夏、ガスで調理をしているとキッチンが暑くなりますよね。筆者も夏になると「火を使わないレシピ」を検索したり、調理家電をフルに使って何とかしのいでいます。
調理家電のひとつ「IHクッキングヒーター」は炎を使わないため、キッチンが暑くならず夏でも快適に料理ができる調理機器。ガスコンロと比べてトッププレートがフラットで掃除がしやすい、温度管理しやすいといった点も魅力です。
そんなIHクッキングヒーターの歴史を振り返ると、1990年にパナソニックが業界に先駆けて200V対応ビルトインIHクッキングヒーターの量産を開始。もう30年以上の歴史があります。今回、2021年9月に発売されたパナソニックのIHクッキングヒーター最新モデルを体験しつつ、改めて最新IHクッキングヒーターの魅力を探ってきました。
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パナソニックの最新IHクッキングヒーター(Aシリーズ)で調理を体験してきました
体験したのは、パナソニックのIHクッキングヒーターの中で最上位となる「Aシリーズ」。グリル皿方式の「ラクッキングリル」を搭載している点が特徴です。
ラクッキングリルは、一般的な焼き網を使った魚焼きグリルのお手入れに関する不満を解消したもの。フラットなグリル皿を備え、ヒーター部がIHヒーターとなっているため、出っ張りがなくお手入れしやすいんです。
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今回は、グリル部分を中心にチェックします
調理体験は、冷凍保存した鶏肉の塩焼きメニューからスタート。「凍ったままIHグリル」という機能を備えているため、冷凍した魚や鶏肉などをグリル皿に並べてメニューを選べば、おまかせで焼き上げてくれます。食材の解凍がいらないうれしい機能です。今回体験した鶏肉の場合は約20分で完成。
調理中はLEDの庫内灯が光るため、徐々に焼き上がっていくのをながめるのも楽しいものです。鶏肉は皮をパリパリに仕上げるのが難しいですが、見た目からもわかるくらいこんがり焼けて美味しそうな仕上がり。温度センサーによって、庫内の温度とグリル皿の温度を見張り、温度上昇の推移に合わせて焼き加減を調節しています。
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凍ったままの鶏肉をグリル皿に並べます(撮影用に扉を外しています)
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メニューを選んで調理スタート
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LED庫内灯で焼き具合を確認できます
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きれいな焼き上がり! 側面に余分な脂が流れています
続いて、魚を焼きます。冷凍保存したサバと、冷蔵保存したサバの焼き比べ。
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2007年製のパナソニックのIHクッキングヒーター。焼き網式のグリルで冷蔵のサバを焼きます
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最新のAシリーズ。こちらでは冷凍のサバを焼きましょう
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冷蔵のサバを使った焼きサバ。よく焼けています
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冷凍のサバもこんがりと焼けました
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焼きサバを盛り付けたあとのグリル。焼き網には少しサバの身がこびりついています。グリル皿はさっと洗えばお手入れできそう
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焼きサバの食べ比べをするマイナビニュース・デジタルの林編集長。「どちらも美味しくてどっちが冷凍か分からない!」とのこと。(林:実際に外しました……)
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凍ったままIHグリルは、トースト、焼き魚、つけ焼きなど「8メニュー」を搭載
冷蔵サバの焼き時間は約12分、冷凍サバの焼き時間は約15分。冷凍した状態からの調理なのに、3分程度しか変わらないのは驚きです。
Aシリーズはグリル部の底ヒーターにIHヒーターを採用しているので、鍋ごと調理も可能。IHに対応した鉄とステンレス製の鍋が使えます。鉄製のスキレットも大丈夫。今回は「チキンとほうれん草のグラタン」の調理を実演しました。鍋からグラタン皿に入れ替える手間を省けるのがうれしいところ。グリル内の高さは101mm。ローストビーフやパンなど、高さのある食材の調理にも活躍します。
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グリルで「チキンとほうれん草のグラタン」を焼きます。鍋やスキレットを入れてそのまま調理できます
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高温で焼き上げる料理だけでなく、低温で調理するローストビーフなども上手に仕上げます
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パンも焼けます
