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7月2日からいよいよ公開となる『ゴジラVSコング』を一足先に見てきました。

ネタバレは避けますが、まずは一言申しておきたいのは、これまで海外で撮られたゴジラ・シリーズの中でエンタメ度は一番で、活劇度も申し分なし!

個人的には最も面白いハリウッド・ゴジラになり得ていると確信しています。

もっとも今回はキングコングという好敵手がいればこそで、逆に本作を見てコング・ファンはかなり増えることでしょう。

ふたつのドラマを交錯させて
繰り広げられる二大怪獣バトル!

本作はハリウッドのレジェンダリー・ピクチャーズが製作するゴジラ・シリーズの第2弾『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(19)の続編であると同時に、『キングコング 髑髏島の巨神』(17)の続編でもあるという、いわゆるレジェンダリー社が敷く“モンスターバース”最新作であります。

時間軸としては『髑髏島の巨神』が1973年、シリーズ第1作『GODZILLA ゴジラ」が2014年、『キング・オブ・モンスターズ』がその5年後、そして『ゴジラVSコング』はさらにその5年後という設定がなされています。

まずはキング・コングですが、前作から半世紀ほど経った現在は怪獣調査を行う国際研究機関“モナーク”の管理下で生活していて、どこかしら息苦しそうです(ちょっと年老いたオンジ風の貫禄もあります)。

一方、二度にわたる人類との邂逅によって地球の破壊神であるとともに怪獣王として畏怖の対象となったゴジラが、突然フロリダの巨大テクノロジー企業“エイペックス”社を襲撃。

本作は、そのエイペックス社とモナークが協力し、コングを用いて怪獣たちのルーツをたどろうとするミッションと、なぜゴジラがエイペックス社を襲ったのかを探るマディガン(ミリー・ボビー・ブラウン/『キング・オブ・モンスターズ』でゴジラに助けられた少女です/吹替は芦田愛菜)たちのミッションが並行して描かれていきます。

ふたつのミッションを遂行していく中、当然ながらコングとゴジラの戦いが幾度も繰り広げられていきますが、このバトルが実にスペクタクルとして秀逸で、また昼も夜も朝もちゃんと戦ってくれますので、映像そのものも実に鮮やかで見やすいのが一番の美徳。

前作『キング・オブ・モンスターズ』がリアリティを狙いすぎてか夜とか闇の戦いがメインになっていたことを思うに、今回の色彩感覚鮮やかなバトルの数々は日本のゴジラ映画ファンとしては大いに歓迎なのです。

(特に昭和ゴジラ・シリーズの怪獣たちは、大抵青空の下で戦ってましたからね)

また今回は日本のゴジラシリーズのみならず、『緯度0大作戦』(69)など往年の東宝特撮SF映画全般に対する目配せが感じられます。

さらに本作は日本映画『キングコング対ゴジラ』(62)のリメイクではありませんが、どちらかといえば雰囲気として『キングコングの逆襲』(67)を彷彿させてしまうのは、今回のコングが少女ジア(ケイリー・ホトル)と心を通わせているという設定にもあるのかもしれません。

オリジナル版『キング・コング』(33)にはなかったコングとヒロインの心の交流はジョン・ギラーミン監督版『キングコング』(76)で成され、この設定はオリジナル版を敬愛するピーター・ジャクソン版『キング・コング』(05/ちなみにこの作品の邦題は、オリジナル版と同じようにキングとコングの間に「・」が入ります)にも受け継がれていますが、これらよりも前に『キングコングの逆襲』でコングとリンダ・ミラー扮するスーザンは心を通わせていたのでした。

もっとも、さらに遡るとオリジナル版『キング・コング』の後で製作された1949年の『猿人ジョー・ヤング』で既に巨大ゴリラとヒロインの心の交流が図られていますので、真のルーツはこちらという見方もあるかもしれません。

またオリジナル版の続編『コングの復讐』(33)でも、復讐どころか前作での事件の張本人たるカール・デナム(ロバート・アームストロング)とコング・ジュニアとの和解(?)が描かれていました。

それと、オリジナル版とジャクソン版ではコングをアメリカに船で輸送するシーンを意図的にカットしていますが、本作では『キングコング対ゴジラ』やギラーミン版に倣うかのように船の輸送を描いていて、そればかりか今回は『キングコングの逆襲』に出てきたヘリコプターでの輸送シーンまで登場するのには正直驚きました。

さらに本編ではギラーミン(ランス・レディック/吹替は笠井信輔)と名乗るモナーク指揮官が登場しますが、もちろんこれもギラーミン版へのオマージュのひとつではあるでしょう。

一方で、前作の主人公でマディソンの父親でもあるマーク・ラッセル役で再び登場するカイル・チャンドラー(吹替も前作に続いて田中圭)はジャクソン版にも実は出演しており、つまり彼は二度にわたって別々のコングと相まみえることになった次第なのでした。

