映画『怪物』(6月2日公開)の完成披露舞台挨拶が8日に都内で行われ、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、中村獅童、坂元裕二(脚本)、是枝裕和監督が登場した。

  • 是枝裕和監督

    是枝裕和監督

同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。

同作は5月16日~27日に開催される第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門への正式出品も決定し、カンヌを意識した公開日に「去年からずっと公開日がもう6月2日で決まってて、心配だったんです。行けるかどうかわからないから『そんなに簡単じゃないですよ』と言って、『もうちょっと先に延ばしておいた方がいいんじゃないですか?』という話をずっとしてたんですけど、結果的にいい形で参加できることが決まってホッとしてます」と語った。

今回は脚本家の坂元裕二とのタッグになり、是枝監督は「何度か坂元さんと対談をしていただいていて、自分で書かないんだったら坂元さんにお願いしたいとラブコールを送っていたので、名前を出していただいたと思うんですけど、連絡をいただいて、『坂元さんと開発しているプロットがあるんだけど、読んでくれないか』と言われた時点で、読む前に引き受けることは決めていた」と明かす。「どんな話であれ引き受けてチャレンジしてみたいと思いました。そのくらいタッグの実現には憧れてました」と熱い気持ちを見せた。

また、3月に亡くなった坂本龍一さんが同作の音楽を務めていることについて、是枝監督は「撮影場所が諏訪に決まって、描かれる脚本に風景が明快になっていった時に、この夜の湖に坂本さんのピアノが響くといいなと思って、編集しながら当てさせていただいてたんですね。撮影が終わった段階で、編集したものを仮当てした音楽と一緒に手紙を書いてオファーしました」とこちらも熱意のこもったオファーだった様子。

是枝監督は「(坂本さんが)体調のことがあったので、本当にダメだったら諦めようと思ってたんですけど、すぐに観ていただいて、お手紙が届いて。『全部を引き受ける体力は残ってないけど、とても面白くて、音楽のイメージが浮かんでいるので、形にしてみますので、気に入ったら使ってください』というお手紙でした。2曲作っていただきました」と説明。「他の曲は『今まで発表されたものを使っていただいて構いません』というお話だったので、『12』というアルバムからも数曲選ばせていただいて、仮当てした曲も使わせていただいて、整えて、送らせていただいて、了解をいただいてというやりとりを何度かしました」と経緯を語った。

「本当に亡くなられたのは残念ですけど、最後にこういう形でご一緒できたのは自分にとって誇りですし、この作品にとって、坂本さんの音楽が必要だったというのは、誰よりも自分が強く感じています」と是枝監督。「映画に当てて作っていただいた曲だけじゃなくて、『12』から使わせていただいた曲も、映画を見て作っていただいたんじゃないかというくらい映像と作品にマッチして、作品の中から聞こえてくる曲として存在してくれてるので、不思議な気持ちを抱いています」と思いを表した。