2021年7月18日に、PlayStation 4用ソフトウェア『Virtua Fighter esports(VFes)』初の公式大会「VIRTUA FIGHTER esports PRE SEASON MATCH」がオンラインで開催されました。

8月22日より開催される「VIRTUA FIGHTER esports CHALLENGE CUP SEASON_0」の前哨戦ともいえる大会で、今後の『VFes』のeスポーツシーンの行く末を占う意味でも注目が集まります。

そもそも、「CHALLENGE CUP SEASON_0」がシーズン1へ向けての準備大会であるので、準備大会のさらに事前イベントのようなものですが、「バーチャファイター」シリーズの公式大会は数年ぶりなので、待ち望んでいたファンも多かったのではないでしょうか。

  • 6月1日にリリースされた『VFes』。PS Plus加入者向けに6月1日から8月2日までフリープレイ配信

今大会には128名が参加。ダブルエリミネーション方式のルールが採用されました。試合は3セットマッチのBO3(2勝勝ち抜け)です。

「バーチャファイター」シリーズが行っていた大会はシングルエリミネーションのBO1が多かったので、現在の対戦格闘ゲームのeスポーツシーンに合わせた形式になりました。また、過去の大会では団体戦が多かったので、個人戦であることも現在のeスポーツシーンに合わせた形と言えるでしょう。

大会の配信は、ウイナーズサイドに残った2名、ルーザーズサイドに残った4名によるベスト6から行われました。比較的年齢層が高い対戦格闘ゲームにおいてもさらに年齢層が高めの「バーチャファイター」シリーズ。そのため、30~40代が中心でしたが、20代のプレイヤーも勝ち残っており、層の厚さも見せつけています。

惜しくも予選で敗退した選手のなかには、有名プレイヤーも数多くいました。バーチャの鉄人として名を馳せた池袋サラ選手やバーチャの黄金期を支えたちび太選手、ホームステイアキラ選手をはじめ、現在『ストリートファイターV』のプロ選手として活躍している板橋ザンギエフ選手や『DEAD OR ALIVE 6』のプロ選手である輝ロック選手の名前も見かけました。

板橋ザンギエフ選手は元々バーチャ勢でしたし、『DEAD OR ALIVE』には「バーチャファイター」シリーズのアキラやサラがゲスト参戦しており、同じ3D対戦格闘ゲームとして親和性が高いタイトルです。さらに、輝ロック選手は『VFes』リリース前にも『バーチャファイター5FS』をプレイしていました。

残念ながら予選の様子は配信されず、配信内で紹介されたトーナメント表の結果でしか確認できませんでしたが、往年のバーチャファイターファン、バーチャファイタークラスタであれば、思わず「懐かしい!」と叫びたくなる選手名が並んでいました。

  • オンライン予選のトーナメント表。有名プレイヤーの名前もチラホラ

そんな古豪プレイヤーを押しのけて優勝したのは、ジャッキー使いのしろ選手でした。ウィナーズファイナルでバルゴのジャン選手を倒し、グランドファイナルに進出。グランドファイナルはルーザーズファイナルを勝ち上がってきたバルゴのジャン選手と再び対戦しました。一度敗れ、リセットとなりましたが、リセット後に立て直し、見事優勝を果たしました。

  • 決勝トーナメント。グランドファイナルは、バルゴのジャン選手が意地を見せ、リセットするも、しろ選手が優勝しました

  • しろ選手はジャッキーを使用。『バーチャファイター』時代のローポリスキンの衣装で参戦していました

『VFes』は、6月1日にダウンロードを開始したばかりのタイトルで、今回の大会まで1カ月半しかありませんでした。したがって、新規プレイヤーよりもプレイし続けている古参プレイヤーのほうが有利といえます。

しろ選手は、28歳と比較的若めの選手ですが、それでもプレイヤー歴は10年以上あり、ほぼ休眠状態だった「バーチャファイター」シリーズをずっとプレイし続けていていました。新作もリリースされず、大きな大会も開かれなくなったなかでも継続していた努力が実を結んだと言えるでしょう。

大会終了後には8月22日より開催される「VIRTUA FIGHTER esports CHALLENGE CUP SEASON_0」についての発表がありました。

「VIRTUA FIGHTER esports CHALLENGE CUP SEASON_0」では、12歳以上19歳以下が出場できる「U19部門」と、12歳以上のすべての選手が対象となる「FREE部門」の2つを用意。「U19部門」は最大出場枠32名で、オンライン予選を勝ち抜いた4名がファイナルに進出します。「FREE部門」は最大出場枠192名のオンライン一次予選を勝ち抜いた12名、最大出場枠64名のプレイオフを勝ち抜いた4名の計16名がオフラインで開催されるファイナルに進出します。プレイオフは一次予選に敗退した選手が再エントリーすることもできますが、「U19部門」の予選と同時に開催するため、どちらかをひとつしか参加できません。

  • 8月22日にFREE部門の1次予選、9月26日にU19部門の予選、FREE部門のプレイオフを開催。勝ち抜いたファイナリストが10月10日にオフラインで優勝を争います

