• 現地のキャリアショップで物理SIMを買うことが海外取材の第一歩だったが、そんな機会はこれから少なくなりそうだ

    現地のキャリアショップで物理SIMを買うことが海外取材の第一歩だったが、そんな機会はこれから少なくなりそうだ

ドコモが9月14日の午前10時から、既存ユーザーによるeSIMのオンライン新規発行、再発行を再開するそうだ。システムメンテナンスを理由にほぼ1年間停止されていたサービスの再開だ。

既存ユーザーのeSIM発行がオンラインで完結

eSIMは、電子的なSIMとしてその可用性が注目されている。SIMは携帯電話端末に装着し、特定の電話番号と端末を紐付けるために使われる。Subscriber Identity Moduleの頭文字をとったもので、ドコモではUIM(User Identity Module Card)カードと呼んでいた。端末はSIMカードを入れ替えるだけで、その電話番号で発着信するようになり、その契約プランでのデータ通信等の利用ができるようになる。使っている端末は関係ない。

SIMは物理的なICカードで、現在の端末のほとんどではnanoSIMと呼ばれる小指の爪先大のものが使われている。一方、eSIMは物理的なものではなく、電子的なデータだ。そのデータを端末にダウンロードしてSIMとして機能させるようになっている。

つまるところは、物理的な輸送手段を使わず、電子メールでも送れるSIMなので、組織などで従業員に各自用のSIMを配布するような用途でも管理がたやすい。それが既存ユーザーは実店舗でしか発行できないという状態がほぼ1年続いていたわけだが、ようやく正常な状態に戻ったことになる。

SMSで確認コードを送ることがはがゆい

ただ、eSIMをダウンロードする場合には、確認コードの入力が必要になるそうだ。そして、その確認コードはその電話番号宛てにSMSで送られてくるとのこと。つまり、ある端末を使うのをやめて、別の端末を使う場合、前の端末が正常に使える状態でSMSを受信できなければならない。

ということは、端末を紛失したとか、故障したとか、なんらかの原因で破損してしまった場合には、SMSの受信ができず、実店舗に赴く必要がある。オンラインでのみで再発行手続きができれば手数料は無料だが、ドコモショップに行くと初期費用2,200円が必要になる(オンラインショップでの受付停止期間中であれば0円)。せっかくのeSIMなのに、これではとても使いにくい。

iPhone 14シリーズが発表され、米国モデルは物理的なSIMスロットを廃止し、eSIMのみになったことが話題になっている。13シリーズ以前のiPhoneは、物理SIMスロットとeSIMの組み合わせだったので、どちらのタイプのSIMでも利用できたが、14シリーズ以降はeSIMしか使えなくなるわけだ。

時間と場所の制約が少なく導入できるeSIM

eSIMの何が便利かというと、物理的なSIMスロット数に関係なく、好きな数だけSIM情報を端末に登録しておき、必要に応じて切り替えたり、同時待ち受けしたり、データと音声で別のサービスを使ったりすることができる点だ。

仕事用とプライベート用のSIMを一台の端末に同居させるようなこともたやすい。2枚のSIMを装着できるデュアルSIM端末は以前からあったが、今は、加えてeSIM対応も増えてきている印象だ。

かつては物理SIMをサイフに入れて携行し、たとえば、出張で海外の空港に着陸したら、アマゾンなどであらかじめ購入しておいたその国用のSIMを装着するとか、現地のショップでプリペイドSIMを購入し、SIMを入れ替えるというようなことをしていた。

だが、eSIMなら、任意のタイミングでSIM購入をオンラインですませておき、端末にダウンロードした状態で現地に到着したところで切り替えればいい。無くしやすい極小サイズのSIMを入れ替えたりする必要もない。

モバイル回線の障害対策にもよいのでは

コロナ禍で海外出張の機会は激減していても、昨今のモバイルネットワーク障害などを考えると、別キャリアのMVNOの格安SIMを使えるようにしておこうという気持ちになる方も少なくないはずだ。

何かと便利なeSIMだが、そのeSIMの再発行に確認番号等の入手のために、その電話番号経由の通信が必要になるというのは、どうにも本末転倒だ。ネットワーク障害は起こりえない、端末は故障しない、人は端末を壊さないを前提にシステムが組まれている。

セキュリティ確保は最優先だとは思うが、インターネットを利用したもう少しスマートな方法はないものだろうか。eSIMは、こうした難点さえなければとても便利で使いやすい仕組みなのに、今の状況では、物理SIMを入れ替える方がスムーズで使いやすいというのがはがゆい。