米AMDは米国時間の9月6日、ビジネスPC向けプロセッサであるRyzen Proに、第2世代Ryzenコアを搭載したラインナップを追加した。さらにRyzenの下位グレードとしてAthlon(コンシューマ向け)およびAthlon Pro(ビジネス向け)を新たに投入すると発表した。

Ryzen Pro – Pinnacle Ridgeベースのハイパフォーマンスモデル

まずはRyzen PROについて。Ryzen PRO 2000シリーズとしては、Raven RidgeベースのRyzen PRO 5 2400G/2400GEとRyzen PRO 3 2200G/2200GEの4製品が出荷されているが、よりハイパフォーマンスなモデルとしてPinnacle RidgeをベースとしたRyzen PRO 7 2700X/2700及びRyzen PRO 5 2600の3製品を追加した(Photo01)。またエントリ向けには後述するAthlonベースのAthlon PRO 200GEがラインナップされる。

  • Photo01:これで2000世代は7製品となり、初代のRyzen Proを完全に置き換え可能となった

スペックはPhoto02に示す通り。やはりビジネス向けに安定性重視ということもあってか、2700Xのみ若干動作周波数が落とされているが、あとはコンシューマ向けと同一スペックである。ただコンシューマ向けは用意されるRyzen Pro 5 2600Xに相当する製品はPRO版は用意されない。

  • Photo02:Ryzen 5 Proが19MB Cacheなのは、コアの数が2つ少ない分、L2がトータルで1MB減っているという話で、L3そのものは16MBで変わらない

製品名 動作クロック(Base/Max) コア数/スレッド数 TDP
Ryzen 7 2700X 3.7GHz/4.3GHz 8/16 105W
Ryzen PRO 7 2700X 3.6GHz/4.1GHz 8/16 95W
Ryzen 7 2700 3.2GHz/4.1GHz 8/16 65W
Ryzen PRO 7 2700 3.2GHz/4.1GHz 8/16 65W
Ryzen 5 2600 3.4GHz/3.9GHzz 6/12 65W
Ryzen PRO 5 2600 3.4GHz/3.9GHz 6/12 65W

一方、Athlon PRO 200GEであるが、Ryzen Pro 3 2200Gの下という位置付け(Photo03)であり、2コア/4スレッド+3CUという構成である。TDPは35Wに抑えられている。

  • Photo03:またTurbo機能も無効化されている模様

ちなみに今回発表のRyzen PRO 7/5だけでなく、Athlon PROについても、Guard MIやWindows 10 ESS、Memory Encryptionといったセキュリティ機能が有効にされており、フルに利用可能だという(Photo04~06)。

  • Photo04:以下も含めて基本的にはPinnacle Ridge/Raven Ridgeともこの辺りの機能は搭載されており、あとは有効にする/しないの違いでしかない

  • Photo05

  • Photo06

競合製品をキャッチアップとアピール

パフォーマンスに関しては、まずRyzen PRO 7 2700X vs Core i7-8700、Ryzen PRO 5 2600 vs Core i5-8600の比較がこちら(Photo07,08)。一方今回追加されたAthlon PRO 200GEとPentium G4560との比較がこちら(Photo09,10)である。このラインナップ追加により、Intelのビジネス向け製品を完全にキャッチアップした、とAMDは説明している(Photo11)。

  • Photo07:Office Productivityの比較。わずかにRyzen系が有利とされる

  • Photo08:Contents Creation系ではRyzen系が更に有利と説明

  • Photo09:CineBenchではむしろ負けているが、3CUとは言えVegaコアを搭載しているのは大きい。ちなみにグラフはPentium G4560の結果を100%とした相対性能

  • Photo10:Office Productivityではほぼ同等とされる

  • Photo11:ちょっと気になるのは、対抗馬がPentium G5600とかではなく前世代のG4560な事だろうか。こちらだと動作周波数が3.9GHzまで引きあがっているので、もう少し性能差がある。ただし価格面での乖離も激しいからイーブンではない気もするが

ちなみに現状PROシリーズについては価格は未公表だが、Ryzen PRO 7 2700X/2700とRyzen PRO 5 2600Xについては、コンシューマ向けのRyzen 7 2700X/2700及びRyzen 5 2600とそう大きくは変わらないと思われる。またAthlon PRO 200GEについては、後述の様にAthlon 200GEが55ドルで出荷されるので、こちらもこれと大きくは変わらないだろう。

この55ドルという価格、Intelで言うとPhoto11に出てきたPentium G4560ですら希望小売価格は64ドルであり、Celeron G4920(52ドル)に近いあたりの価格設定である。AMDとしてはPentium GのみならずCeleron向けのマーケットを、このAthlon PROでカバーするつもりの様だ。これらのプロセッサは既にOEM及びリテールチャネルに供給されており、米国時間の9月18日から購入可能になる予定だ。

Athlon 200シリーズ – 低価格帯のラインナップが充実

ということで次はコンシューマ向け。Ryzen 3の更に下のポジションとして、新たにAthlonブランドが復活することになった(Photo12)。競合としてはPentium/Celeronにあたり、「とりあえず安く組みたい」「性能はそこそこでいいから省電力を」といったニーズに応える製品となる。

  • Photo12:パッケージは白に

  • Photo13:これはまた、従来のAthlon X4とかA12/A10シリーズAPUを置き換えるものともなる

  • Photo14:L3はRyzen 3同様に4MB。Turboは無効化されているようだ(XFRの有無は不明)

最初のモデルがAthlon 200GEで、Athlon PROと同じく2Core/4ThreadにVega GPU(3CU)という構成である。GEという型番から判る通りTDPは35Wであるが、TDP 54WのPentium G4560と比較しても遜色ない性能を発揮する(Photo15~18)とAMDは説明している。このあたりは、どの程度の性能とコストを要求するのかによって判断は変わってくるところだが、廉価かつ低消費電力の割に、性能はそこそこにあると見てよいだろう。

  • Photo15:CineBenchだと3%ほど性能そのものは低いが、消費電力が半減しているから効率は2倍

  • Photo16:いわゆるOffice Suite系。まぁ大体Pentium G4560と同等である。とりあえずA6-9500Eは可哀そうだからやめてあげて欲しい(せめてA12-9800Eあたりを……)

  • Photo17:Discrete Graphicsを使うケースだとちょっと不利

  • Photo18:内蔵グラフィックを使うと、ずっと有利に

ちなみにこのAthlonシリーズ、現時点ではAthlon 200GEのみが55ドルで発売されるが、2018年第4四半期にはAthlon 220GEとAthlon 240GEが追加される予定である(これはPRO版も同じく)。スペック及び価格は未公表であるが、より低価格帯のラインナップが充実することになるだろう。

これと、先日発売開始されたAMD B450チップセットベースのマザーボードを組み合わせると、CPU+マザーボードで2万円を切ることも無理ではなさそうだ(どうもパッケージにCPUクーラーは含まれていない模様なので、こちらを加味する必要がある)。こちらも9月18日(米国時間)から販売を開始予定である。