2024年1月10日から14日まで、Acerが主催するアジア・パシフィック地域の国際大会「The Asia Pacific Predator League 2024 Grand Finals」が、フィリピン・マニラにて開催されました。本大会では、『Dota 2』と『VALORANT』の2タイトルを採用。日本代表チームとして、『Dota 2』には「REJECT May」、『VALORANT』には「FAV gaming」が出場しました。

両タイトルともに、無観客オフラインでのグループステージを行い、プレイオフに進出したチームが「SM Mall of Asia Arena」(以下、MoAアリーナ)のステージで戦いました。「REJECT May」はグループステージにて、昨年果たせなかった念願の勝利を獲得。そして、「FAV gaming」はグループステージを全勝で突破しただけでなく、最終日の決勝まで勝ち進む快進撃を見せました。

今回、メディアクルーとして日本代表2チームとともに現地へ向かったので、出発からMoAアリーナで行われた決勝までの6日間にわたる模様をお届けします。

  • 2日間の有観客プレイオフが開催されたMoAアリーナのステージ

挑戦する人にチャンスを与える「Predator League」

「Predator League」は公式大会ではなく、Acerが主催するサードパーティ大会のため、それぞれの国や地域から出場するチームの選出方法はさまざま。日本のなかでも、タイトルごとにGrand Finalsへのチーム選出方法は異なりました。

『Dota 2』は世界で高い人気を誇るタイトルですが、日本では知名度が低く、活動しているチームが少ない現状があります。そのため、昨年から引き続きドリームチームとして、「REJECT May」が招待されました。

『VALORANT』では、2023年10月に日本予選を開催。出場した全17チームのうち、トーナメントを勝ち抜き、優勝した「FAV gaming」がGrand Finalsへの出場権を獲得しました。

『Dota 2』は国内のシーンが小さいため、「REJECT May」は普段、大会に出られる機会そのものが多くありません。また、「FAV gaming」は今回が初の国際大会で、オフライン大会を初めて経験する選手もいました。つまり、日本代表2チームにとって、「Predator League」は貴重な経験を積める場であり、大きなチャンスでした。

さらに、「Predator League」は例年、選手だけでなく、eスポーツに関わる仕事をしたい人にもチャンスを与えています。日本で開催された前回の「Predator League」では、会場で出場チームをサポートするチームバディを公募。そして、今年は現地取材を行う2名のメディアクルーを公募しました。私もそのなかから選ばれた1人で、もう1人はeスポーツ大会の取材自体が初めての人でした。

これらは「Predator League」全体で実施されているものではなく、Acer Japanによる独自の試み。日本の「Predator League」では、サードパーティ大会ならではの立場から、eスポーツシーンで挑戦する人にチャンスを与えることが、1つのコンセプトになっているように感じられます。

  • 2023年10月に行われた日本予選「Predator League 2024 VALORANT Japan Round」の結果

  • Grand Finalsに出場した『Dota 2』の10チームとグループ分け

  • Grand Finalsに出場した『VALORANT』の16チームとグループ分け

ファンの応援メッセージとともに、マニラへ出発

日本代表2チームが空港に到着したのは、大会スタート前日の朝。ファンからの応援メッセージが書かれた横断幕に、選手たちが意気込みを書き加えたのち、マニラに向けて出発しました。5時間ほどのフライトを終えて、昼過ぎにマニラへ到着。この日はメディアデーで、大会配信で使われる写真や映像の撮影が行われました。

選手たちが滞在するホテルには、宴会場に全チームのための練習ブースが設けられ、到着した日から練習できる環境が用意されています。翌日から始まるグループステージは同じホテル内で行われ、本配信される試合であれば、カメラがセットされた配信ブースで、それ以外の試合は、練習ブースからそのまま出場する仕組みでした。

  • 出発直前、空港にて横断幕に意気込みを書く「REJECT May」の選手たち

  • ファンからの応援メッセージが書かれた横断幕を掲げる日本代表2チーム

  • ホテル到着後、大会用の写真撮影に臨む「FAV gaming」TenTen選手

  • インタビューに答える「FAV gaming」リーダーMinty選手

  • ホテルの宴会場には、各チームのロゴがついた練習ブースが設けられていた

諦めない心でつかんだ「REJECT May」念願の勝利

大会初日には、『Dota 2』のグループステージが行われました。グループステージでは、5チームずつ2グループに分かれてBo1の総当たりで戦い、各グループの上位2チームがプレイオフに進出します。

「REJECT May」は、初戦でモンゴルチーム「IHC Esports」、2戦目で中国チーム「Team Aster」と戦いましたが、ともに序盤から主導権を握られる展開で敗北。続いて、フィリピンチーム「747.Polaris」との試合が控えていました。

ところが、「747.Polaris」との試合は、相手チームの都合により「REJECT May」の不戦勝が決定。これにより「REJECT May」は、最終戦のバングラデシュチーム「The Council」に勝利すれば、他チームの結果次第で勝利数が並び、グループステージ突破をかけたタイブレークに持ち込める可能性が出てきました。

