女優の松本穂香と玉城ティナがW主演を務める、映画『恋のいばら』が現在公開されている。城定秀夫監督の最新作である同作は、図書館に勤務する24歳の桃(松本穂香)・ダンサーの莉子(玉城ティナ)・カメラマンの健太朗(渡邊圭祐)の3人のいびつな三角関係を描いた物語。健太朗の元カノである桃は、今カノである莉子に「リベンジポルノって知ってますか?」「健太朗のパソコンに保存されている自分の写真を消して欲しい」という相談を持ちかけ、出会うはずのなかった2人が協力関係となる。

今回は、2人の女子が共闘するきっかけとなったカメラマンの健太朗を演じた渡邊圭祐にインタビュー。“クズ男”と言われる役をどう料理したのか、また芝居に向き合った1年の振り返りや、2023年についての抱負についても話を聞いた。

  • 渡邊圭祐 撮影:泉山美代子

    渡邊圭祐 撮影:泉山美代子

■ただのクズな男で終わるのはもったいない

――今回作品の全体的な印象としてはいかがでしょうか?

意外とさっぱりした作品になっている、というのが率直な感想です。もっとドロドロした内容なんじゃないかと連想させるようなあらすじだと思うんですが、観終わってみたら、気持ちの良さも感じてもらえるんじゃないかなと思いました。改めて女子の世界ってどうなんだろう? みたいな想像もさせられました。

――作中では“クズ男”と言われてしまうような健太朗を演じられましたが、愛嬌や優しさも感じられました。

健太朗自身は世間から見たらすごくクズなことをしてるんですけど、祖母を大事にしているような一面もあって、やっぱりおばあちゃんとのシーンに1番彼の本音が出てるんじゃないかと思いました。僕としては、健太朗がただのクズな男で終わるのはもったいないなと思ったんです。実は、すごくピュアなんですよね。だからセリフひとつひとつ裏がないように、相手に投げかけられたらいいなと思っていました。美しいものをただ撮りたいというだけで、彼自身はそれを別に曲がったことだと思ってない人間なんだと解釈して演じていました。

――もっとクズな男に振ることもできたかもしれないですけど、そこにはいかなかったっていうことでしょうか?

やっぱり、クズなだけだと、面白くないじゃないですか。「彼はなんでクズなんだろう?」「ただクズなわけじゃないのかも」みたいなラインでいた方が、人として面白いのかな? と。最初の衣装合わせの時に城定監督とお会いして、衣装がすごく変わったんです。監督が最初に用意されていた衣装はオラオラ系のイメージだったそうなんですが、僕を見てちょっと爽やかな感じに変えたとおっしゃっていて。

僕も最初に台本を読んだ時は、自分からガンガン女の子にちょっかいをかけていく、めちゃくちゃクズな男のイメージだったんです。実際に衣装がかなり変わったことを受けて、監督の狙いとしても、変わったんだなと気づきました。何なら、女子からぐいぐい来られている男性、ぐらいの方が良いのかなと、方向性が変わったのが、1番大きいできごとだったかもしれないです。3人ともにちゃんと物語がなきゃいけないと思いますし、それが健太朗側の物語になりすぎてしまうと、バランスもおかしくなるだろうから、そうならないよう演じていました。

――共演した松本さん、玉城さんについての印象はいかがでしたか?

お二人ともすごくサバサバしているし、とても接しやすかったです。3人ともふだんの雰囲気の温度が低めなので、キャッキャしてたわけでもないですけど、 松本さんと玉城さんがめちゃくちゃ仲良しになっていたので、僕も会話に混ぜてもらっていました。

撮影では、僕自身ベッドシーンが初めてだったのですが、玉城さんが「遠慮しないで来てもらった方がやりやすい」と言ってくれたんです。ああいうシーンって、アクションシーンと一緒で、どこまで踏み込んで良いかは信頼関係によってなせるものなので、それまでの撮影を重ねた上で臨むことができたのもよかったと思いました。

■「まだまだ全然だった」と気づいたできごと

――新たな挑戦もあったんですね。ちなみに2022年はどのような年でしたか?

楽しめた1年でした。2021年の暮れに舞台『彼女を笑う人がいても』に出演して、演出の栗山民也さんに教わったことをどんどん試すみたいな1年だったかなと思っています。映像作品だと、稽古で1つのページに時間をかけるということもなかなかないですし、言葉の持つ力が軸になっている作品だったので、言葉を吐き出す時のエネルギーを感じることができました。これまでも台本に対して向き合っていたつもりだったけど、「まだまだ全然だった」と気づかせてもらった作品でした。

直近だと映画『ブラックナイトパレード』も公開されましたが、同年代と絡める機会がそんなに多くなかったので、刺激になりました。主演の吉沢亮くんは同じ事務所でもあり、同い年で、大河ドラマの主演を経験されていますし、芝居を間近で見られることがすごくうれしかったです。芝居に向き合った1年だったかもしれません。

――「2023年はこんな年にしたい」という思いはありますか?

変わらず自分が楽しめる年でありたいです。やっぱり自分が楽しくないと、楽しい作品をお届けできないと思うので。みなさんの想像を超えて楽しめるような1年にしたい。僕にとってはどれもが新しいことだし、刺激があり、ちょっとでも笑っていられたら勝ちなんだと常々思っています。俳優という仕事はそういう瞬間が多いので、今回の『恋のいばら』も含めて、毎日刺激をもらっています。

■渡邊圭祐
1993年11月21日生まれ、宮城県出身。俳優、モデルとして活躍。ドラマ『仮面ライダージオウ』(18~19年)、『推しの王子様』(21年)、『やんごとなき一族』(22年)など、話題作に出演。映画作品では『ブレイブ-群青戦記-』(21年)、映画『鋼の錬金術師』シリーズ、『ブラックナイトパレード』(22年)など。3月17日には出演映画『わたしの幸せな結婚』が公開。