日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント共催によるeスポーツイベント「eBASEBALL プロスピAリーグ」(通称:スピリーグ)が、12月4日に開幕しました。12月4日にセ・リーグの3チーム9試合が行われ、12月5日にパ・リーグの3チーム9試合が行われました。
4年目のeBASEBALLは『プロ野球スピリッツA』で開催
eBASEBALLは4年前からプロ野球のストーブリーグの時期に開催されており、もうひとつのプロ野球と銘打たれたeスポーツリーグです。2020年度までの3年間は『パワフルプロ野球』シリーズを使用し、eペナントレース、eクライマックスシリーズ、e日本シリーズを行ってきました。2021年はスマートフォンアプリである『プロ野球スピリッツA』を使用した初めてのeBASEBALLとなります。
出場する選手は、オンライン予選、オンライン面接を経て、球団代表決定戦を制した各球団3名ずつ。いずれの選手も初のプロリーグ参戦となります。
プロスピAリーグは、セ・リーグ、パ・リーグに分かれてeペナントレースを実施。1節で、各球団の代表選手が全員1試合ずつ、同じ球団を相手に3連戦行います。全5節のeペナントレースを実施し、上位3チームがeクライマックスシリーズに進出。そこで優勝したチームがe日本シリーズで日本一を争います。
eペナントレースは、3イニング制で、最大延長は2イニング。イニングの裏が終了した時点で5点差がついた場合はコールドゲームとなり、8点差ついた場合は裏表に関係無く強制終了となります。また、試合時間制限は20分で、その時間を超えて延長戦に入ることはありません。
代表選手は、試合出場に伴う選手報酬、リーグ優勝、日本一による報酬、個人タイトルによる報酬を得られます。これ以外に球団ファン応援感謝企画として、各リーグ優勝チームに200万円、日本一チームに300万円の賞金が発生します。これは、代表選手にではなく、各球団に支払われるもので、使途は各球団が企画したファンへの還元として使用されます。
企画は、抽選でファンを公式戦へ招待したり、球団グッズをプレゼントしたり、アカデミー事業へ投資したりなどさまざま。eBASEBALLや『プロスピA』のファンでなくとも、プロ野球の各球団のファンであれば、結果によって恩恵が得られるわけです。つまりゲームやeスポーツに興味がなくても、応援する価値のある大会といえるでしょう。
スピリーグの日本ハム・岩本監督も「実際のプロ野球と『プロ野球スピリッツA』がこんなにしっかりコラボができているのはうれしいです。この融合は大切にしたいと思っています」と、プロ野球ファンとeBASEBALLファンが融合することを歓迎しています。
プロスピAリーグは、オフラインの無観客試合で行われます。試合会場には、選手のほか、スピリーグ監督も参加。実況解説も会場で行われるので、臨場感は例年通りでしょう。
スピリーグ監督は、基本的にそのチームを代表するプロ野球選手OBがその任に就きますが、注目すべきはオリックス・バッファローズです。スピリーグ監督を務めるのは、オリンピック アテネ大会で金メダルを獲ったソフトボール元選手、乾絵美さん。NPB初となる女性スカウトをオリックス・バッファローズで務めています。eBASEBALLでも初の女性監督として、その手腕に期待したいところです。
今回は5日のパ・リーグの開幕戦のみ取材に行ってきました。4日のセ・リーグは、中日が広島に2勝1敗、巨人が横浜DeNAに2勝1敗、阪神がヤクルトに3連勝という結果です。
パ・リーグの3試合はソフトバンク対ロッテ、楽天対日本ハム、西武対オリックスの組み合わせ。ソフトバンク対ロッテでは、1戦目に登場したロッテのキャプテンの伊藤選手が、今大会初となる強制終了を決め、ソフトバンクを圧倒します。その後、今元選手、小倉選手とその勢いを引き継ぎ3連勝を決めました。
楽天対日本ハムは、1戦目に登場した日本ハムの本山選手が楽天打線を1点に抑え、4-1で勝利。2戦目は楽天の近山選手が最終回の裏まで2-0で抑えてきましたが、日本ハムの山口選手が最終回で一気に3点もぎ取り、サヨナラ勝ちを決めます。そして、3戦目は楽天の浅野選手が4-3で一矢報いて、日本ハムが2勝、楽天が1勝という結果になりました。
西武対オリックスは、1戦目が西武の松井選手によるサヨナラ勝ちで勝負が決まります。続く2戦目は、西武の波多野選手の打撃が爆発し、9-0の強制終了です。3戦目はオリックスの草野選手が、最終回1点差から一挙4点を奪い逆転。そのまま勝利を収めました。
今回からスピリーグ監督が選手とともに参加
先述した通り、今回のeBASEBALLから、監督も選手と一緒に会場入りしています。選手を激励したり鼓舞したりと、初めてプロとして活躍する選手のバックアップをしていました。
ロッテの里崎監督と日本ハムの岩本監督は得意のトークが冴え渡り、選手以上に大会を盛り上げます。楽天の聖澤監督は、チームデータの資料を選手と共有し、相手チームが選手交代をするたび、そのデータを一緒に調べていました。監督としてだけでなく、eスポーツならではのアナリストとしての役割も務めています。
岩本監督は「スピリーグ監督の役割は、選手達をいかにリラックスさせるかだと思うんですよね。普段通りのプレイができる環境作りができるかが重要なんです。緊張していると思ったら、それをやわらげることが役目だと思います」と語っています。
試合に負けてしまった選手に対しても、同じ選手同士が慰めるより、立場の違う監督が慰めるほうが効果も出るのではないでしょうか。特に同一カード3連敗のように全員が負けた場合、選手を労い、やる気を奮い立たせるのは監督以外にいないわけです。
今後eペナントレースが進んで行くと、監督の存在が勝敗により大きく関わってくるのではないでしょうか。そういった面では、これまで選手だけで戦っていたeBASEBALLとは違い、精神的支柱ができたのは本当に大きいと感じました。
また、eBASEBALLが『プロ野球スピリッツA』に替わって、予選参加者が29万人となり、開幕戦の配信の最大同時接続者数も3万人を超えるなど、より多くの人が興味を持ったのは喜ばしいことです。
ただ、惜しむらくは、eBASEBALLは3年間『パワフルプロ野球』で実施していただけに、少しずつ選手が定着し、ファンも増えはじめてきた最中、タイトルが『プロ野球スピリッツA』に変更になったことは、ちょっともったいない気がします。折角スター選手候補が出つつある状況だったので、eペナントレースのような形ができなくとも、『パワフルプロ野球』のプロ選手たちがもう一度脚光を浴びる大会を開いてほしいものです。
著者 : 岡安学
おかやすまなぶ
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