優勝者インタビュー

イベント終了後には優勝者インタビューと青木プロデューサーへの取材が行われました。まずは優勝したしろ選手へのインタビュー内容からお伝えします。

――優勝した今の気持ちをお聞かせください。

しろ選手:自分が優勝するとは思って無くて、勝ちきれたのはうれしかったです。予選の初戦からキツい相手でしたが、2-0で勝てたことで、そのあとのペースを握れました。

  • 優勝したしろ選手

――グランドファイナルでは、バルゴのジャン選手にリセットされましたが、それによって戦略を変えたのでしょうか。

しろ選手:ウィナーズファイナルでフラッシュソードキック後にパンチを捌かれたことが何度かあったので、グランドファイナルではパンチを使わず、捌けないキックに変えていきましたね。また、投げが少なかったと思ったので増やしていきました。その中でもバルゴのジャン選手は、ニーストライクが抜けてこなかったのでニーストライクで押して、最後はそろそろ抜けられそうと思い、ほかの投げ技にしました。

――『VFes』は11年振りにリリースされたタイトルですが、前作『バーチャファイター5ファイナルショウダウン(VF5FS)』からの空白期間はプレイされていましたか。

しろ選手:『バーチャファイター』を始めた当時は高校生で、群馬に住んでいました。毎週末東京に出向き、さまざまな大会に出場していたんです。そのときが、一番時間もお金もかけていました。そのあと『VF5FS』の人気が落ちついてくると、東京に遠征に行くのはひと月に一度くらいのペースになり、東京へ行かなかった週末は地元でプレイしていました。

仕事で東京に移り住むことになってからは、『VF5FS』のリリースから何年経っても大会を開いてくれていた池袋のミカドに通って大会に出たり、野良試合をしたりしていました。なので、一番プレイしていたころと比べると、ペースは落ちていますが、ずっとプレイはしていました。

――今回はプレ大会でしたが、本体大会に向けて意気込みをお聞かせください。

しろ選手:予選、決勝ともに有名プレイヤーが多く参加していましたが、出場していない強豪プレイヤーも多くいます。本戦ではそういったプレイヤーと対戦できることを楽しみにしています。今回の優勝で本戦でも戦える自信がつきました。

青木プロデューサーが感じた大会の手応え

――久しぶりの公式大会でしたが、終わってみていかがだったでしょうか。

青木盛治チーフロデューサー(以下、青木P):『バーチャファイター』の大会は以前から行われていましたが、eスポーツとしての大会は今回が初めて。今大会は、本戦に向けての準備的な位置づけでしたが、大きな大会と同じように盛り上がったと感じています。決勝戦は若いプレイヤー同士の対戦となり、(比較的ベテラン勢が多いバーチャファイター界隈でも)若い人もプレイしていることがアピールできたのではないでしょうか。優勝したしろ選手は新たなスタープレイヤーとして、『バーチャファイター』のeスポーツシーンを盛り上げていってほしいですね。

  • 青木盛治チーフプロデューサー

――『VFes』のリリースから1カ月半経過しましたが、手応えを教えて下さい。

青木P:リリース前に想定していたよりも多くの人に遊んでもらっています。体感的には2~3倍くらいでしょうか。『VFes』は今までのシリーズとは違い、リリースして終わりではなく、eスポーツ運営が紐付いているので、バージョンアップも控えています。eスポーツとして継続できるいい流れを続けたいですね。

――久々の公式大会でしたが、成果と課題をお聞かせください、

青木P:新しいスタープレイヤーが生まれたことはうれしく思います。『VFes』でもeスポーツ化できるとわかったことが成果ですね。

課題としては、ステージ選択できるようにしたほうがよかったのかもしれません。今回はすべてランダムだったので。また、予選から決勝まですべてオンラインで行っており、当然ですがオフラインでの開催がまだできていません。なので、オフラインでの見せ方は課題でしょう。

配信では、実況の人(わさこん)が体調不良で出席できず、解説の組長とゲストのノーモーションの2人に実況の部分もお任せしたかたちとなりました。結構うまく視聴者に伝えられたと思いますが、次回はしっかりと実況を入れていきます。

  • 左から組長さん、NOモーション。(星ノこてつさん、矢野ともゆきさん)、青木盛治チーフプロデューサー、橘ゆりかさん、石飛恵里花さん

――チャレンジカップを、FREEとU19の2部門に分けた理由を教えて下さい。

青木P:大会形式はさまざまなパターンを考え、話し合いました。U19のカテゴリーを設けたのは若い世代に参加してほしいという意思の現れですね。

タイトルの性質上、ベテラン選手のほうが経験も実績もあり、『VFes』から始めた人は追いつかない部分があると思います。なので、そういった人たちにも参加できるようにしました。

年齢に関しては19歳がいいのか25歳がいいのか、かなり検討しました。また、復帰組も同様に現役プレイヤーとの差があると思いますので、40オーバー、50オーバーもあり得ないわけではないですが、あまり年齢層が高いタイトルだと思われることもよくないですし、今回はU19に決めたんです。もちろん、U19でも腕に自信がある選手は、FREE部門に参加できますよ。

――ありがとうございました。

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今回の大会は、「VIRTUA FIGHTER esports CHALLENGE CUP SEASON_0」に向けて、良いプレイベントになりました。今後、『VFes』がどのようにeスポーツシーンを盛り上げて行くのか、どのような大会を目指していくのかはまだ見えてきていませんが、ファンやプレイヤーは10年待ったので、今さら急いで体裁を整えるより、長く継続可能な大会、eスポーツ運営できる方法を模索してほしいところです。