ハイエンドモデルから始まった新グラフィックスカードの登場もやっと一段落してきたという印象で、ついにAMDのミドルレンジクラスGPUの販売が始まりました。「強烈で圧倒的な高パフォーマンスは必要ないけど、新世代のミドルレンジGPUでしっかり性能を高めたい!」と目論むゲーマーは、いよいよ出揃ってきたなと感じているのでは。そこで今回は、そんなゲーマーにぴったりなASUS ROG STRIXシリーズのデュアルファンモデル「ROG-STRIX-RX6600XT-O8G-GAMING」を見ていきます。

  • ASUS「ROG Radeon RX 6600 XT」

梱包はASUS DUALシリーズと同じものを採用している

早速パッケージから取り出そうとしたところ、梱包の仕様がこれまでレビューしてきたTUF GamingシリーズのNVIDIA GeForce RTX 3080 Tiや、GeForce RTX 3070 Tiとは異なっていることに気づきました。衝撃を吸収できるよう折りたたまれたダンボールにビニールで固定されているというもので、スポンジが使われていません。

  • 化粧箱から中箱を引き抜き、製品と対面

  • 静電防止袋に収められたグラフィックスカードがスポンジに埋まっているいつものスタイルではなく、ビニールによる簡易包装になっています

  • 開梱方法がやや見にくい場所に書いてあり、少し難儀しました

  • ビニールは裏側で接着剤によって固定されています。一度剥がすと再利用は難しそう

  • グラフィックスカードがむき出しになっている点が少し残念。静電防止袋には入れてほしいです

梱包材を減らして環境に配慮するための施策なのかと思い、ASUSに問い合わせてみたところ、「本製品はデュアルファンを採用しているため、当社で展開しているDUALシリーズのグラフィックスカードと同様の梱包を採用しています」とのこと。トリプルファンとデュアルファンで梱包の仕様が違うようです。

いつもと勝手が違う梱包に少し往生しつつ、製品本体をチェックしていきましょう。外周部が合体しているASUS独自の「Axial-techファン」を2つ搭載するデュアルファン仕様で、カード長は243mmとコンパクト。本体背面には金属製バックプレートを備え、サポートステイなどを使わなくても十分自重を支えられそうです。映像出力端子はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1で、4画面の同時出力を行えます。

  • デュアルファンを採用してコンパクト。個人的にはクーラーのデザインがかなりスタイリッシュで気に入りました

  • ファンはASUS独自のAxial-techファン。静音で大風量を実現しているとのこと

  • 補助電源は8pin×1。ROG STRIXエンブレムは光ります

  • ライティング点灯例。側面の要所に絞った最小限のライティングで、PCに彩りを添えてくれそうです

  • しっかりした金属製バックプレートを採用。大きくROGの意匠が施されています

  • 性能と静音性のどちらを重視するか切り替えられるデュアルBIOS仕様。今回はすべてP MODEで試用しています

  • GPU裏面。バックプレート裏面がVRAMにサーマルパッドを介して接触し、冷却を補助しています

  • GPUやVRAMの他、発熱がとても大きくなる電源部にはヒートシンクがしっかり接触している点がとても好印象

  • 映像出力端子はDisplayPort 1.4a×3、HDMI 2.1×1。ブラケットはよく見るとうっすらヘアライン仕上げになっています

トリプルファンを採用するハイエンドモデルの市場投入が相次いでいただけに、久々に見るデュアルファンのグラフィックスカードがとてもコンパクトに感じられます。あとは2スロット厚に収まっていれば小型PCにも向きそうでしたが、本製品では一般的なサイズのデスクトップPCでの使用を想定しているということでしょうか。

余談ですが、付属品にはいつもの謎カードが同梱されていました。星3だったTUF Gamingシリーズのレビューで「ROGモデルは星4だったりするんでしょうか」と述べましたが、なんと付属していたカードのレアリティは星5。星4にはASUSのなんのブランドが割り当てられているかが気になります。

  • 付属品には取説とThank Youカード、ケーブルタイ、いつもの謎のカードが同封されていました。ドライバが入った光学メディアは付属しないので、インターネット経由で最新版を導入しましょう

