携帯電話市場の競争促進に向け、1月より実施されていた総務省の新たな有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」。当初は3月末で結論がまとめられる予定だったのが、報告書案が提示された第6回の会合が実施されたのは4月20日と、大幅に遅れている。これだけ取りまとめに時間がかかった今回の有識者会議からは、当初の思惑が外れ対応に苦慮する総務省の様子が見えてくる。

  • 4月20日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第6回会合。当初の予定から1カ月以上遅れ、4月下旬に入って議論の結論が出る形となった

3月には結論が出るはずだった有識者会議

携帯電話市場の競争環境整備に向け、これまでもさまざまな有識者会議を実施し、携帯電話市場に対して非常に大きな影響を与えてきた総務省。その総務省が、今年の1月より実施していた有識者会議が「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」である。

これは文字通り、携帯電話市場の公正な競争を促進するための実施されたものだが、実際のところはここ最近のMVNOの不調が、この会合の実施につながったと見られている。というのも2016年から2017年頃にかけて、安価なモバイル通信サービスを提供するMVNOへの顧客流出に危機感を抱いた大手キャリアが、端末料金を値引かない代わりに従来より低価格な料金プランを提供したり、低価格なサブブランドや、傘下のMVNOを強化したり、MVNOを買収して自社傘下にしたりするなどして、顧客流出阻止に打って出たのである。

その結果、大手キャリアから他社や、系列のMVNOへ流出する顧客は大幅に減少。キャリアが自社グループ内に顧客を抑え込んだことで、独立系のMVNOは一転して顧客獲得が見込めなくなり、経営破たんに至るMVNOが出るなど不振が続いている。

今回の有識者会議は、そうした現状を受ける形で実施されたもの。それゆえ中古端末が国内であまり流通しないことの問題や、大手キャリアのいわゆる「2年縛り」による顧客のつなぎ止めなどといった、従来の有識者会議で議論に上がったテーマに加え、今回は大手キャリアのサブブランド優遇に関する問題が、大きなテーマとして挙げられることとなった。

この有識者会議は、1月中にキャリアやMVNOなど関係する各社からヒアリングを実施した後、3月には結論が出される予定であった。だが実際のところ、報告書の案が取りまとめられた第6回の会合が実施されたのは、4月20日と大幅な遅れを見せている。会合の動向や報告書の案などから、なぜこれほどまでに結論を出すのに時間がかかったのかを考えてみたい。