Appleは2018年第3四半期決算において、Macの販売は372万台で、売上高は53億3,000万ドルであったと報告した。販売台数は前年同期比13%減、売上高も5%減と振るわない結果となっている。決算発表の電話会議でも、購入者の6割が新規のMacユーザーであるとコメントした程度で、多くを語らなかった。
キーボードの不具合の問題などから、昨年は6月に発売していたMacBook Proの新モデル投入が7月にずれ込み、第3四半期決算に間に合わなかったことが、販売台数減少の大きな原因になったと分析できる。そのため、2018年第4四半期決算におけるMacの販売台数の回復も期待できるが、製品投入のタイミング以前に別な問題を抱えたままになっているのが現状だ。
2016年に「Mac軽視」の姿勢を株主やユーザーから指摘されたのを受けて、MacBook Proの刷新、iMacのパフォーマンス向上、iMac Proのリリースと、決して軽んじているのではないとアピールしてきた。
しかしながら、Mac ProやMac miniは刷新されておらず、ユーザーには未だ、不信感が募る状況が続いている。
ここで、最近のPC市場について俯瞰しておこう。
IDCが発表した2018年第1四半期の世界のPC(Traditional PC)市場での出荷台数は前年同期比と同じ6,040万台だった 。元々の予測は1.5%の減少であったことから、予想外に良い結果だった。HP、Dellはそれぞれ5%前後の成長を記録したが、Appleは3.9%減と振るわなかった。
2018年第2四半期になると、PC市場は2012年第1四半期以来のプラス成長に回復し、出荷台数6,230万台で2.7%増となった 。Appleはメーカー別では4位もしくは5位のポジションを維持しているが、他のメーカーの成長のペースと比較すると、緩やかに推移していることが分かった。
PC市場は、ビジネス市場や教育市場での機材更新と、ゲーミングPCなどの新規開拓の2つの方向で進んでいる。別な見方をすると、それら以外の領域におけるPC市場の成長は見込みにくくなっているとも言えるのだ。
Appleがいくら新たな価値を提供するのが得意だとしても、PC市場にそれがあり得るのか、そしてMacにそれが可能なのかという点には疑問がある。Macとて、前述の販売が見込める市場への対応を求められることになるが、果たしてそういう戦略を採るだろうか。
ゲーミングPCについては、圧倒的なシェアを誇るWindows向けのゲームに注力したいゲーム業界の事情を考えれば、たとえiPadアプリの開発者がMac用にアプリを移植しやすくなる2019年以降であっても、Macが狙える市場だとは考えにくい。
一方、iPhoneアプリ開発においては、Macでのみ動作するXcodeが必要であることから、開発者向けの市場は、iPhoneとサービス部門の成長とともに、今後とも堅調なシェアを維持していけるだろう。PC市場の動向と照らし合わせると、Appleはビジネス市場や教育市場での拡大にフォーカスするのが正解ということになる。