歴史的に高い水準のインフレが続いていることについて、イエレン米財務長官は、「インフレ進行の道筋について私は間違っていた」と話した。イエレン氏はFRB(米連邦準備理事会)の元議長だ。中央銀行が金融政策で重大な間違いを犯すことがあると示された。

かつて金本位制(ゴールドスタンダード)は、世界で隆盛を誇った。貨幣を金に紐づけるこの金融システムは、1971年にニクソン元大統領の決定により終わりを迎えた。それ以降、中央銀行は気が狂ったかのように貨幣を刷りまくり、価値ある何かの裏付けをせずにインフレのサイクルを加速させた。

ビットコインは、救世主になれるだろうか?

壊れた法定通貨のシステム

1952年、経済学におけるオーストリア学派のミーゼスは、富を生むためには貨幣の価値を下げても構わないという政府の姿勢に疑問を投げかけた。「ビットコイン・スタンダード」の著者として知られるアモウズ・サイファディーンは、同じ見方を持っており、例え貨幣がデジタル版になっても状況は変わらず、「マネーの価値を下げて価格を捻じ曲げる」政府の姿勢を批判した。

インフレに関する話題は最近になって増えたように感じるかもしれないが、実は20世紀全体を通して見れば、インフレは常に議論されてきた問題だった。 アメリカの経済学者スティーブン・ハンケの著作によると、前の世紀でハイパーインフレーションが起きた回数は50を超えている。

現在の法定通貨のシステムは修正が必要なのではないだろうか?

ビットコイン 2つの課題

こうした状況の中で注目なのがビットコインだろう。世界中に分散されたノードがシステムを支え、 誤った政策判断をしてしまう政治家に頼る必要がない。供給量が限定されており、インフレ耐性がある。ビットコインはサトシという単位まで分割可能であり、かなり小さな単位で取引をすることが可能だ(金とはこの点が異なる)。ルールはコードで決められており、現代の中央銀行がやるような仕事を自動化している。上記のような特徴を持っているビットコインは、次世代の金融のスタンダードの最有力候補だろう。

しかし、その前に二つの課題をクリアしなければならない。

まず、ビットコインは価値保存手段として投資家の支持を得ないといけない。多くの個人投資家と機関投資家がビットコインの希少性に気付き、価値保存手段としての役割を期待している。短期的なボラティリティには寛大な姿勢を見せて、長期的なパフォーマンスに注目してもらう必要があるだろう。金と同じように、インフレに耐性のある資産への需要が高まる時、ビットコインの価値は上がるはずだ。

次に、ビットコインは世界で通用する価値の尺度になる必要がある。この道のりは簡単ではない。高いボラティリティによって、ビットコインは価値の尺度として安定性を欠いてしまっている。現時点での話ではあるが・・・。利用者が増えて流動性が高まるにつれて、ビットコインのボラティリティが段階的に小さくなる可能性はある。その時、日々の支払いとして使われることも増えるだろう。

ビットコインとは、お金を再発明したソフトウェアだ。金融システムを再発明するためには、いくつかの課題をクリアする必要があるだろう。

著者 Ledger

プロフィール:2014年に誕生した仮想通貨のハードウェアウォレットの会社。拠点はフランスにあり、現在はLedger Nano XとLedger Nano S+、Ledger Nano Sという3種類のハードウェアウォレットを製造・販売している。Ledger Nano S +は2022年4月4日発売の最新作。Ledger Nanoシリーズに接続して使うソフトウェアであるLedger Liveを、全ての仮想通貨サービスが1箇所に集まるプラットフォーム、いわば「Web3.0のハブ」にすることを目指している。公式サイト:https://www.ledger.com/ja