三菱電機は、2022年度経営戦略を発表した。
2025年度を最終年度とする中期経営計画の売上高5兆円、営業利益率10%、ROE10%といった財務目標は維持。その一方で、統合ソリューション事業を強化し、「循環型デジタル・エンジニアリング企業」を目指す新たな方針を打ち出した。
三菱電機の漆間啓社長兼CEOは、「三菱電機は、循環型デジタル・エンジニアリング企業に変貌していく。社会課題を明確にし、ビジネスエリアごとに、お客様から得られるデータをデジタル上で収集し、関連部門でエンジニアリングをしながら、統合ソリューションの提案に結びつけていくことになる」と前置きし、「サステナビリティを経営の根幹に据え、事業を通じた社会課題解決を推進するため、新たな価値提供のひとつの形である『統合ソリューション』を強化。コンサルティング、システムエンジニアリング、保守・運用の3つのプロセスを切れ目なく提供し、個々のお客様のニーズに柔軟に応えていく」という基本姿勢を示した。
三菱電機では、これまでにも、サステナビリティの実現に向けて、マテリアリティ(重要課題)を定めてきたが、今回の事業方針説明では、新たに注力する5つの課題領域を、「カーボンニュートラル」、「サーキュラーエコノミー」、「安心・安全」、「イクルージョン」、「ウェルビーイング」として明確化。「各領域において、よりよい社会を実現するために尽力していく」と述べた。
カーボンニュートラル実現に向けた取り組みでは、2050年度にはバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこと、2030年度には工場・オフィスからの温室効果ガス排出量を、2013年度比で50%以上の削減を目指すことを掲げている。
ここでは、社会全体のカーボンニュートラルに向けて、コアコンポーネントの高効率化や小型化など、機器の省エネや電化に向けた開発による「グリーンby エレクトロニクス」、先進デジタル技術の活用により、エネルギー効率の向上、再エネ利用の拡大に貢献する「グリーンby デジタル」、炭素の循環利用実現に向けた研究開発を推進する「グリーンby サーキュラー」の3つのイノベーション領域での研究開発を加速していく。
そしてサステナビリティ経営を実現する体制として、2022年4月から、インフラ、インダストリー・モビリティ、ライフ、ビジネスプラットフォームの4つのビジネスエリア(BA)を設定した新経営体制をスタート。BAオーナーが事業を俯瞰し、ありたい姿を構想し、事業を通じた社会課題の解決を加速することになるという。
インフラは社会システム事業本部、電力・産業システム事業本部、電子システム事業本部で構成。インダストリー・モビリティはFAシステム事業本部、自動車機器事業本部とし、ライフはビルシステム事業本部、リビング・デジタルメディア事業本部、ビジネスプラットフォームはインフォメーションシステム事業推進本部、半導体・デバイス事業本部で構成する。
また、2025年度を最終年度とする中期経営計画においては、事業ポートフォリオ戦略を強化。収益性と成長性をもとに、重点成長事業、レジリエント事業、育成事業/新規事業、価値再獲得事業の4つの象限に分類した取り組みを進めており、その姿勢は今後も維持する。
重点成長事業は、成長していく市場において、グローバルトップとなるポテンシャルを有し、社会課題解決に貢献するイノベーション事業であり、三菱電機の成長ドライバーと位置づけている。また、レジリエント事業は、安定的な需要を有し、市況変動時においても、弾力性を持った経営に貢献する事業としている。
漆間社長兼CEOは、「重点成長事業とレジリエント事業が両輪となり、企業が成長を続け、景気変動の業績への影響を最小限に抑えたい」と述べた。
重点成長事業は、FA制御システム、空調冷熱システム、ビルシステム、電動化/ADAS、パワーデバイスで構成。「成長の実現に向けた事業になる。2025年度の財務目標達成に向けて、着実に成長戦略を推進している」と述べ、FA制御システムでは、脱炭素関連分野での需要に対応する新生産拠点を尾張旭地区に設立。約130億円を投資し、2025年4月に稼働する予定だ。空調冷熱システムでは、トルコMACTに約130億円を投資して、欧州ヒートポンプ需要に対応する空調機生産体制を強化。2024年2月に稼働する予定だ。ビルシステムでは、三菱電機ビルソリューションズを2022年4月に設立。新設から保守、リニューアルまでの一貫した事業運営体制へ移行。電動化/ADASでは、先進運転支援技術に貢献する新型「高精度ロケータ」を民生用として初めて量産化。準天頂衛星からのセンチメータ級測位補強サービス信号を受信できるようになる。また、パワーデバイスでは、自動車および民生分野の旺盛な需要に対応してウエハの生産能力を強化。福山工場に生産効率を高めた8インチラインを構築するとともに、12インチラインの構築にも着手。2025年度までに約2倍に増強するという。