「The Council」戦でも、「REJECT May」は序盤から相手にリードを奪われる苦しい展開を迎えます。そんななか、勝負のカギを握っていたのは、キャリーと呼ばれる、チーム内で最もゴールドを稼ぐポジションを担うbaseballdogs選手でした。「俺めっちゃ稼げてるからいけるよ!」とチームを鼓舞し、諦めずに戦う空気をつくったことで、劣勢からの見事な逆転勝利を果たしたのです。

試合序盤、実際にはかなりのゴールド差がついており、baseballdogs選手自身も本音では、「これは負けたな」と感じていたのだそう。しかし、「どうしても勝ちたかったから、ホラを吹いてでも、いけるぞと思わせたかった」のだと試合後に明かしてくれました。

この試合で「REJECT May」は、度重なる集団戦で少しずつ有利をたぐり寄せ、手に汗握るシーソーゲームに持ち込んだすえに勝利。前回大会では2連敗で敗退という悔しい結果に終わった「REJECT May」にとって、諦めない心でつかんだ念願の勝利でした。

ただ、この試合と同時に行われていた「Team Aster」対「IHC E-sports」の試合結果により、タイブレークは発生しませんでした。結果は3位タイとなり、グループステージ突破は叶わなかったものの、「REJECT May」にとって大きな自信につながる勝利を持ち帰ることができたといえます。

  • 「REJECT May」上段左からbaseballdogs選手、puru選手(スタンドイン)、下段左からArab選手、うたたねかえる選手、Suan選手、toyomaru選手

  • グループステージ1試合目、配信ブースでスタンバイする「REJECT May」

  • 試合後、Jongコーチのフィードバックを受ける選手たち

  • 最終戦において、チームを鼓舞する重要な役割を果たしたbaseballdogs選手

  • 「REJECT May」はグループBで2勝2敗、3位タイとなった

「FAV」が3試合すべてを勝利し、グループステージ突破

大会2日目には、『VALORANT』のグループステージが行われました。グループステージでは、4チームずつ4グループに分かれてBo1の総当たりで戦い、各グループの上位1チームがプレイオフに進出します。

「FAV gaming」がグループのなかで最も警戒していたのは、初戦のフィリピンチーム「Oasis Gaming」。ここで勝てば、グループステージ突破の可能性はかなり高くなると考えられていました。この初戦では、抜きつ抜かれつの接戦がくり広げられましたが、「FAV gaming」が13-10で勝利。重要な試合を勝ち切り、グループステージ突破に向けて好スタートを切りました。

続く試合は、韓国のGC(女性部門)チーム「Nuclear」との対戦。この直前の試合で、オーストラリアチーム「Antic Esports」が「Nuclear」に13-2で圧勝していたこともあり、「FAV gaming」も大差での勝利が予想されていました。ところが、実際にはかなりの接戦にもつれ込む展開となり、「FAV gaming」は13-10でギリギリの勝負を制しました。

Minty選手によると、初戦で最も手ごわい相手を倒した「FAV gaming」は気が抜けてしまい、「Nuclear」戦ではチーム全体であまり声が出せていなかったとのこと。これを反省した「FAV gaming」は、しっかりと気持ちを切り替え、最終戦の「Antic Esports」に挑みます。

そして、最終戦では「FAV gaming」が安定感ある試合運びで終始リードし、13-7での勝利へ。これにより「FAV gaming」は、初の国際大会であるにもかかわらず、グループステージを3勝0敗の全勝で突破。有観客のMoAアリーナにて行われる、プレイオフへの進出を決めました。

  • 「FAV gaming」上段左からPockyコーチ、Cynthiaアシスタントコーチ、bazz選手、Hands選手、Phantom選手、下段左からMinty選手、TenTen選手

  • 「FAV gaming」の試合は、3試合ともカメラのある配信ブースで行われた

  • 最終戦で勝利を収め、大きな拍手で迎えられるなかガッツポーズで応える「FAV gaming」

  • グループステージを戦い終えた日本代表2チーム

  • 「FAV gaming」はAグループを3勝0敗で勝ち抜き、プレイオフ進出を決めた

1万人の観客を前に「BOOM Esports」との準決勝に勝利

MoAアリーナでのプレイオフは2日間にわたって行われ、試合の間にさまざまな音楽ライブを挟むプログラムで開催されました。Day1は『Dota 2』と『VALORANT』の準決勝をBo1で行い、Day2は両タイトルの決勝をBo3で行います。チケットは両日ともソールドアウト。1日あたり約1万人の観客が大きな盛り上がりを見せました。

Day1の準決勝で「FAV gaming」が戦ったのは、インドネシアチームの「BOOM Esports」。2023年にインドネシアの公式国内大会「VALORANT Challengers Indonesia」で優勝し、「VCT Ascension Pacific」でベスト4入りした実績を持つチームです。対する「FAV gaming」は、初の国際大会とあって海外ではまだ知られておらず、海外キャスターたちは「BOOM Esports」の勝利を予想していたようです。

