Microsoft Edge(以下、Edge)の評判が芳(かんば)しくない。「microsoft-edge」プロトコルをEdgeでしか開けない問題に加えて、最近ではオンラインショップ別に価格を比較する「Price comparison」を搭載し、Canaryチャネル版Edgeにゲーム機能を追加した。今のところPrice comparisonは日本国内では動作せず、ゲーム機能は利用者が意図的に呼び出さす必要があるため、普段のWeb閲覧環境を阻害するものではない。それでも海外の報道や利用者が集う掲示板に目を通すと、Price comparison機能を必要とするユーザーは少ないようだ。
Web閲覧やSaaS利用の基盤となるWebブラウザーが、肥大化することは決して好ましくない。かつてのInternet Explorer(以下、IE)が証明している。よい例がIE用ツールバーだ。Webアクセス時の機能を拡張するアドオンだったが、各Webサイト運営企業が自社製ツールバーをリリースしていた。当時、Webサイトを訪れて言われるがままにIEツールバーインストールすると、肝心のWebページ表示領域(おもに縦方向)が狭まるという笑えないジョークがあったほど。現在のMozilla FirefoxやGoogle Chromeでも、大量のアドオンや拡張機能をインストールして使い勝手(おもに動作スピード)が落ちることはよくある。
そしてEdgeは、学術論文の引用機能や複雑な数式を解く数式ソルバーを搭載してきた。Canaryチャネル版Edgeのコンテキストメニューには、Office on the webを起動する項目を加えている。いずれの機能も、必要とするユーザーには便利だが、使用頻度が著しく低いユーザーに無用の長物だ。
と、否定的な言葉を並べてしまったが、一方でPDFビューアー機能は早期から便利に使っている。Edgeはバージョン80以前からPDFファイルに対応し、昨今のオンライン発表会で配布されるプレゼンテーション資料やプレスリリースをEdgeで閲覧しながら、Microsoft TeamsやZoomに映し出される登壇者の話に耳を傾けてきた。今後のEdgeは既存のリストビュー機能に加えて、各ページの縮小画面を列挙するサムネールビューが加わるという(筆者の環境は対象外なのか動作は確認できなかった)。
Edgeは生産性向上だけではなく、エンターテインメント分野でも機能拡張を図っている。Microsoftが2021年11月に発表したように、Canaryチャネル版EdgeはClarity Boost機能に対応した。詳細は不明だが、ストリーミング映像の品質を向上させる機能のようだ。こちらは2022年中に安定版Edgeへの展開を予定している。
また、Canaryチャネル版EdgeはWebページをスクロールさせるときのリフレッシュレートを高める機能も用意した。VRR(可変リフレッシュレート)に対応するディスプレイドライバおよびディスプレイを用意することで、スムーズな描画とともに、リフレッシュレート抑制による消費電力の削減も見込める。今回は動作検証を行っていないが、環境がそろえばすぐ有効にしたい機能の一つだ。
Edgeは外部的にも内部的にも機能拡張を重ねている。表立った機能は「設定」の「外見」に各ボタンの表示・非表示を選ぶ項目が並んでいるように、機能自体の有効化・無効化を切り替えられるUIを希望したい。筆者にとっては、コンテキストメニューに並ぶ項目を取捨選択する機能も必要だ。IE時代のMicrosoftを踏まえると、こうした小回りの利いた機能を実装するとは考えにくいが、協力しつつもライバル関係にあるGoogle Chromeのコンテキストメニューは実にシンプル。より多くのシェアを勝ち取るのであれば、利用者の細かな要望に応えてほしいところだ。
著者 : 阿久津良和
あくつよしかず
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