また、重点成長事業の強化に向けてソフトウェア設計子会社6社を統合して、三菱電機ソフトウエアを、2022年4月に設立。ソフトウェア体制の整備や開発力強化に向けて、生産性向上、人員拡充、新技術の取り込みなどを行うという。「各社が培ってきたソフトウェアに関する技術や知見を結集し、三菱電機グループの総合力を発揮できる体制に転換していく」と述べた。
漆間社長兼CEOは、「取り巻く環境が日々変化しており、自動車産業においては、部材や半導体の調達問題のほか、日本では想定したほど電動化が進展していないという課題がある。その一方で、FA・制御は力強い成長を遂げており、部材調達を克服して、目標を達成したい。ビルシステムの昇降機事業は保守会社の買収により、新設事業と保守事業のバランスを取る。ここでも、しっかりと目標を達成していきたい。4つのビジネスエリアから見て、社会課題をしっかりと明確化し、それぞれの事業本部の取り組みだけでなく、相互に連携した形で事業を推進する形にしたい」と述べた。
一方、育成事業および新規事業は、現在の規模は小さいが、将来において三菱電機を牽引していく可能性を秘めた事業としており、データ連携や活用型ソリューション事業の拡大、既存事業の事業モデル変革、次世代事業の創出を行う。運用総額50億円のMEイノベーションファンドを、2022年1月に設立。新規事業の創出に向け、オープンイノベーションを加速する考えだ。
価値再獲得事業では、開発や製造の価値が、現時点では十分に認められていない事業である位置づけ、三菱電機が提供する価値をお客様に認めてもらうべく挑戦をしていくという。そのなかで課題事業については、一定期間を経ても、収益性の改善が見られない場合には、売却や撤退も検討することになる。「事業の売却や撤退によって生まれるヒト、モノ、カネのリソースは重点成長事業に投入し、業績の伸張につなげる」という。
すでに、価値再獲得事業のなかから、加工機、高周波光デバイス、ITインフラサービスは収益性を向上させて、レジリエント事業に追加。北米での無停電電源装置事業の拡大に向け米UPS保守会社のComputer Protection Technology(CPT)を買収したという。
また、課題事業として、京都製作所事業の見直しを行い、液晶テレビ事業の縮小、業務用プリンター事業を終息、屋内用映像マルチシステムの自社生産の終了を発表している。これらの経営資源は、空調冷熱システム事業などへシフトすることになる。さらに、工業用ミシン事業では、JUKIおよび名菱テクニカと、工業用ミシン事業の合弁会社を、2022年7月に設立する予定であり、「両社の持つ強みを融合し、工業用ミシン事業の拡大を目指す」という。
今回の経営戦略説明において、新たに打ち出したのが、「循環型デジタル・エンジニアリング企業」を目指すという方針だ。
漆間社長兼CEOは、「統合ソリューション事業を強化し、データをもとに価値を生み出して、幅広い領域のお客様に還元するサイクルを繰り返すことで、その結果として多様な社会課題の解決に貢献する企業を目指す。これが循環型デジタル・エンジニアリング企業であり、三菱電機がなりたい姿である」と語る。
データの活用によりグループ内のつながりを強化し、創造力を発揮して統合ソリューションを進化。常に進化した統合ソリューションを提供し、事業を通じてお客様と共に社会の幅広い課題を解決していくのが「循環型デジタル・エンジニアリング企業」だとする。
「三菱電機は、幅広い事業領域で様々なお客様とのつながりを持っている。このような多様なお客様に三菱電機の製品を利用してもらうことで生まれたデータをデジタル空間上に集める。このデータを、関係する様々な部門で分析し、お客様自身にも見えていなかった潜在的な課題やニーズを見いだし、新たな価値を創出することで、統合ソリューションを進化させていきたい。これにより、デジタル空間がグループ内の部署と部署、人と人のつながりを強め、知恵や知識を集積する場になるとともに、さらなる創造力を発揮する場にしたい」と語る。
