12人の映像監督による12本の短編映画製作プロジェクト『DIVOC-12』藤井道人監督チームの予告映像が10日、公開された。
同プロジェクトは、ソニーグループが新型コロナウイルス感染症により世界各国で影響を受けている人々を支援するために設立した「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」を活用した支援プロジェクト。藤井道人監督チーム(テーマ:成長への気づき 志自岐希生監督、林田浩川監督、廣賢一郎監督)、上田慎一郎監督チーム(テーマ:感触 ふくだみゆき監督、中元雄監督、エバンズ未夜子監督)、三島有紀子監督チーム(テーマ:共有 山嵜晋平監督、齋藤栄美監督、加藤拓人監督)と3チームに分かれた12人のクリエイターたちが作品を制作していく。
映像は、藤井監督の『名もなき一篇・アンナ』から始まる。アンナ(ロン・モンロウ)に「今日はどこへいく?」と優しく声をかけられる男(横浜流星)は、時空を超える旅の中でアンナと出会い自分の運命と向き合っていく。優しく、美しい時間が流れる中で「忘れないよ、忘れない」と涙を流す男の再生の物語となっている。また、スタッフを最小限に抑え、感染対策を万全に撮影された本作は、沖縄・京都・函館・東京と、5000㎞の大移動を経て撮影され、男とアンナの時空を超える旅に相応しいロケーションの美しさも見どころの一つだ。
続けて志自岐監督の『流民』では、あるホテルに泊まることにした女(石橋静河)が、ドアを空けても自分の部屋が見つからず、部屋それぞれに異文化の世界が作り上げられたこのホテルの中で、本当の自分の居場所を探す。林田監督の『タイクーン』では、酔っぱらって釣り船の上で寝てしまった移民のシェフ・シン(小野翔平)が、ある男(窪塚洋介)から「地球人だな」とおもちゃの銃を向けられる。男は「海は次に何をするか見つける場所。お前は陸に着いたら一番に何がしたい?」と問いかけ、夜の海の上で出会った男とシンの不思議な時間の交流を描いた映像となっている。最後に廣監督の『ココ』では、佳奈(円井わん)から妊娠したことを聞かされる熙舜(笠松将)だったが、「困るよ」と佳奈を突き放す。料理人を目指している熙舜は父親との間にも確執を持っていた。そんな彼は、佳奈と真剣に向き合うことも、父親になる決心もつけられず思い悩む。
各作品の場面カットも到着し、切ない表情をする男(横浜流星)のカットやホテルに迷い込んだ女(石橋静河)の姿、夜の海に浮かぶ釣り船で話す男(窪塚洋介)とシン(小野翔平)のカットやタバコをくわえながらどこか悩みを抱えているような表情の熙舜(笠松将)など、それぞれが答えのない何かを探している空気が漂うカットばかりだ。
藤井監督は、“成長への気づき”というテーマについて「自分が解釈したのは“道のり”だったのかなと。自分たちでカメラを買って、最初に10万円とかで自主映画を撮っていたのですが、その中で確実に “成長”というものはあるわけで。あの辛い時期があったからこそ、自分が若い作家たちにしてあげられることは自分にしかできないことだと思います。今回やる自分の作品もそういうものを大事にしてできたらなと思っています。ただ、非常に難しいテーマだとも思っています」と語っている。