ミドルレンジとしてはかなり強力なグラフィックス性能をチェック

すでに主な仕様や詳細な性能はベンチマーク記事「Radeon RX 6600 XTを試す – 性能評価編、競合GeForceを揃えて徹底ベンチマーク」で紹介されていますが、せっかくなのでかんたんに性能をチェックしてみました。ベンチマーク環境はAMD Ryzen 7 3700X、16GBメモリ、256GB SATA SSDで、OSはWindows 10 Proです。使用したドライバーのバージョンは「Radeon Software Adrenalin 21.8.1」と、WHQLに準拠していない最新版ですが、特にテスト中動作が不安定になることはありませんでした。

  • AMD Radeon用の余計なユーティリティをインストールしなくて済む”Driver Only”を使用

  • GPU-Zの画面をよく見ると、バスインタフェースがPCI Express 4.0 x8になっています

上述したベンチマーク記事でも触れられていますが、AMD Radeon RX 6600 XTのバスインタフェースはPCIe 4.0 x8(スロット形状はx16)になっています。ざっくりいえばPCIe 4.0はPCIe 3.0の倍くらいの帯域幅を備えているので、ゲーム用途ならそこまで気になるシーンはなさそうです。カード本体をよく見ると、たしかにx16形状ながら半分くらいがGNDになっていることが確認できました。

  • カード裏面の配線を注意深く見ると、たしかに濃淡があることがわかります

前置きが長くなりましたが、かんたんに性能を確認してみましょう。ミドルレンジGPUということで、テストは3DMarkから比較的ベーシックなベンチマークを選択したほか、つい最近新バージョンとして公開された『ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ』を利用しました。

  • 3DMark「NightRaid」

  • 3DMark「FireStrike」

  • 3DMark「TimeSpy」

  • 「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」フルHD、デスクトップPC(高品質)

ミドルクラスのGPUではなかなか高スコアで乗り切りにくい、「Fire Strike」や「Time Spy」もサクサクとクリア。最新のゲーム環境を反映し、これまでより大規模な戦闘を描画するという「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ」ベンチマークでもカクつくシーンは全くありません。その他の軽量なベンチマークは完全にパワーを持て余しており、描画フレームが300fpsを超えるシーンも見受けられました。

なお、気になるPCIeの帯域を3DMarkで計測してみたところ、14.14GB/sという結果に。おおよそPCIe 4.0 x8とPCIe 3.0 x16の帯域がほぼ同程度なので、ゲームプレイでそこまで気になることはなさそうです。

  • 3DMark「PCI Express feature test」

最後にOCCTでGPUに強烈な負荷をかけた際の挙動を確認。室温26度の環境で、GPU Temperatureは54度前後、GPU Hot Spot Temperatureも72度前後と冷却には余裕がありそう。ただ、性能を重視するP-MODEでも高温時はクロックアップ状態があまり長く続かないようで、クロックを落としつつファンの回転数を徐々に落としていく制御になっているようです。温度的な安全マージンは、やや余裕をとっているようです。

ファン音は低めのあまり目立たないタイプで、全開時はそれなりに風切り音がするもののケースに入れれば問題なさそう。一方で少し気になったのは、軽量なベンチマークを超高fpsで描画している際、グラフィックスカード本体からコイル鳴きのようなものがやや派手に聞こえる点。テストはケースに入れずに行いましたが、コイル鳴きはケースに入れても気になる場合がありそうです。

旧ミドルレンジから着実にステップアップできる新GPU

ミドルレンジクラスののGPUながら、重めのベンチマークテストもしっかりしたテストでクリア。3DMarkのテストは軒並み好成績で、Apex Legendsの1080p Ultra設定換算スコアでも140+ FPSを余裕でクリアしています。Radeon RX 6600 XT登場時にキャッチコピーとして謳われた「究極の1080p/高フレームレートゲーミング」という看板に偽りなし、という印象です。

高価で高スペックすぎるなグラフィックスカード製品が相次いでいましたが、ついに手の届く価格で登場したミドルレンジGPU「Radeon RX 6700 XT」。デュアルファン採用でコンパクトなASUSの「ROG-STRIX-RX6600XT-O8G-GAMING」なら、きっと旧ミドルレンジGPUからのリプレースにぴったり。なお、価格は68,200円前後で好評販売中です。