私の配偶者は保険関係の仕事もしている。

保険業の宿命(さだめ)として、ノルマを達成するために自らも保険だらけ、そして家族もその宿命から逃れることはできない。

そんなわけで、結婚以来私も結構な保険だらけであり「こんな原稿で小銭を拾うより、今すぐ死んだ方が儲かる」と言い続けてきたのだが、最近加入している保険一覧を改めて見たところ、私の保険は私よりも「家」の方にかけられている、ということが判明した。

おそらく私に査定がつかなさすぎて、高額の保険をかけようと思ったら、一応資産価値がある家にかけるしかなかったのだろう。

よってこれからは「今すぐ家が全焼して死んだ方が儲かる」と言わなければならない、私が死んだぐらいでは全然儲からないのだ。

保険は人生のなりゆきを賭けたギャンブル

先日、数少ない私にかけていた保険が満期となり、それなりにまとまった金が入金された。

すでに貯蓄型保険の利率などなきに等しく、掛金が返ってきただけにすぎないが定期積立でもしていたと思えばいい。

だが、満期のお知らせと共に私の配偶者はこういった、「戻ってきた金で、もう一度同じような保険に入ってくれないか」と。

保険が終わって保険が始まる。

インターネット野郎なら瞬時に「コブラじゃん」と思うシチュエーションだが、それは違う。

前述の通り貯蓄型保険の条件は悪くなる一方であり、満期になったところで戻ってくるのは賭け金以下なのだ。

つまり「保険が終わって、さらに悪い保険が始まる」が正しい。

「貴様は保険と一家心中するつもりか?」、要約するとそのようなことを言って私は家を出た。もちろん「ここはスターバックスか?」のコブラの顔でだ。

そして10分後に帰って来た。家出ではなく、コンビニにパリパリ食感の枝豆チップスを買いに行きたかっただけだからである。

だがその間に考えた、「我々の夫婦生活において、私が夫に負い目と貸しを作れるのは保険のことだけだ」と。

ここは今後のパワーバランスのために最大限恩を着せる物言いで、新たに保険に入る決意をしたのだが、保険対象が家ではなく「私」だったことが災いした。

保険の申込書を書くところまでは行ったのだが、先日私が受けた健康診断で「要経過観察」が出たことにより「そんな健康状態の人とはお付き合いできません」と言われ契約できなかった。

家のために大して好きでもないブスと結婚してくれと言われ、腹を括ったらブスの方に「あんたみたいなドブスとは結婚できない」と振られた気分だ。

このように、本来なら人の家計と家庭を支えるのが保険であるにも関わらず、保険に家計を圧迫され、家庭の空気を最悪にさせられている家もあるのだ。

その一方で、医療保険に入っていたことにより、保険金と医療費の差額で逆に儲かったという人もいないわけではない。

結局、保険はギャンブルであり「俺は病気にも事故にも一生遭わない」ほうに賭けて勝てば無駄な保険料を支払わなくて済むし、負ければ大損することもある。

しかし「何も起こらない」ほうに賭けるのはあまりにも怖いので申し訳程度に保険に入っている人も少なくないし、車を運転する人は自分のためというより、自分が加害してしまったとき、被害者へ補償するために入っている人も多い。

つまり保険に正解はなく、自分の状況や家族構成、家計、何を目的にするかなど検討してから入らなければいけない。これをしないと特に意味のない保険に金を捨て続けることになる。

だが、この熟考に次ぐ熟考を全部ぶち壊すのが「配偶者が保険業」であることだ。自分にどの保険が必要とか関係ない、入って掛金を払うことに意義があるのが保険業者とその家族の保険である。

ライフプランを考えて生きたいと思っている方は、ぜひその中に「保険業と結婚しない」を入れてほしい。

保険冬の時代に人気集中、アプリで手軽な「コロナ保険」

  • 保険業の家族の宿命(さだめ)はあまりに重く……

    保険業の家族の宿命(さだめ)はあまりに重く……

利率がほぼゼロになってしまった今「保険不要論」はさらに高まり、保険営業がノルマを達成するため無理な営業をしたり、違法行為に手を染める事件も起こったりしている。

そんな保険冬の時代に「アツい」と言われている保険がある。

その名も「コロナ保険」だ。

最近話題になったのが「PayPayほけん」が提供する「コロナお見舞い金」だ。3カ月500円の保険料で、加入者がコロナに感染すると5万円の見舞金が受け取れるという。

さらにこの保険は「アプリだけで手続きを完了できる」というお手軽さだ。

現在、オミクロン株により感染者は増える一方である。保険がギャンブルだとすれば「コロナにかかる」ほうに500円賭けておいて損はない。

「コロナにかかったから勝ち」と言えるかはわからないが、何の用意もなくかかるよりは大勝利である。

しかし、500円という安価でコロナワンチャンゲーマンという賭けに乗る人間は多く、現在掛金は値上げされ、当初の三倍になっているそうだ。

ただ500円で加入した人の金額は据え置きだそうなので、やはり儲け話や得な話というのは、早く知って早く乗った奴の方が得するのである。(※編集注:3カ月500円のタイミングで加入した人も、更新時は値上げ後の掛金が適用されます)

PayPay以外にもコロナ保険を出しているところはあるので、かかってから後悔するよりも、今のうちに乗っておくのも良いのではないだろうか。

ちなみに私の村も感染者数は増えているのだが、それでも県内全体で三桁、そして私は家からほとんど出ないので、これでコロナ保険に入るのは分の悪い賭けである。もし加入していたら、率先してコロナにかかりにいってしまうかもしれない。

このように保険というのは、入りすぎると自分の家に火をつけることを考えたりと、目的が変わってきてしまう。あくまで保険は文字通り何かあった時の保険として考えよう。

そしてその考えを無駄にしたくなかったら、保険業とは付き合うな。