しかし、「FAV gaming」はその予想を覆す活躍を見せました。初めて経験する有観客オフラインのステージでも、「FAV gaming」は物怖じすることなく、強気なプレイを披露。「BOOM Esports」を相手にリードを奪ったまま、「FAV gaming」が13-7での勝利を獲得しました。これにより「FAV gaming」は、ついに決勝の舞台にまで上りつめることになります。

  • アジア最大級の大型商業施設「SM Mall of Asia」内にあるMoAアリーナ

  • 客入り前の会場の様子。アリーナは関係者席で、一般向けにはスタンド席が販売された

  • 会場内にはノベルティが獲得できる企業ブースが多数あり、どこも長蛇の列ができていた

  • オープニングでは、グループステージを戦った「REJECT May」もステージに登場

  • オーケストラの生演奏をバックに、プレイオフ出場チームがステージ上に勢ぞろいした

  • アリーナ後方に設けられたキャスター席では、英語配信とタガログ語配信が行われた

  • ステージで行われた「FAV gaming」対「BOOM Esports」の準決勝

  • 「FAV gaming」に大きな声援を送りながら観戦する「REJECT May」の選手たち

  • 準決勝で勝利し、配信カメラに向かってポーズをとる「FAV gaming」

決勝で格上に食らいつく戦いを見せた「FAV gaming」

Day2は『Dota 2』の決勝から行われました。「Blacklist Rivalry」と「Execration」のフィリピンチーム同士の対決を2-0で制したのは「Blacklist Rivalry」。そして、続く『VALORANT』の決勝は、フィリピンチーム「Team Secret」と「FAV gaming」の対戦です。

「Team Secret」は、アジア地域リーグ「VCT Pacific」に出場しているチームで、本大会には招待枠で出場。公式大会においては、国内大会の「VALORANT Challengers Japan」に挑んでいる「FAV gaming」にとっては、経験も実績も、はるかに格上のチームだといえます。

しかも、会場では地元チームの「Team Secret」に割れんばかりの声援が送られており、かなりアウェイの環境でした。これに負けじと、日本のスタッフや「REJECT May」の選手たちが中心となって、「FAV gaming」への力強い声援を送ります。

1マップ目は、「FAV gaming」がピックしたブリーズ。「FAV gaming」は決勝において、このマップの取得にかなり懸けていたそうです。実際に「FAV gaming」は、「Team Secret」相手に引けを取らない、見応えのある戦いをくり広げます。しかし、少しずつラウンド差を広げられ、7-13での敗北となりました。

続く2マップ目は、「Team Secret」がピックしたヘイヴン。このマップでは、「Team Secret」のリーグチームとしての格を見せつける圧倒的なプレイに押され、3-13で敗北。これにより「FAV gaming」は、マップカウント0-2で敗れ、準優勝となりました。決勝でのマップ取得は果たせなかったものの、「FAV gaming」はこのすばらしい経験を糧に、きっと今後さらなる活躍を見せてくれるでしょう。

国際大会での勝利は決して簡単なものではありません。これまで私は、海外取材でいくつかの大会を現地観戦してきましたが、日本チームの勝利を見られないことや、日本チームがグループステージを突破できず、有観客オフラインの豪華なステージを眺めながら、「ここに日本チームがいたら……」と思うこともありました。

しかし今回、「FAV gaming」はグループステージを突破するにとどまらず、決勝のステージにまで上りつめるという、目覚ましい快進撃を見せてくれました。これを現地で応援できたことは私にとって感動的な体験で、決勝で格上チームに食らいつく彼らの戦いぶりは、涙なしには見られないものでした。

  • 初の国際大会でありながら、決勝にまでたどり着いた「FAV gaming」

  • 「Team Secret」BORKUM選手、Jremy選手、JessieVash選手、invy選手、NDG選手

  • 会場では地元チームである「Team Secret」に、割れんばかりの声援が送られた

  • 目前に迫った決勝の戦いに向けて、円陣を組む「FAV gaming」の選手たち

  • 「FAV gaming」は、「Team Secret」を相手に堂々とした戦いぶりを見せた

  • 試合終了後、ハグで称え合う「FAV gaming」と「Team Secret」の選手たち

来年の「Predator League 2025」はマレーシアで開催へ

すべての試合が終了し、ステージでは表彰式が行われました。準優勝の「FAV gaming」は、20,000ドル(約300万円)の賞金を獲得。『VALORANT』の優勝は「Team Secret」、『Dota 2』の優勝は「Blacklist Rivalry」と、2タイトルともに地元フィリピンのチームが優勝に輝きました。

そして、エンディングセレモニーでは、来年の「Predator League 2025」がマレーシアで開催されることが発表されました。来年も引き続き、2タイトルを採用しての大会が予定されていますが、どのタイトルになるかは今後決定されるとのこと。来年は日本代表チームのどのような活躍が見られるのか、今から楽しみです。

  • ステージで表彰される「FAV gaming」。準優勝の賞金20,000ドル(約300万円)を獲得した

  • 『VALORANT』で優勝したフィリピンチームの「Team Secret」

  • 『Dota 2』で優勝したフィリピンチームの「Blacklist Rivalry」

  • 来年の「Predator League 2025」は、マレーシアにて開催される