映画『スオミの話をしよう』(公開中)が第37回ヘルシンキ国際映画祭で特別招待上映され、三谷幸喜監督が参加した。

  • 三谷幸喜監督

同作は、三谷幸喜監督が脚本・演出を務める、長澤主演のオリジナル作。大富豪の妻・スオミ(長澤)が失踪し、彼女の前の夫たち4人が集合する。大富豪も含めた5人の男たちは、それぞれが接していたスオミの姿を語り、どれだけ彼女を愛していたかマウントを取り合っていく。9月24日までの公開12日間で、観客動員数83万人、興行収入11.4億円を突破し、大きな話題を呼んでいる。

そんな三谷監督最新作『スオミの話をしよう』 (英語タイトル:『ALL ABOUT SUOMI』)が、
第37回ヘルシンキ国際映画祭に特別招待され、現地時間24日夜に海外初上映となるインターナショナルプレミアを実施した。

今作の主人公の名前“スオミ”は、フィンランド語で“フィンランド”という意味。三谷がBlu-rayを観ようと字幕の言語を選択する際、たまたま日本語や英語に交じってsuomi(=スオミ)というワードを発見し「その時、すごくその言葉が印象に残って。日本人っぽくもあるけど、あまり聞いたことがない名前だなと。そこで主人公はスオミに決めました。正直、その時は、深い意味はなく、たまたま目についたというだけなんです(笑)。でもそこから彼女の設定が生まれていきました」と今作の主人公の名前や設定のきっかけとなり、さらには映画のエンディングで、長澤演じるスオミが華麗に歌い踊り、出演者全員が参加した話題のミュージカルシーンのナンバーがフィンランドの首都である「ヘルシンキ」にもなっている。

そんな繋がりからヘルシンキ国際映画祭アーティスティックディレクター・ペッカ・ラネヴァの目に留まり、映画を鑑賞、特別招待となった。ペッカは今作について「『ALL ABOUT SUOMI』は愛されるべき5つの異なる顔を持つ女性を題材にした“Sparkling Comedy(スパークリングコメディ)”で、そこにはLove&Anarchy(愛と自由・何者にも支配されない)という映画祭のテーマとフィンランドそのものに繋がるスパイスも散りばめられています」と招待した理由をコメントしている。

三谷幸喜監督 ヘルシンキ訪問オフィシャルレポート

上映劇場であるヘルシンキで一番古い映画館・Finnkino Maximはタイトルの“スオミ”が気になった日本映画に興味を持つフィンランド人やフィンランド在住の日本人で満席。上映チケットは売り出しから数時間で完売し、映画祭側が追加上映を設けるほど。現地上映前に三谷が「モイ!(やあ!)」とファンランド語で挨拶すると会場からは大きな歓迎の拍手が。さらにフィンランド語で「こんにちは。三谷幸喜です。みなさん、私のフィンランド語が分かりますか? ごめんなさい。私は私のフィンランド語が分かりません」と挨拶すると、会場からは爆笑が起こりました。「僕の一番新しい作品をこうして皆さまに観ていただけるのは本当に幸せだと思っております。タイトルは、『ALL ABOUT SUOMI』です。ただ、あんまりフィンランドのことは出てきません。スオミという日本人の女性の物語です。一応それだけ把握して観て下さい(会場笑)」

その後、三谷もお客さんに交じって鑑賞。上映中には5人の夫たちのコミカルなシーンはもちろん、「コスケンコルヴァ」というフィランドの伝統的な蒸留酒の名前が出てくると、大きな笑い声が。最後のミュージカルシーンでは、「ヘルシンキ」に合わせ手拍子が起こり、歌詞にヘルシンキの名所が飛び出すと、さらに会場は爆笑の渦に!!

さらに、上映後には三谷監督によるティーチインとファンとの交流会も実施!! 上映後のティーチインで観客と今作を観た感想を聞かれた三谷は「正直、脚本を書いて映画を作っている時はそんなつもりはなかったんですが、出来上がってみると、今作ほどヘルシンキ国際映画祭にピッタリな作品はないなと思いました。(会場笑)」さらに、「今は、日本の監督の中で一番ヘルシンキに詳しいと思います」と語る三谷に、観客から「今回、ヘルシンキやフィンランドについて事前に勉強されたかと思いますが、フィンランドに実際来てみていかがですか?」と質問されると、「すごく日本と似ているなと感じました。住んでいらっしゃる皆さんの温かさとやさしさ、少し控えめな所もあって、日本人と通じるものを感じました」と離れたフィンランドと日本の意外な共通点を語る一幕も。また、「コスケンコルヴァはお好きですか?」の質問に、「僕はお酒がほとんど飲めないですが、今日はこんな素敵な日になったので、コスケンコルヴァを初めて飲みたいと思いました。主人公の名前をスオミにして良かった!」とコメントすると、客席からは大きな拍手が起こり、温かな空気のまま、ティーチインは締めくくられました。

作品の感想を聞かれた現地のファンからは「演劇的なところがあって、とても楽しかったです。歌(ミュージカルナンバー「ヘルシンキ」)を聞きながら、こんなに笑ったのは初めてです」「フィンランドのことを世界に知らせてくれて嬉しい」「いろんな要素がある中で、面白さが一番伝わって楽しかった」などの声があがりました。

三谷に改めて今回の映画祭について尋ねると「こちらの方に受け入れて頂けるか、頂けないか僕はけっこう心配で…“ふざけんな!”とか言われたらこの映画を作った意味がない…!とさえ思っていたんですが、皆さん喜んで頂けて、ほっとしています」と安堵の表情。また、ヘルシンキならではのお客さんの反応を聞かれると、「ミュージカルシーンで、瀬戸康史さんが建築家のカール・ルードヴィヒ・エンゲルになって登場するシーンは盛り上がっていましたね。エンゲルすごいな…!と思いました」と、ご当地・ヘルシンキならではの笑いに驚いていました。

また、映画祭の前には三谷が作詞したミュージカルナンバー「ヘルシンキ」に出てくるヘルシンキの名所にも訪問。”カウッパトリ(港近くにあるマーケット)“近くの“カタヤノッカ(静かな港湾地区)“から出ている船の上から、”ウスペンスキー大聖堂“を眺め、建築家のカール・ルードヴィヒ・エンゲル(※19世紀のフィンランド建築上、最も著名な建築家)が設計した“ヘルシンキ大聖堂”を訪ねました。”スオミ”が憧れ続けた街を実際に回った感想を聞かれた三谷は、「今日初めて僕は、ヘルシンキの街を回って、歌詞に出てくる場所を観て、自分の目で確かめることができて、本当に幸せな経験をしました!」と余韻を噛みしめました。

(C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会