米モトローラ・モビリティは2024年7月3日、125Wの急速充電に対応したミドルクラスの最新スマートフォン「motorola edge 50 pro」の国内発売を発表。同時にソフトバンクから兄弟モデル「motorola edge 50s pro」が発売されることも発表されたが、このことは日本市場で同社が大きく躍進する契機となる可能性が高いが、それ以上の成長につなげるにはハードルも少なくない。
「motorola edge 50s pro」で課題のミドルクラスを開拓
2023年に経営破綻したFCNTの事業を承継するなど、これまで手薄だった日本でのスマートフォン市場開拓にも力を注ぎ始めた中国のレノボ・グループ。ただFCNTを手に入れたとはいえ、同社のスマートフォン事業の主軸は米モトローラ・モビリティである。
そうしたことからモトローラ・モビリティもここ最近日本市場の開拓にかなり力を注いでいるようで、携帯大手の一角を占めるソフトバンクとの関係を大幅に強化している。実際、2023年にはエントリークラスの「moto g53y 5G」をワイモバイルブランドから、折り畳みスマートフォンの「motorola razr 40s」をソフトバンクブランドから販売するなど、急速に関係強化を図ってきた。
その取り組みは2024年も続いているようで、2024年6月27日には新しいエントリークラスのスマートフォン「moto g64j 5G」を発表。その兄弟モデルとなる「moto g64y 5G」を、やはりワイモバイルから販売することを発表している。
そして2024年7月3日、同社は新製品発表会を実施し、新たに「motorola edge 50 pro」を発売することを発表している。これは同社としてはミドル~ミドルハイクラスに位置する「edge」シリーズに属し、日本では2023年に発売された「motorola edge 40」の後継となるモデル。曲面ディスプレイやヴィーガンレザー素材を採用したデザインと、125Wの急速充電に対応しているのが大きな特徴といえるだろう。
だがmotorola edge 40はオープン市場のみでの販売となったのに対し、motorola edge 50 proは、その兄弟モデル「motorola edge 50s pro」がソフトバンクから販売されることとなった。こちらはmotorola edge 50 proと比べ、RAMが12GBから8GBに減らされている一方で、カラーが1色追加され3色での展開がなされている点が大きな違いとなるようだ。
そしてmotorola edge 50s proをソフトバンクが取り扱ったことで、モトローラ・モビリティはエントリークラスの「g」シリーズからミドルクラス「edge」、そしてフラッグシップの「razr」シリーズまで、主要なターゲットをカバーできるラインアップをソフトバンクから販売できるようになった。ソフトバンクがこれだけのラインアップを扱うメーカーはそれほど多くはないだけに、両社の関係がとても密になっている様子を示していることは間違いない。
ソフトバンクよりハードルが高い大手2社
そしてこのことは、モトローラ・モビリティの販売に大きな影響を与える可能性が高い。同社の発表によると、2023年における日本での出荷台数は前年比で135%の伸びを示すなど、非常に好調だったというが、そこに影響しているのはソフトバンクから2機種の端末が販売されたことだ。moto g53y 5G、motorola razr 40s共にソフトバンクとの連携施策によって非常に安い価格で購入できたことから、それが販売の拡大に大きく貢献したことは確かだろう。
ただ2023年は、売れ筋となるミドルクラスのmotorola edge 40をソフトバンクに供給できなかった。motorola edge 40はIP68の防水・防塵性能やFeliCaに対応するだけでなく、日本のユーザーの声を取り入れ片手でも持ちやすい横幅とホールド感の実現にこだわるなど、日本のユーザーを強く意識した設計がなされており携帯大手への供給を強く意識した様子がうかがえるのだが、にもかかわらず販売はオープン市場向けのみにとどまっていた。
それだけに2024年、穴があったミドルクラスをmotorola edge 50s proで埋めたことが、同社の販売を大きく伸ばす要因となることは確かだろう。ソフトバンクもmotorola edge 50s proの販売に際して、超高速の急速充電に対応した「神ジューデン」ブランドを付与し、なおかつ端末購入プログラム「新トクするサポート(バリュー)」を適用することにより、1年での端末返却が必要ながら実質12円で購入できるなど、販売面での積極的な協力打ち出している様子がうかがえる。
さらに今後は、フラッグシップのrazrシリーズの投入も期待され、それが同社の販売を押し上げる可能性がある。モトローラ・モビリティは2024年6月に、razrシリーズの新機種「motorola razr 50」「motorola razr 50 Ultra」の発売を発表しており、順当にいけば2023年の「motorola razr 40」シリーズ同様、日本でも発売されるものと考えられる。
そして2023年、ソフトバンクが販売したのはmotorola razr 40のみで、上位モデルの「motorola razr 40 Ultra」はやはりオープン市場向けにしか投入されなかった。それだけにmotorola 50シリーズはmotorola razr 50だけでなく、上位モデルのmotorola razr 50 Ultraもソフトバンク、あるいは他の携帯各社から発売されることが期待される。
日本でさらなる成長を実現するには、ソフトバンク以外の携帯電話大手に向けた販路拡大、より具体的に言えばNTTドコモやKDDIへの販売が避けて通れないだけに、ソフトバンク以外からの販売を確立できるかどうかも大いに注目される所だろう。ただそこでハードルになってくるのが韓国サムスン電子の存在である。
サムスン電子はスマートフォン市場の世界最大手ということもあり、折り畳みスマートフォンをはじめ豊富なラインアップを持つが、ソフトバンクは現在サムスン電子との取引がなく、ある意味モトローラ・モビリティにとっては入り込みやすかったといえる。だがNTTドコモやKDDIは古くからサムスン電子と深い関係にあり、その分端末のラインアップも手厚いことから入り込む余地が少ない。
しかも現在、日本のスマートフォン市場はかつてないほど厳しい状況にあり、携帯各社も端末ラインアップを減らす傾向にある。そうした逆風をはねのけて新たな販路開拓に結び付けられるかどうかも、日本におけるモトローラ・モビリティの今後には大きく影響してくるといえそうだ。