声優界のトップランナーとして、八面六臂の活躍を続けている宮野真守。DCユニバース最新作『シャザム!~神々の怒り~』(3月17日公開)では、主人公シャザムの日本版声優を担当。スーパーヒーローを躍動感たっぷりに演じている。神々&巨大モンスターの迫力バトルと共に、主人公の“子供から大人への成長物語”も見どころとなる本作。今や声優としてはもちろん、俳優、タレントとしても絶好調の宮野が、「仕事もなく、この先どのように進んでいけばいいのかと悩んでいた」という10代の転機を告白。努力を重ね、武器を身につけた道のりを語った。

  • 宮野真守

古代の魔術師から6人の神々のパワーを授けられた少年ビリーが、魔法の言葉「シャザム!」と唱えると、見た目は大人、中身は子供のスーパーヒーロー“シャザム”に大変身する姿を描く本シリーズ。本作では、まだまだヒーロー初心者のシャザムが“神の娘”三姉妹を怒らせてしまい、彼女たちが巨大ドラゴンを引き連れて地球に襲来。最強なのに逃げ腰全開なヒーローが、神々との闘いに挑む。

シャザム役に抜擢となり、「びっくりした」という宮野。「見た目は大人だけれど、中身が子供だからこその愛らしさや人間味があって、とても魅力的なヒーロー」と役柄に愛情を傾けながら、「アクション全開の映画でありながら、シャザムの成長物語としてのリアルな心情も描かれている。映画を観る人の気持ちに寄り添ってくれる映画だと感じています」と本作の魅力を吐露。「DCのヒーローとして、スーパーパワーで戦う姿も爽快。日本版声優をやらせていただけて、感慨深いものがあります」と喜んだ宮野だが、純粋な少年心をあふれさせるシャザム役を演じる上ではあらゆるチャレンジがあった様子だ。

宮野は「声優の仕事というのは、どれだけ役に向き合えるのかが大事だと思っています。吹替えのお仕事ならば、その役を演じている役者さんの表現にどれだけ向き合えるかということも大事になるので、シャザムを演じるザッカリー(・リーヴァイ)さんのお芝居を細かく追求していきました。ザッカリーさんは、大きな芝居をしたと思ったら、急に小さなお芝居をしてみたり、ものすごく豊かなお芝居をされているんですよ!」と家でも練習を重ね、とことんリーヴァイの演技を研究したという。

俳優としても活動する宮野だからこそ、リーヴァイの芝居の豊かさにより感銘を受ける点も多かったようで、宮野は「『劇団☆新感線』の舞台に出演した時に、『冒頭のシーンは、ずっと動いて、ずっと話していてください』と演出をいただいたことがあって。『はい、わかりました!』と一生懸命にやるけれど、『ずっと動くってどうすればいいんだ!』と困ったんです(笑)。体力もイマジネーションも使うし、自分への挑戦!」と笑いながら、「ザッカリーさんのお芝居を見ていると、いろいろな表現がどんどん出てきてものすごく面白い。そして『どうしてその表現をしたのか』ということにはすべて意味があると思うんです。身体を使って表現することの大変さをわかっているからこそ、僕は『今ザッカリーさん、何をした?』というのをひとつも取りこぼしたくなかった。演者としての想いと声優としての想いが融合したというか、僕だからこそできることを注ぎ込めたらと思っていました」とコメント。「激しくかつ、細かい動きをするので、アフレコをする上でも忙しいキャラクター(笑)」とこぼしながらも、「やりがいしかなかった」と充実感をにじませる。

■シャザム役で悩める少年の心情も丁寧に表現

声優業に励む中では、年齢をはじめあらゆる壁を超えてさまざまなキャラクターに命を吹き込むことになる。本作では見た目は大人、中身はコドモのシャザムを演じ、悩める少年の心情も丁寧に表現した宮野だが、そういった場面で心掛けていることがあるという。

「以前、続編ものをやった時に、とても尊敬している音響監督さんから『大人になっちゃっている。経験値をなくして』という演出をいただいたことがあって。大人になるって経験をしていくことだし、僕ももう40代に差し掛かろうとしているけれど、子供役を演じる時には経験値や蓄積にとらわれてはいけないんだと気付かされました。子供だったころの純粋な気持ちを思い出して、演じるキャラクターとしてしっかりと“当事者”になることが必要」と技術だけではなく、なによりハートが大事になると話す。

宮野が演じるシャザムに変身する前のビリーは、18歳というもうすぐ大人になる微妙なお年頃。仲間との関係やこの先の進路に悩む姿も、本作の大きな見どころだ。宮野は「『これから自分はどうやって生きていけばいいんだろう』という、ビリーの思春期特有の気持ちに共感しました」と告白する。

小学生の頃から劇団に入っていた宮野だが、「高校生の頃も全然仕事がなくて、うまくいかなくて『このままレッスンばかりしていて大丈夫なのかな?』と不安でした。高校卒業が近づくにつれて『これから進学を考える?』と思っても、勉強もしていないしどうしよう…と急に現実が押し寄せてきて」と述懐。「いろいろと行動を起こそうと思ったけれど、尻込みしてしまう自分の不甲斐なさを感じていました。そんな時に、声優の仕事がやってきて。仕事があるということが本当にありがたくて、右も左もわからない状況だけれど、とにかく真っ直ぐに向き合いました。そこから声優として求めていただけるようになったので、予期せぬことで進むべき道が見つけられることがあるんだなと思っています」と2001年に海外ドラマ『私はケイトリン』の吹き替えで声優デビューを果たした転機を振り返りつつ、「それがちょうど18歳の時のことですから、ビリーがシャザムのパワーに出会ったことは、僕にとっての声優業との出会いのよう。本当に声優という道に出会えてよかった」と目尻を下げる。