2023年5月13日から14日の2日間、千葉県の幕張メッセにて、複合型エンタテインメントゲーミングフェス「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA」(以下、DreamHack Japan)が開催されました。
「DreamHack」は、1994年にスウェーデンで生まれたゲーミングフェス。世界で年間35万人以上の動員を誇ります。その「DreamHack」が今回、初めて日本に上陸しました。
「DreamHack Japan」では、音楽ライブやeスポーツ大会、企業ブース、PCやゲーム機を持ち込んで楽しむBYOC(Bring Your Own Computer)エリアなど、多彩なコンテンツが複合的に展開されました。記事では、Day1に行われたイベントの模様をお届けします。
あちこちのエリアで膨大な数のイベントが行われる空間
「DreamHack Japan」は、幕張メッセ国際展示場ホール9~11を使った「Activity Area」と、イベントホールを使った「Live Area」の2つの会場で開催。チケットは大きく分けて3種類あり、両方の会場に入場できるチケットと、「Activity Area」のみに入場できるチケット、そして「Activity Area」への入場にBYOC席が付いたチケットが販売されました。
音楽ライブやゲームイベントが行われる「Live Area」だけでなく、「Activity Area」にもステージやブースが多数展開され、会場のあらゆるエリアでイベントが行われます。まるで音楽フェスのように、タイムテーブルを眺めながら「この時間はこのステージを見て、その次はこのブースに行って……」と、考えを巡らせること自体を楽しめるほど、膨大な数のコンテンツが展開されていました。
ゲームやeスポーツとつながりを持つ、音楽アーティストたち
「Live Area」でトップバッターを務めたのは、シンガーソングライターの「岡崎体育」。バトルロイヤルFPSゲーム『Apex Legends』のBGMやアナウンスを取り入れた楽曲で登場し、会場を沸かせました。
Day1の「Live Area」では、「岡崎体育」に続き、バーチャルK-POPアーティストの「APOKI」がパフォーマンス。3つのゲームイベントを挟んだのち、7人組アーティスト「7ORDER」や、仮想空間を舞台とするライブプロジェクト「ReVers3:x(リバースクロス)」、HIPHOPユニット「Creepy Nuts」のライブが行われました。
ラインナップからは、ゲームやeスポーツのシーンとのつながりを持つアーティストが多数出演していることがわかります。「岡崎体育」は、以前から『Apex Legends』のプレイヤーであることを公言しており、「Activity Area」のステージで行われた『Apex Legends』のストリーマー&アーティストエキシビジョンマッチにも出演しました。
また、「ReVers3:x」に出演したHIPHOPアーティスト「OZworld(オズワルド)」は、2022年にプロeスポーツチーム「FENNEL」に加入。「Creepy Nuts」は、タクティカルFPSゲーム『レインボーシックスシージ』(以下、R6S)の大会「Rainbow Six Japan Championship 2021」で楽曲がテーマソングに起用され、大会ステージでのパフォーマンスを披露しています。
こうしたアーティストのライブを、ゲームイベントの前後に楽しむことができる体験は、複合型ゲーミングフェスの「DreamHack Japan」ならではといえるでしょう。
「Live Area」の大ステージでくり広げられるゲームイベント
Day1の「Live Area」では、「VALORANT 女性プレイヤーエキシビジョンマッチ」、「LoL The k4sen × DreamHack」(以下、The k4sen)、「スプラトゥーン3 坂道グループ対抗戦」の3つのゲームイベントが行われました。
「VALORANT 女性プレイヤーエキシビジョンマッチ」と「スプラトゥーン3 坂道グループ対抗戦」には、アイドルグループの「乃木坂46」、「櫻坂46」、「日向坂46」からゲーム好きのメンバーが参加。これらのステージを目当てに、初めてゲームのオフラインイベントに参加したというファンも多かったのではないでしょうか。
「The k4sen」では、人気ストリーマー10名が2チームに分かれ、MOBAゲーム『League of Legends』(以下、LoL)で対戦。このイベントでは、事前に約10日間にわたる練習期間が設けられ、個々の配信が行われていたことで、当日に向けた注目がとても高まっていました。
2チームは、それぞれ2人のマクロ(全体)コーチと、5人のミクロ(個別)コーチをつけた万全の体制で、練習を重ねています。これによってチームでの試行錯誤や成長など、さまざまなストーリーを踏まえての本番となり、会場は一つひとつのプレイに大きな盛り上がりを見せていました。
なお、「The k4sen」は、ストリーマーのk4senさんのTwitchチャンネルにて配信が行われたため、アーカイブを観ることができます。今回、それ以外の「Live Area」でのゲームイベントは、残念ながら配信が行われていません。会場にいたとしても、すべてのイベントをまわり切るのは難しいので、次回があれば配信にも期待したいところです。
