どんな高性能なコンピュータでも、失われてしまったデータを取り戻すのは難しい。そんなデータの損失から身を守る手段が「バックアップ」だが、きちんとバックアップしているという人は案外少ないものだ。macOSには極めて強力なバックアップ機能「Time Machine」が搭載されているが、その手軽さの割には、使っているという人は意外と少ない。せっかくの優れた機能を使い、万が一に備えて安全なバックアップ体制を整えるための方法を紹介しよう。
そもそも「Time Machine」ってなに?
「Time Machine」は、macOSに搭載されているバックアップ機能のことだ。Mac OS X 10.5「Leopard」から搭載された機能なので、もう15年もの歴史がある。
通常、バックアップというと、データをコピーするのに時間がかかるため、システムを止めて数時間かけるといった印象がある。しかしTime Machineでは初回こそ時間がかかるものの、それ以降は作業をしながらでも気にならないほどの負荷しかかからず、一時間おきに自動でバックアップを取ってくれる。バックアップにかかる時間そのものもかなり短くて済み、筆者の場合、毎回のバックアップはせいぜい1分程度で終わってしまう。
また、バックアップからデータを復旧させるのも、通常であればある段階のシステムのバックアップ全体を開いて、その中からデータを復旧して…という作業になるわけだが、Time Machineの場合は直接目的のファイルだけを、システムを運用しながら即座に復旧できる。一方でシステム全体のバックアップも取っているため、macOSのインストール時に「Time Machineから復元」を選択すれば、システム全体をバックアップから復元することもできる。ファイル1つからシステム全体まで、対象の範囲が広いのも、Time Machineの特徴と言えるだろう。
そして通常のバックアップは、保存するストレージの容量がいっぱいになったら、古いデータを消すなり、新しいストレージを用意するなりの必要があるが、Time Machineでは過去のデータを消去して空き容量を作り、常に同じドライブでデータを保存し続けてくれる。それも全自動で、だ。
ここまで高度な機能だと、さぞかし複雑な設定や高度な機材が必要だという印象を受けるかもしれないが、Time Machineでは「外付けHDDを接続してバックアップ用に指定する」だけだ。一度設定してしまえば、ユーザーは一切気にすることなく、バックアップは定期的かつ自動的に行われる。
ちなみに、Windowsにも「Volume Shadow Copy Service(VSS)」や「ファイル履歴」というTime Machineに近いバックアップ/スナップショット機能があるのだが、これは対象が基本的にユーザーディレクトリのファイル/フォルダーに限定されていたり、設定が難しく上級者向けだったりで、誰もが気軽に使えるというわけにはいかない。
Time Machineは「高度な機能をわかりやすく簡単にしてユーザーに提示する」という、まさにmacOSのコンセプトに相応しい機能なのだ。
ということで、Time Machineが超スゴいのに簡単に使える機能であることがおわかりいただけたかと思う。次回はもう少し踏み込んでTime Machineの使い方について説明しよう。