ラクッキングリルは今年で10周年
パナソニックが最初に「ラクッキングリル」を搭載したのは2012年4月。2022年で10周年となり、「ラクッキングリル」搭載モデルの累計生産台数は100万台を突破しています。
体験してみると、凍ったままの食材もスピーディーに焼ける高火力、フラットな庫内とグリル皿によるお手入れがしやすく、これだけ人気になるのもうなずける使い勝手です。パナソニックの小笠原さんは、ラクッキングリル開発の背景を次のように話します。
「従来の魚焼きグリルは使用後のお手入れに対する不満が多く、お手入れが大変だからグリルを使用しないというお客さまがたくさんいらっしゃいました。また、使用実態を調べると焼き魚が多いものの、焼き野菜など違う料理にもトライしたいというご要望がありました。そこで、お手入れの不満を解決するだけでなく、さまざまな料理も楽しめるグリルの開発しました」(パナソニック くらしアプライアンス キッチン空間事業部 調理機器BU IHCH技術部 小笠原史太佳さん)
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2011年に調査した魚焼きグリルに対する不満
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魚以外にも、野菜や鶏肉などを調理したいというニーズが浮き彫りに
従来の魚焼きグリルのおもな汚れの原因は、庫内に露出した下ヒーターに食材の脂などが触れて発生する油煙。そこで、露出しない下ヒーターを採用し、油煙の発生を減らしました。さらに、グリル皿の溝に傾斜をつけて、脂の飛散を抑えるといった工夫も施し、2012年に「ラクッキングリル」を市場に投入。
その後はグリル専用の薄型IHコイルを開発し、2015年からは下ヒーターにIHヒーターを採用しています。薄型IHヒーターによって火力がアップしたからこそ、凍ったままの食材もしっかり焼き上げられるわけです。
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右が焼き網、左がグリル皿。すき間から食材が落ちないので、カットした野菜なども調理しやすくなりました
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Aシリーズのグリル。下ヒーターにIHヒーター、上に平面ヒーターを採用し、庫内がフラットです
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上のトッププレートに使用しているIHヒーター
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グリルの下部分に搭載した薄型のIHヒーター。トッププレート用のIHヒーターと比べて、約半分の厚さ
「食材を焼いているとき、食材から出た脂にひたると美味しく焼けません。そこで、食材の脂をグリル皿の周囲に流すよう傾斜をつけ、溝の幅も調節しました。これによって脂の飛び散りを防ぎ、庫内の汚れを抑えます」(小笠原さん)
そういえば、鶏肉を焼いたあとのグリル皿は端に脂がたまっていました。シンプルですが、体験してみるとその便利さがわかります。
グリル皿の素材にはアルミとステンレスを合わせた「クラッド材」を採用。熱伝導性が高いため、調理時間の短縮につながります。しかも重さは約1kg。片手でもそこそこ楽に持てる重さなので、お手入れや調理のとき扱いやすさを実感しました。
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Aシリーズのグリル皿。よく見ると溝の高さが中央と端で異なります
5,000匹のサンマを焼いた
Aシリーズではグリルの下ヒーターがIHになり、さらにむき出しではなくなったため、従来の魚焼きグリルとは焼き方が変わります。パナソニックはラクッキングリル用のメニューも開発しましたが、特に力を入れたのは魚焼き。なんと、関係者総出で5,000匹のサンマを焼いて食べたんだとか……。
その甲斐あって、魚を美味しく焼き上げるポイントを見つけ出しました。魚の内面を90~100℃、表面を175~200℃になるように焼き上げることです。温度と火力をコントロールして、冷蔵でも冷凍でも、1尾でも5尾でも、ベストな焼き上がりに仕上げるメニューを生み出しました。Aシリーズのグリルは、最大5尾のサンマを一度に焼ける大きさもポイントです。
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ヒーターを露出させず「埋め込み」にすると、焼き方も変わります。そのため、ソフト開発にも力をいれました
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開発期間中、技術者をはじめ関係者は毎日サンマばかり食べたそうです
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10年前の初代「ラクッキングリル」と比べると、最新モデルは内面をしっとり仕上げるよう進化しています
IHクッキングヒーターというと、トッププレートのコンロ部分の使い勝手が気になりますが、グリル部分を活用すると調理の幅が広がることを実感。後片付けが簡単で使いやすいグリルは、料理のモチベーションを高めてくれそう。リフォームや新築などでIHクッキングヒーターを検討されている方は、ショールームなどでチェックしてみてください。
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パナソニックでは、10周年を記念して「ラクッキングリルご愛用感謝キャンペーンを実施