品における利幅の改善、新製品の投入も黒字化に貢献したという。
また、2022年度期末には多くの在庫を持っていたものが、現時点では売上規模に応じて適正な在庫水準になっているほか、人員数の適正化にも成果があがっていることも示してみせた。
寺尾社長が、「最も数字が良かった」とする2020年度には、通期125億円の売上高に対して、130人の社員であったのに対して、2024年度は128億円の売上見通しに対して、現在129人の社員数となっている。
「期末に向けては、在庫のスリム化をさらに進めることになる。また、人員数の適正化はほぼ完了したと判断しており、第2四半期からは、新たな採用活動を始めている。健康的な身体で、事業を運営できている」と自己評価した。自己資本比率も2024年6月末時点で65.8%に改善している。
2024年度上期のカテゴリー別の売上高は、キッチン関連が前年同期比22.7%増の45億8300万円、空調関連は同8.6%増の13億4500万円となった。また、国内事業の売上高は前年同期比4.8%減の39億9500万円と前年割れになったが、韓国では71.2%増の13億4600万円、北米では6.0%増の2億6400万円とプラス成長になった。
「日本では巣ごもり需要があり、その反動を経て、現在、市況が回復し、巡航速度に戻りつつある。韓国も似たような状況にある。中国はまだ需要が戻っていない」とする一方、「北米はだいぶ回復してきている。北米市場への参入直後にコロナ禍となり、マーケティング活動ができない状態になった経緯があるが、2024年度からは、体験をしてもらう機会を増やしたいと考えており、ベーカリーやカフェと組んで、体験会を実施している。この半年間で10回以上は実施しており、そのたびに、SNSのフォロワーも増加している。バルミューダの商品は、体験してもらうとわかりやすい。体験を通じて、ブランド認知が変化することを期待しており、それによって売上げを伸ばすことを目指している」と語った。
厳しい業績見通し、通期黒字化は実現するのか?
一方、2024年度通期(2024年1月~12月)の業績見通しは、前回公表値から下方修正した。売上高は4億円減少の前年比1.6%減の128億円、営業利益が1億2000万円減の3000万円、経常利益は7500万円減の7500万円、当期純利益は5000億円減少の5000万円とし、黒字化の計画は維持する。
バルミューダの寺尾社長は、「期初に計画を立てたときの為替レートと、この半年間の実感値には大きな乖離があった。業績が良化しているとはいえ、油断するタイミングではない。より気を引き締めてやっていかなくてはならない」と、下方修正の理由を説明。「2024年8月から、日本で販売している多くの商品において値上げを実施している。為替の変動に対応したものであり、平均値上げ率は約9%となっている。昨今の金融市場の乱高下もあり、消費マインドにはポジティブには働かないと見ている。商品の販売量は下がると考えており、これを業績予想に反映した。売上予想の減少に伴い、利益も修正した」と語った。
また、寺尾社長は、「2024年度は通期での黒字回復と、円安による厳しい環境下でも、持続的に成長可能な事業基盤の確立に取り組んでいる。これを、3つの対応策によって達成することを目指す」という今年度の基本方針に改めて言及。同社では、「売上総利益率の改善」、「固定費の圧縮」、「家電カテゴリー製品の積極的な展開」の3点に取り組んでいるところだ。
「期末の売上総利益率は31.8%を見込んでいる。円安のなかでも、コスト上昇を最小に抑えるとともに、物流改革を進めており、追加の価格改定でも吸収していくことになる」と述べたほか、「様々な施策を急ピッチで進めてきた結果、おおむね水平飛行に入ったかなと考えている。だが、その期間はまだ短く、水平飛行に入ったとは言い切れないところはある。2024年度の黒字達成を最大の経営課題として追いかける。また、水平飛行からの成長に向けて、アクセルを踏むことを考えなくてはならない。成長基調への回復に向けた準備はかなり進んでいるが、引き続き、新製品の積極的な投入を進め、事業構造の変革も進めていく」と気を引き締めた。
2024年度の製品戦略についても説明。第1四半期には、トースターの新たなラインアップとしてReBakerを発売。第2四半期には、扇風機のGreenFanの新製品として、GreenFan Studioを発売したほか、電気ケトルであるThe Potでは新色を発売。海外での新製品投入も積極化しており、韓国では、The Plate Proに加えて、The Toaster ProやGreenFan Studioを発売。「韓国での実績が良くなっている」とした。東南アジアでの新製品投入も加速していく考えも示した。
「魅力的な製品を、現在の為替レートに照らし合わせて適正な原価で作り上げて、顧客に提供することにチャレンジしている。日本市場においても、下期に向けて複数の新製品を投入する計画である。新製品の開発は順調に進んでいる。また、海外でもさらなる商品ラインアップの拡充を行っていく。海外売上高をいかに伸ばすかが重要なテーマである。とくに米国は重要な地域であり、ここでの積極的な製品展開と、ブランド認知の強化に取り組む。現地でのブランド認知活動をさらに強化していく」と述べた。
また、小型風力発電機の商用化に向けた研究開発を継続する考えを示し、「新たなニュースが出せていないが、着実な進捗があると認識している。性能向上も実現しており、明瞭なビジネスプランも持つことができるようになっている。大きな可能性があるプロジェクトである。慎重かつ大胆に進めていく」と、新事業の展開にも意欲をみせた。