–{津田健次郎&坂本真綾らツボにはまった吹替版キャスト}–

津田健次郎&坂本真綾ら
ツボにはまった吹替版キャスト

さて、本作は日本語吹替版も上映されますが、昭和の東宝特撮映画世代からすると、当時のこの手の作品に登場する外国人の台詞の大半は日本語に吹替えられていました。

(1984年の『さよならジュピター』あたりから自動翻訳器みたいな設定が用いられるようになり、1989年の『ガンヘッド』でも日本人は日本語、外国人は外国語で普通にコミュニケーションするようになっていきます)

そういうわけで国際的規模のゴジラ映画と聞くと、個人的にどうしても吹替版まで気になってしまうタチなのですが、今回の吹替版、結論から先に申しますとかなり良好です。

何せ主人公のネイサン・リンド(アレクサンダー・スカルスガルド)の声は津田健次郎、ヒロインのアイリーン・アンドリュース(レベッカ・ホール)は坂本真綾ですから、もうこのふたりの名優の熟練の声の演技を聞いているだけで、実に安心快適。

コングと心を通わすジア(ケイリー・ホトル)は耳に障害があって喋れない設定なので、吹替云々は関係なし。

また前作に引き続いて登場する少女マディソンの声は芦田愛菜。こちらも既に声優としてベテラン・クラスですので、実に安定しています。

エイペックス社CEOウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)の声もさすがの貫禄、山路和弘が担当!

前作まで登場していた芹沢猪四郎博士(渡辺謙)の息子として今回新たにお目見えする芹沢蓮役の小栗旬は、自身で日本語を吹替えているので、これまた違和感なし。

驚いたのはシモンズの娘マイア(エイザ・ゴンザレス)役の田中みな実と、マディソンのことが好きで行動を共にするジョシュ(ジュリアン・デニソン)役の田中裕二(爆笑問題)、同じく陰謀を探るバーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の尾上松也らが、意外と言っては失礼ながらなかなか健闘していたことでしょう。

以前、某アニメーション監督に取材したとき、プロ声優ではない芸能人をボイス・キャストに起用することに関して質問したら「正直、困ってしまう事もあるけど、時々プロにはないユニークな味を醸し出す人もいるので、一概には反対しきれないんですよ」と語ってくれたことがありました。

その伝では今回、割かし多くのキャストがツボにはまっていたように思われたのは嬉しい限りでした。

何よりも今回、ストーリー的にさほど難解ではなく、あくまでもメインはゴジラVSコングの壮絶な怪獣バトルの妙にありますので、ファミリー層向けの(そして津田&坂本ファンも!)吹替版の鑑賞も大いにありかと思われます。

2D版は字幕で、3Dや4D版は吹替で、といった感じでリピートして愉しむ見方もあることでしょう。

いろいろサプライズのある作品でもありますので、あまり前情報は入れずに接したほうが得策ではありますが、さすがにアレコレ耳にしてしまったマニアな方なども、それはそれで十分楽しめることはお約束します。

そして、この後“モンスター・バース”はどういう方向へ進んでいくのかも興味津々ですが(続くのかな?)、同時にそろそろ日本映画としてのゴジラの勇姿もまた見たくなってきましたね。

(まあ、あの『シン・ゴジラ』(16)を越えるものを目指すとなると、かなりプレッシャーでもあるでしょうけど……)

(文:増當竜也)

–{『ゴジラVSコング』作品情報}–

『ゴジラVSコング』作品情報

ストーリー
モンスターたちの戦いによって壊滅的な被害を受けた地球では、各地で再建が進められていた。特務機関モナークは未知の土地で危険な任務に挑み、巨大怪獣(タイタン)の故郷<ルーツ>の手がかりを掴もうとする。だがその頃、深海の暗闇からゴジラが出現し、再び世界を危機へと陥れていく。人類は対抗措置として、コングを髑髏島<スカルアイランド>から連れ出す。そんななか、ゴジラを信じ真意を探ろうとする者、故郷を求めるコングと心を通わせる少女など、怪獣を取り巻く人間たちの思惑が錯綜する。やがて人類の生き残りをかけた争いは、ゴジラ対コングという最強バトルを引き起こし、人々は史上最大の激突を目にすることとなる……。

予告編

基本情報
出演:アレクサンダー・スカルスガルド/ミリー・ボビー・ブラウン/レベッカ・ホール/ブライアン・タイリー・ヘンリー/小栗旬/エイザ・ゴンザレス/ジュリアン・デニソン/カイル・チャンドラー/デミアン・ビチル ほか

監督:アダム・ウィンガード

公開日:2021年7月2日(金)

製作国:アメリカ