二宮和也が主演を務め、『64-ロクヨン- 前編/後編』『とんび』の瀬々敬久監督が、辺見じゅん氏のノンフィクション「収容所から来た遺書」を映画化した『ラーゲリより愛を込めて』が9日に公開される。

第2次世界大戦終結後も、ソ連軍によってシベリアの強制収容所に抑留された日本人たちの姿を描いた本作は、同時に、日本で待つ家族たちの物語でもある。二宮演じる主人公・山本を「必ず帰ってきます」と待ち続ける妻(北川景子)とともに、父を思う長男・顕一を演じた奥智哉に話を聞いた。

『ラーゲリより愛を込めて』は、2020年に俳優デビューし、『仮面ライダーリバイス』『みなと商事コインランドリー』などで印象を残してきた期待の新星・奥にとってのスクリーンデビュー作。撮影現場では、先輩・安田顕の真摯な姿が印象に残っていると振り返った。

  • 奥智哉 撮影:望月ふみ

    奥智哉 撮影:望月ふみ

■母親役で共演の北川景子は、おちゃめでかわいらしい人

――大きなテーマの作品でのスクリーンデビューになりました。

瀬々監督は、もともとご一緒したかった監督でした。今回は戦争を通じた人間ドラマですが、自分の年齢でこうした作品に挑戦できるというのは、すごく貴重な体験だと思っています。自分の人生にとって、大きなものになるだろうと感じます。

――本編では、北川景子さんとの共演シーンが多かったですね。

はい。自分の中ではすごく遠い存在の方でしたが、実際にお話ししてみると、おちゃめでかわいらしくて親しみやすい方で、印象がガラリと変わりました。冗談も言って、現場の空気を和ませてくださっていました。

――北川さんが自分のお母さんというのは率直にどうでしたか?

最初はすごく不安でした。自分に務められるだろうかと。でも実際にお会いしてお芝居をしていくうちに、なんだかすっと納得がいったというか。本番が始まってカットがかかるまで、本当の母のような存在でした。スタンバイの時間のときにもお話しましたが、泣きのお芝居の際のエピソードを話してくださいました。

――具体的にはどのような?

以前、北川さんが泣きのお芝居のときにコンタクトを入れていたら、涙と一緒にポロっと取れちゃったそうなんです。それで、カメラに映らないように、ささっとすぐに手で払ったと。「コンタクトは邪魔になっちゃうかもしれないから、泣きのお芝居のときには先に取っておいたほうがいいかもね」とアドバイスしてくださいました。

――長男役でしたが、その辺は意識しましたか?

確かに僕が長男役ですし、兄弟役のなかで実際の年齢も一番上だったので、引っ張っていかなきゃと最初は意識していたのですが、みんなすごく大人びてるんです。ビックリするくらいプロという感じで。僕がその子たちの年齢のときなんて、全然しっかりしてなかったのに、すごいなと純粋に感心していました。

■先輩、安田顕のストイックな姿に感銘

――そうなんですね。では先輩たちの姿にすごいなと感じた瞬間はありましたか?

安田顕さんの姿を見て、ストイックですごいなと思いました。安田顕さんは、シーンが始まる前に、1人になって時間をかけてすごく集中されていたんです。先輩方が本番前にどのように切り替えていいお芝居をされているのかが気になっていたので、すごく集中をして臨んでいる姿を見て、とても勉強になりました。普段の安田さんは、すごく物腰が柔らかくて優しい方だったので、ギャップも印象に残っています。

――実際に出来上がった作品をご覧になっていかがでしたか?

自分のシーンになると、作品の足を引っ張っていないか心配でしたし、まだまだ足りないところや課題を教えてくれた作品だと改めて感じています。作品全体としては、戦争を描きながら人間賛歌でもあり、人間の愛のすばらしさ、愛の尊さを謳った映画だなと思いました。僕らのような10代の若い子たちも、「戦争ものだ」と敬遠したりせずに、映画を観に行ってほしいなと感じました。実際に僕も感動しましたし、同年代の子たちにも刺さると思うんです。

――確かに特に最後のほうでは人間賛歌を強く感じますね。小さな幸せについても感じます。みんなでご飯をおいしく食べる幸せとか。

そうですね。僕もおいしいものを食べたときは、幸せです。ヒラメの刺身とか、焼き鳥とか。あとはアニメが大好きなので、アニメを見たりグッズを買ったときに、幸せだなって実感します。今年は「JOJO WORLD2」に友達と一緒に行ったんですけど、幸せな時間でした。

――奥さんは『仮面ライダーリバイス』に出演されていましたが、それこそジョジョ系の実写映画のようなアクション映画にも出たいですか?

アクション映画には出たいですが、大好きなアニメの映画化とかは、恐縮しちゃって胃が痛くなると思います(苦笑)

――(笑)。ところでヒラメのお刺身や焼き鳥が好きとのことですが、趣味で釣りもされるとか。アニメは別として、渋めのセレクトですね。

父親の影響です。小さなころから家族でスキーに毎年行っているので、スキーも好きです。あとは家族でキャンプに行ったり。キャンプ場の近くに滝があって、そこでたき火をしたりとか。インドアもアウトドアも、どっちも好きです。

――現在高校3年生とのこと。高校卒業は、人生のなかでも大きな節目のひとつですね。

はい。僕も父親に、「もっと仕事として意識を高くしていかなきゃダメだ」とよく言われています。改めて、自分を鼓舞して、去年よりも昨日よりもという意識で、これからもやっていけたらと思っています。

――ありがとうございます。最後にひと言お願いします。

重ねてになりますが、人間の愛の尊さを謳った映画です。いま観るべき作品だと僕は思っていますが、でも気負わずに、気軽に足を運んでもらえたらいいなと思います。

■奥智哉
2004年7月18日生まれ、神奈川県出身。ドラマ『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』『監察医 朝顔』第2シリーズ(21年)などに出演し、2021年9月期からスタートした『仮面ライダーリバイス』では、仮面ライダーオーバーデモンズを演じた。今年は『みなと商事コインランドリー』で演じた英明日香役で人気を博す。映画『ラーゲリより愛を込めて』でスクリーンデビューを果たした。