そして、統合ソリューションについては、「システムの提供をライフサイクル全体でサポートするソリューション」と位置づけ、「導入時のコンサルティング、お客様の要望に応えるシステムエンジニアリング、システムを導入してからの運用、保守、よりよいシステムへの更新までを提案し、サポートしていくことになる」とする。
また、「統合ソリューションを実現するためには、アルゴリズムを用いて、リアル空間をデジタル空間上に精緻に再現するデジタルツインの活用が重要になる。リアル空間であるお客様の運用環境を、デジタル空間上に再現し、最適な運用条件を導き出し、これを再度、運用環境に適用することで、安全で、スマートな保守、運用を実現できる」とし、「統合ソリューションをいかに進化させるかが鍵になる。統合ソリューションの運用を通じて、新たなデータが得て、そのデータを分析して、現場での潜在的なニーズや課題を発見し、これらを解消に取り組む。これによって、三菱電機グループの強みであるコアコンポーネント、フィールドナレッジ、先進デジタル技術がさらに強化される」などと述べた。
だが、統合ソリューションの進化に向けては、製品およびサービスといったコンポーネントの強化と、コンポーネントが連携したシステムを統合することが必要であるとし、「現在、取り組むことができているのは強化されたコンポーネントと、コンポーネントが連携したシステムの領域であり、今後、統合ソリューションとして提供する際に、コンサルティング、システムエンジニアリング、保守・運用を連携させなくていけない。社会システムや電力システムにおいてはコンサルティングができる人材がいるが、全体で実現するには強化をしていかなくてはならない。統合ソリューションを加速するために必要な人材の獲得を進めていきたい。すでにコアコンポーネントにe-FactoryやVille-feuilleなどと連携することで、提案をしてきた実績もある。こうした人材を含めてコンサルティングを強化したい」と述べた。
また、「統合ソリューションは、複雑化するお客様や社会の課題への解決力や対応力を向上させ、提供価値を拡大することにつながる。三菱電機が、将来においても社会から必要とされ、成長を持続するための原動力にしていきたい」と語った。
資源投資についても説明した。
中期経営計画期間中には、過去5年間と比較して8,000億円増加の2兆8,000億円の投資を計画。そのうち、重点成長領域に約60%を投入。「伸ばすべき事業を強力に伸ばす」とした。
「小粒ながらM&Aも実施している。社会課題を明確にした上で、ミッシングパーツがはっきりした段階で進めたい。また、研究開発も加速させる。充電成長事業とレジリエント事業は目標と研究テーマを定めてやっている。10年先のあるべき姿を研究開発本部で見定めて、必要な開発を投入していく」とした。
研究開発戦略では、収益向上の原動力となるコア技術の強化、事業を支える土台となる基盤技術の継続的深化、次なる成長の源泉となる新技術の探索・創出を、バランスよく追求。オープンイノベーションを積極的に活用し、事業の付加価値向上と事業化のスピードアップを進めるという。コア技術分野では、ZEB関連技術実証棟「SUSTIE」が運用段階において『ZEB』を達成。中規模の太陽光パネルを建物上にだけ設置したオフィスビル単体では、国内初の実績となった。また、ティーチングレスロボットシステムでは、ロボット導入が難しかった作業の自動化を促進し、工場の無人化に貢献。新技術分野では、人と機械による遠隔融合システムを開発。ロボットが持つ握力をAR上の操作画面に表示し、オペレータがロボットの力を理解。視覚的力触覚技術で、直感的な操作を実現し、遠隔操作ロボットの導入フィールドを拡大したという。基盤技術分野では、制御の根拠を明示できるAIを開発。従来のAIでは、計算過程がブラックボックスになることが多く、信頼性や説明性が求められる制御分野への適応が課題となっていたが、今回の開発によって、AIが制御の根拠を明示することで、安心してAIを利用できる社会の実現に貢献できるという。
また、オープンイノベーションの推進では、M&A、顧客やパートナーとの共創、スタートアップ連携など、外部の知識や技術を活用して、三菱電機のソリューション領域を拡大。スウェーデンの昇降機事業会社であるMotumの買収や、MEイノベーションファンドの設立のほか、最新のDXや統合ソリューションを展示する「XCenter (クロスセンター)」を本社ビル内に設置し、三菱電機が描く未来のスマートシティを示し、オープンイノベーションを推進する場として活用する例などを示した。
