2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでニュージェネレーション賞を受賞し芸能界入りしてから10年以上が経過した女優の浜辺美波。映画やドラマ、CMなどで大活躍の彼女が、最新作アニメーション映画『金の国 水の国』(1月27日公開)ではヒロイン・サーラの声を担当し、声優としても高い演技力を披露している。まさに八面六臂の活躍をみせる浜辺だが、先に行われた第9回「東宝シンデレラ」オーディションの参加者から“憧れの存在”として自身の名前を挙げられていたことに、ある強い思いが心に宿ったという――。

  • 浜辺美波 撮影:加藤千雅

11歳で芸能界入りした浜辺も、現在22歳。人生の半分を演じるという仕事に費やしていることになる。その間に数々のドラマや映画への出演を重ね、主演として作品の真ん中に立つことも増えてきた。そんななか、声の芝居も何度か経験しているが「毎回すごく難しいですし、普段のお芝居とは違う仕事のように感じています」と率直な胸の内を明かす。

本作で浜辺が演じたのは「金の国」のおっとりした王女・サーラ。姉たちと比べ、自分にコンプレックスを持っているという女の子だ。浜辺は「サーラはすごくおっとりしているのですが、決しておバカさんではないんです。自分の役割をしっかり分かっていて余計なことをしない。いつもニコニコとしていられる強さがある」と解釈したと言うと、「強いからこそ、何があっても穏やかでいられる。そんな感覚を忘れないように演じました」とアプローチ方法を語る。

この言葉通り、劇中のサーラは優しい雰囲気のなかに、しっかりと芯の強さを感じさせるキャラクターになっている。そこにはなんとも言えない多幸感を感じさせるサーラのキャラクターと、浜辺自身の柔らかな声がマッチしているからだろう。

「これまでナレーションやモノローグのお仕事をいただくことが多く、監督さんからも『とてもいいです』と言ってくださることがありました。でも最初は録音された自分の声が、普段しゃべっているときに耳から聞こえる声と全然違ったので違和感があったんです。最近ようやく慣れてきたというか、自分の声が扱いやすくなってきた気がします」

  • (C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国 水の国」製作委員会

それでも「まだまだ自分が声のお芝居に参加させていただくということには葛藤があります」と心情を吐露する。「最近、ゲスト声優として参加させていただく機会が増え、いつも温かく受け入れてくださることがありがたいなと思っているのですが、プロの方とご一緒してその実力を目の当たりにすると、声優さんのすごさを改めて感じます。私としてはちょっとでも作品にプラスになれればという気持ちで臨んでいます」と前向きに捉えるようにしているという。

■子供たちの声で「ありがたい仕事」だと改めて実感

サーラが出会い心惹かれていく「水の国」の建築士・ナランバヤル。2人には“信頼”という強い絆がある。浜辺は「私が友人関係で大切にしているのが、距離感なんです」と切り出すと、「優しさをどれだけ出すかが重要なのかなと思うんです。本当に相手を心配しているとき、あまりそこを強調するのではなく、相手を心配しているからこそ、普段の距離感で接する。好きな相手でも、あまり好きだという気持ちを言葉にし過ぎると、ちょっとそれは違うかなと。そういう部分の距離感がぴったり合う人は安心できますし、信用できる相手なのかなと思います」と語る。

適切な距離感――。友達同士ばかりではなく、どんな関係性でも重要な要素なのかもしれない。浜辺自身、前述したように芸能生活も10年を経過し、気がつけば後輩も増えてきた。先日第9回「東宝シンデレラ」オーディションが開催され、新たなグランプリをはじめ受賞者が並んだ。

「私は結構適応能力が高めだと思うので、普通に後輩ができても、あまり変わらないかなと思っていました。でも今回初めて『東宝シンデレラ』のオーディションに行ったとき、私の作品を観てくださって“憧れの人”の欄に、私の名前を書いてくださっている人がいました。そのことがすごく衝撃というか、ありがたくて」

小学生たちが、これまで出演した浜辺の作品を観て「こうなりたい」と理想として挙げる。「いまはコロナ禍で、ファンの方と接する機会も少ないですし、小学生だとSNSでダイレクトメールをいただくこともなくて。ある意味で実感がなかったのです」と述べ、「そう言っていただけると、私の出演した作品が小さな子供たちにも届いていたんだなと思ってうれしくなりました。すごくありがたい仕事をさせてもらっているんだなと改めて実感しました」と語った。

特に感慨深かったのが、作品が更新されているということ。「これまで『君の膵臓をたべたい』を観たよって声を掛けていただくことが多かったんです。でも小学校4年生ぐらいの子たちのなかでは、圧倒的に『賭ケグルイ』や『約束のネバーランド』なんです。そうやって、作品を重ねるたびに『観ました』と言っていただける対象が変わっていくのは、すごくうれしいです」と笑顔を見せる。