「Activity Area」では、世界大会やレジェンドの来日も
大きく4つのステージが設けられた「Activity Area」で、ひときわ熱気を感じられたのがeスポーツ大会です。Day1の「STAGE L」では、タクティカルFPSゲーム『Counter-Strike: Global Offensive』(以下、CS:GO)と『R6S』のオフライン大会が行われ、どちらも満席で立ち見が出ていました。
『R6S』のオフライン大会「R6S Dream Showdown」では、レジェンドプレイヤーとして知られる「Pengu」がスペシャルゲストとして来日。「Pengu」をはじめとするゲスト陣やプロチームは、2日間にわたって『R6S』ブースでのサイン会も行っており、ファンにとってはまたとない機会だったでしょう。
また、「Mobile Masters」ステージでは、スマホゲーム『BRAWL STARS』(以下、ブロスタ)の世界大会が開催されました。賞金20万ドルをかけたトーナメントには、世界各地域からトップ8チームが集結。日本からは2チームが出場し、「Crazy Raccoon」が3位を獲得しました。
そのほか、「DreamHack Fighters」と題されたステージでは、アーケード稼働24年目となる対戦格闘ゲーム『ストリートファイターIII 3rd STRIKE』の大会を開催。対戦台が並ぶエリアには、ものすごい数の人が集まっていました。さらにそのまわりには、さまざまな懐かしのアーケードゲームが用意され、ゲームセンターのような空間ができあがっていたのも印象的です。
こうしたフェス形式のイベントでは、気になったステージに気軽に立ち寄ることができます。今まで知らなかったコミュニティの存在を知り、新たなシーンに興味を持つきっかけになるのは、大きな魅力のひとつでしょう。
企業ブースの物販やファンイベントに長蛇の列
「Activity Area」には、さまざまな企業ブースも展開されています。なかでも、開場と同時に長蛇の列ができていたのは、プロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」のブース。アパレルグッズやキーホルダーガチャの販売が行われ、13時ごろにはすでにキーホルダーガチャなどの人気商品が売り切れていました。
また、時間によってゲストが登場する企業ブースもあり、この日の「GALLERIA」ブースでは、2回のトークショーが行われました。トークショーには、『LoL』ストリーマーのらいじんさん、MOTHER3さん、しゃるるさん、たぬき忍者さんに加え、キャスターのJaegerさん、プロ選手のEviさんが出演。『LoL』を始めたきっかけや、今後の配信でやってみたいことなど、さまざまなテーマでのトークがくり広げられました。
なお、企業ブースのほか「Creators Hub」ブースでも、人気ストリーマーなど多くのゲストがミート&グリートを実施。参加に必要な整理券を入手するため、たくさんのファンが列をつくっていました。
「DreamHack」の原点、LANパーティを楽しむBYOCエリア
「Activity Area」の一角には、LANパーティを楽しむBYOCエリアが設けられました。LANパーティとは、ひとつの会場にPCやゲーム機を持ち寄って楽しむ文化のことで、スウェーデンで生まれた「DreamHack」の原点でもあります。
今回、メディア向けのBYOC席が用意されていたため、私自身も座席でゲームをプレイして楽しみました。会場内はフードエリア以外での飲食が禁止でしたが、BYOCエリアでの飲食はOK。座席から2つのステージを眺めることができるうえ、さまざまなゲームの対戦会にも参加できるという、イベントを満喫するにはもってこいのエリアでした。
このエリアで目を引いたのは、座席を取って参加していた小学生の子どもたちの存在です。親御さんに話を聞いたところ、福岡のeスポーツイベント「GATE」で初めてLANパーティに参加したことをきっかけに、今回もBYOC席で参加。子どもたちは、普段から一緒に遊んでいるゲーム仲間なのだといいます。
話を聞いたあと、子どもたちが参加する『VALORANT』の対戦会で人数が足りないということで、急きょ私も参加することに。まさか「DreamHack Japan」の取材に来て、小学生の子どもたちと『VALORANT』で対戦するとは想像もしていませんでしたが、これもLANパーティならではの出会いといえるでしょう。
ただ、一方で日本でのLANパーティの認知度の低さも感じました。実は、彼らは海外にルーツを持ち、インターナショナルスクールに通う子どもたち。親御さんが持っている「海外では子どももLANパーティに参加している」というイメージが、参加を後押ししていたのです。
今回の「DreamHack Japan」は全体的に、各ステージでのイベントがメインコンテンツとなっていた印象で、BYOCエリアの存在感はあまり大きくありませんでした。ですが、スウェーデンで開催される本家の「DreamHack」では、BYOCエリアにとてつもない数のPCが並び、圧巻の光景をつくり出します。
今後も「DreamHack Japan」が開催されるなら、やはり期待したいのはBYOCエリアの認知や規模の拡大です。本家「DreamHack」のように、子どもから大人まで多くの人が席を並べてLANパーティを楽しむ光景が、いつか日本でも見られることを願っています。