知的材戦戦略では、Open Technology Bankに取り組んでおり、三菱電機が持つ多くの知的財産を可視化、分析して、社内同士や、社外との技術結合を促進することで、新たなビジネスを創造していくという。2021年12月に、三菱電機が保有する特許を網羅する技術マップをウェブサイト上に公開。2022年4月には、半導体やモーターなどの代表的な技術に関する特許分布図を公開。これらを活用しながら、社内外のパートナーと対話し、連携の機会を促進する。
また、質的な知的財産活動を開始しており、これまでの量的優位性に加えて、AI・ソリューションに対応した質的な知財力を増強するという。「三菱電機は、特許資産規模や国内特許登録件数はは国内1位であり、国際出願ランキングでは世界5位、国内意匠登録件数では国内2位という実績を誇る。今後は、事業DXの基礎なる知財の質的向上も図る。出願特許に含まれるソリューション比率を現状の10%から2025年度には30%に拡大。AI比率を5%から10%に拡大する」という。
また、業務DXへの取り組みも強化する。1,000億円超を投資して、2021年10月に業務プロセスを変革する全社業務DXプロジェクトを組成し、2021年12月にモデル事業の選定を完了。2022年4月にはし、共通業務システムおよびデータ利活用基盤の構築を開始した。これにより、事業を横断した業務の共通化と、再利用可能なデータの一元化により、事業の枠を超えた全体最適を実現。データとデジタル技術を活用した業務DXにより、経営管理の高度化や、生産性向上による「業務の変革」を推進し、高収益体質への転換を図るという。
さらに、素材調達や物流リスクへの万全な対応、地政学リスクへの備えのために、全社リスクマネジメントを強化。2020年10月に設置した経済安全保障統括室に続き、2022年1月にはリスクマネジメント統括室の設置と、CRO(Chief Risk Management Officer)を配置。AI分析によるサプライチェーン全体のリスク把握や、ITツールを活用した迅速な災害時調達リスクの把握により、レジリエントでサステナブルなサプライチェーン構築する。「それぞれのリスクに対して、強固な経営基盤づくりを進めていく」と述べた。
一方、経営基盤の強化の一環として、2022年2月にRBAに加盟し、RBAの先進的な取り組みや評価手法を社内外への導入に着手。女性管理職比率の向上で2025年度までに2倍に拡大。男性の育児休職取得を促進し、2021年度には65%だったものを、2025年度までに70%に拡大。あわせて、ナショナルスタッフの積極登登用を行うという。「多様な人材と価値観を尊重し、個人の能力と組織の力を最大限発揮できる職場を目指す活動を強化。労務問題の再発防止を経営の最優先課題とし、外部専門家による第三者検証を踏まえた『職場風土改革プログラム』にグループをあげて取り組み、オープンなコミュニケーションでつながることにより、『上にものが言える』、『失敗を許容する』、『協力して課題を解決する』風土を実現する」という。
こうした取り組みを通じて、働くことの誇りややりがいを感じている社員の割合を、2021年度下期の54%から80%以上に、仕事と生活のバランスが取れていると感じている社員の割合を65%から80%以上に高める非財務指標も掲げている。
漆間社長兼CEOは、「三菱電機の社員は、事業本部を超えた活動を、これまであまり意識していなかった。新たな体制で。事業本部を超えて、様々な発想をしてもらうことができると考えている。社会課題に対して、事業本部を超えて新たなアイデアを出し、オープンイノベーションを通じた活動も行っていく。長年、ひとつの事業本部に所属するということではなく、自分がやりたい部門に異動し、社会課題を解決するという発想転換もして欲しい。従業員が多面的な考え方でビジネスをする形に変えていきたい。上司の顔色を伺うのではなく、上司と同じ目線で、ひとつのチームとなって課題を解決していく方向に転換していく。風土改革と事業の強化を両輪で取り組んでいく」と述べた。
三菱電機において、最重要な課題となっているのが、製品およびサービスの品質問題である。
2022年5月25日には、調査委員会から、第3報となる調査報告書が提出され、それを受けて会見を行った漆間社長兼CEOは、2時間近くに渡る会見のなかで、「一連の不適切行為により、お客様、関係者、社会の皆様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げる」と陳謝。「お客様との協議に基づき、特別点検の実施などを行っている。丁寧な説明と相談を重ね、適切に対処していく」とした。
