映画『ラーゲリより愛を込めて』(12月9日公開)の初日舞台挨拶が9日に都内で行われ、二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕、瀬々敬久監督、大吉(犬)が登場した。

  • 左から瀬々敬久監督、桐谷健太、松坂桃李、二宮和也、北川景子、中島健人、大吉、安田顕

    左から瀬々敬久監督、桐谷健太、松坂桃李、二宮和也、北川景子、中島健人、大吉、安田顕

同作はノンフィクション作家・辺見じゅんによる著書の実写化作。第二次世界大戦終了後、60万人を超える日本人が不当に抑留され捕虜となったシベリアの強制収容所(ラーゲリ)で、ただ一人、生きることへの希望を捨てなかった山本幡男(二宮)の半生を描く。

全国352スクリーンで公開され、すでに興行収入20億円突破を狙える大ヒットスタートを記録しているという同作。主演の二宮は「僕は友達が少ない方なので、あまり感想を聞いたりは無いですけど、SNSの反響も見させていただいて、『本当に始まったんだなあ』というのは感じます。我々の伝えたいことが伝わって、より感情に響いたのかな」と喜ぶ。

またこの日は故・山本幡男さんの長男である山本顕一氏を演じた寺尾聰からの声のメッセージも、サプライズで届いた。寺尾は「30年前にテレビで山本幡男役を演じたことや、二宮君と昔、テレビシリーズで親子を演じた縁もあり、今回本当に短いシーンではありますが、ニノの主演作の応援が少しでもできればと思い出演させていただくことになりました」と語る。「青年だったニノも桃李も今や日本映画を代表する俳優になって、いつも遠くから見ていてうれしく思っていました」という寺尾は、実際の顕一氏からの手紙も代読した。

このメッセージに、二宮は「改めて、やはりいい声しているなあと思いながら、贅沢でした」としみじみ。寺尾について「『お前が出てるから、なんかあったら自分が行くよ』とずっと言ってくれてたので、それで本当に出てくれることになって、感謝ですね」と明かす。顕一氏からは「二宮和也さんの姿は、父・幡男にそっくりで、驚きました」と言われており、二宮は「俺もちょっと似てる感じがあるなと思って、現場で『似てない?』と盛り上がったのは覚えてるんですよ。そうやって息子さんも思っていただけてたのは嬉しかったですね」と語っていた。

山本顕一氏 メッセージ(全文)

山本幡男の長男、山本顕一です。映画の公開初日おめでとうございます。
私は、この映画を試写会で二回観ましたが、見れば見るほど関心させられる映画であり、また試写を観た人たちの感想の言葉もとても感激的でした。ありがとうございました。

映画が撮影に入る前に、瀬々監督が訪ねて来られ、父・幡男や母・モジミについて、色々とお話しました。
父と最後に別れたのは私が10歳の時でしたが、当時の私から見た父・幡男について、そしてまた、父不在の中、懸命に私達を育ててくれた母・モジミについて、辺見じゅんさんの『収容所から来た遺書』には描かれていないエピソード等もお話し、そこから瀬々監督は、幡男とモジミの描き方を深めていかれたと伺いました。

完成した映画を観て、強く感じたことは、過酷なラーゲリの状況が、実によく再現されているということでした。
二宮和也さんの姿は、父・幡男にそっくりで、驚きました。
何気ない仕草や表情が、私の記憶している父を彷彿させるのです。
その二宮さんが、山本幡男を「偉人」としてではなく「普通に生きた一人の男」として演じられた事は、私にとって非常に好ましく嬉しいことでした。

母の山本モジミは、最初の脚本では、いわゆる良妻賢母に描かれていました。
瀬々監督にお会いした際に、モジミについて、一生懸命の努力家だったけど、実はとても不器用な人間だったこと、普段は一切涙を見せた事が無い人だったのに、幡男の死亡通知が届いた時に初めて泣いた、それも大声をあげて叫びながら泣いた、という話をしました。
映画の中の北川景子さんを観て、その真っ直ぐな演技から、ひたむきに父・幡男の帰りを待ち続けていた母・モジミの姿が思い起こされ、胸が熱くなりました。

今日から映画が公開されて、多くの人に観てもらえる事を、私も願っています。
特に若い人達には、この映画をきっかけに、改めて過去の歴史を見つめなおしてもらえたらと思います。

山本顕一