品質不適切行為発生件数は、2022年10月公表時には2製作所で18件、12月には5製作所で29件が指摘されていたが、今回の調査では新たに15製作所で101件が指摘され、累計では16製作所、148件に達している。
また、今回までの調査では、通信機製作所、静岡製作所、群馬製作所、京都製作所、産業メカトロニクス製作所、高周波光デバイス製作所の6つの製作所での不適切行為は確認されていないが、これらの製作所でも、業務品質に関わる指摘があり、全社的な品質レベルの向上が必要であるとの認識を示した。
漆間社長兼CEOは、「コストを優先し、品質に関する不適切行為を行っていたことは、三菱電機に共通する風土の問題であると考えている。長年に渡って不適切行為が行われ、そこに上長が関わっていたことは組織ぐるみだといわざるを得ない。自分たちの行動を正当化する動きもあった。これだけの件数があることを真摯に受け止めなくてはならない。しっかりと是正をしたい。全容を解明し、信頼回復、信頼回復につなげることが私の責務である」と語った。
調査報告書第3報においては、調査委員会が、2,303件の要調査事項を抽出し、そのうち1,933件について調査を終了。「残り2割の調査が残っている。調査に全面的に協力し、不適切行為の全容解明に向けて、総力をあげて取り組む」と述べた。現在、8製作所で調査が完了し、14製作所で調査を実施中であるという。
また、調査報告書では、7つの具体的提言を行っており、漆間社長兼CEOは、これに対応する具体的な取り組みを実施する姿勢を示している。「これまでに指摘された品質不適切行為に関して、きめ細かい分析を実施し、個々の現場に即した再発防止策の深掘りを図る。品質基本理念を再設定するとともに、お客様の満足度が得られる製品、サービスを提供できるように、品質風土改革の遂行や、品質保証体制の強化を図り、品質改善活動を推進する。内向きと指摘されている組織風土の変革にもつなげる」とした。
三菱電機では、一連の品質不適切事案の発生を受け、社長を室長とする緊急対策室を立ち上げるとともに、品質に関わる調査を、外部専門家で構成する調査委員会に委嘱。まずは調査委員会とともに調査の完遂に集中するという。
「調査結果を真摯に受け止め、深い反省のもと、品質風土改革、組織風土改革、ガバナンス改革の3つの改革を実行する。また、社内外に対し適時適切に情報を開示していく」と述べる。
品質風土改革では、品質改革推進本部を社長直轄の組織として設立するほか、本社主導での新たな品質保証機能の強化、事業本部横断の知見共有と機動的な支援を実現。品質担当執行役(CQO)を外部から招へいし、インフラ整備などに向け300億円以上の投資を計画することも盛り込んだ。CQOには、日産自動車出身の中井良和氏が就いた。
「設計や生産技術といった上流で品質を作り込み、その状態を見える化するという品質管理の実行が課題と認識している。指揮命令系統の製作所からの分離や独立、品質保証機能の強化は、品質改善のPDCAを確保する上で有効な方策になる。牽制と支援の両輪でPDCAを回し、誠実な行動ができる会社へと変革していく」とした。
組織風土改革では、全社変革プロジェクトとして「チーム創生」を2021年10月に設置。2022年4月には、組織風土改革の指針「骨太の方針」を策定。各事業本部に専門組織を設置し、148人の体制で実行するほか、人事制度の刷新、閉鎖的な組織風土の打破や、経営陣自らの変革、ミドルマネジメントおよび現場のサポートの推進を行っていくという。
「チーム創生は、2025年度を目安に、新しい文化が定着し、つながりあい、自走する組織へと変革するまで活動を継続する。施策の実施状況についてモニタリングを継続的に行い、実効性を追求および検証する」という。
そして、ガバナンス改革では、経営監督機能の強化に向けた取締役会改革や、2021年10月には、弁護士などの外部専門家で構成するガバナンスレビュー委員会を設置。2022年1月に、社長直轄の専門組織を設置するとともに、新たにリスクマネジメント担当執行役(CRO)を選任した。「今後、ガバナンスレビュー委員会からの提言内容も踏まえ、当社の内部統制システム、ガバナンス体制のさらなる改善を検討し、実行する予定である」とした。また、漆間社長兼CEOは私案であるとしながら、「3年に一度アンケートを取って、不適切な行為が行われていないことを継続的に確認していくべきであると考えている」とした。
三菱電機の体質転換が、持続的な成長につながることになるのは間違いない。