2025年3月5日より発売が開始されるNVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 5070」。今回は「GeForce RTX 5070 Founders Edition」を試用する機会を得た。CESで発表されたRTX 5070はRTX 4090と同等性能ということで大きな話題となった。本当なのか!? 実際のゲームで検証していきたい。
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NVIDIAの「GeForce RTX 5070 Founders Edition」。日本での発売予定はない。3月5日の発売日にはPalit、MSI、Zotacから価格の目安である108,800円のカードが発売予定となっている
GeForce RTX 5070は、現在発表されているRTX 50シリーズの最下位モデルだ。1つ上のRTX 5070 Tiに対してCUDAコアは2,816基も減り、メモリバス幅も256bitから192bitへ、ビデオメモリも高速なGDDR7ではあるものの12GBだ。その代わり、カード電力は250W、システム電力要件は650Wとミドルレンジらしい扱いやすさになっている。
価格の目安も108,800円とRTX 5070 Tiの148,800円から大きく下がった。なお、発売日にはPalit、MSI、Zotacから108,800円(MSRP仕様)のカードが登場予定だ。それなりの流通量を期待したいところだが……。
GPU名 | RTX 5070 Ti | RTX 5070 | RTX 4090 | RTX 4070 |
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CUDAコア数 | 8,960 | 6,144 | 16,384 | 5,888 |
AI TOPS | 1,406 | 988 | 1,321 | 466 |
ベースクロック | 2.3GHz | 2.16GHz | 2.23GHz | 1.19GHz |
ブーストクロック | 2.45GHz | 2.51GHz | 2.52GHz | 2.48GHz |
メモリサイズ | GDDR7 16GB | GDDR7 12GB | GDDR6X 24GB | GDDR6X 12GB |
メモリバス幅 | 256bit | 192bit | 384bit | 192bit |
RTコア | 第4世代 | 第4世代 | 第3世代 | 第3世代 |
Tensorコア | 第5世代 | 第5世代 | 第4世代 | 第4世代 |
アーキテクチャ | Blackwell | Blackwell | Ada Lovelace | Ada Lovelace |
DLSS | DLSS 4 | DLSS 4 | DLSS 3 | DLSS 3 |
NVENC | 第9世代×2 | 第9世代×1 | 第8世代×2 | 第8世代×1 |
NVDEC | 第6世代×1 | 第6世代×1 | 第5世代×1 | 第5世代×1 |
カード電力 (W) | 300 | 250 | 450 | 200 |
システム電力要件 (W) | 750 | 650 | 850 | 650 |
価格目安(発表時) | 148,800円 | 108,800円 | 298,000円 | 99,800円 |
Blackwellアーキテクチャについて、詳しくは『DLSS 4のマルチフレーム生成の威力を見よ! ゲームとAIが融合する「NVIDIA GeForce RTX 5090」レビュー』を確認してほしい。毎回の解説となるが、注目はマルチフレーム生成に対応した「DLSS 4」だ。RTX 50シリーズが発表されたCESでは、RTX 5070が前世代の最上位モデルであるRTX 4090と同等と解説され、多くの人を驚かせたが、これは“マルチフレーム生成”があってのことだ。
RTX 40シリーズが対応するDLSS 3のフレーム生成はフレームとフレームの間に1フレームだけAIによって生成されるが、RTX 50シリーズが対応するDLSS 4のマルチフレーム生成は最大3フレームまで生成が可能になっている。これによってフレームレートを大幅に向上させているわけだ。また、NVIDIAでは、前世代の同クラスにあたるRTX 4070に対して、マルチフレーム生成に対応したタイトルなら2倍ほどの性能が出るとしている。
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DLSS 4では1フレームに対して最大3フレームの生成を可能にするマルチフレーム生成が加わった。現在対応しているのはRTX 50シリーズだけだ
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DLSS 4の恩恵はRTX 40/30/20シリーズでも受けられるが、利用できる機能はシリーズによって異なる
このほか、マウスやキーボードの入力から画面への反映ラグを従来よりも75%短縮する「NVIDIA Reflex 2」、RTX 50シリーズの第9世代NVENC/第6世代NVDECがH.264/H.265コーデックの4:2:2フォーマットに対応しているのも注目点となっている。ちなみに、RTX 5070 Ti以上はNVENCを複数搭載してエンコード速度を高めているが、RTX 5070は1基だけになっている点も覚えておきたい。
性能テスト前に「GeForce RTX 5070 Founders Edition」を紹介しておこう。デザインはRTX 5090/5080のFounders Editionに似ているが、カードのサイズはかなり小さくなった。2スロット厚は同じだが、カード長は約6.3cm短くなっている。
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GeForce RTX 5070 Founders Editionのブーストクロックは2512MHzと定格仕様だ
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補助電源は16ピン
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ツインファン仕様だ。片方はファンの空気が背面に抜けるようになっている
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RTX 5090(左)との比較。厚みは同じ2スロット厚だが、カードの長さはRTX 5070のほうが6.3cmほど短い
マルチフレーム生成でRTX 4090超えを観測! RTX 4070の2倍も達成
さっそく、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。比較対象としてGeForce RTX 5070 Ti/4090/4070/3070を用意した。ドライバに関しては、RTX 5070はレビュワー用に配布された「Game Ready 572.50」、それ以外は「Game Ready 572.60」を使用している。
- CPU:AMD Ryzen 7 9800X3D(8コア16スレッド)
- マザーボード:ASUS ROG CROSSHAIR X670E HERO(AMD X670E)
- メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G60C36U5B(PC5-48000 DDR5 SDRAM 16GB×2)
- システムSSD:Micon Crucial T700 CT2000T700SSD3JP(PCI Express 5.0 x4、2TB)
- CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、32cmクラス)
- 電源:Super Flower LEADEX III GOLD 1000W ATX 3.1(1,000W、80PLUS Gold)
- OS:Windows 11 Pro(24H2)
まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。
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Excelの3DMark参照
RTX 5070 TiからCUDAコア数が大きく減って、メモリバス幅も狭くなっていることもあり、11~33%のスコアダウンだ。前世代のRTX 4070に対しては、17~40%スコアが向上しており、確かな進化は感じさせる。また、Steal NomadではRTX 4090のほうが約1.9倍もスコアが高く、前世代とは言え3DMarkでは最上位モデルとの差が大きい。マルチフレーム生成でどこまで変わるのか。
続いて、実際のゲームに移ろう。まずは、DLSS 4のマルチフレーム生成に対応しないタイトルから定番FPSの「オーバーウォッチ2」、注目のハンティングアクション「モンスターハンターワイルズ」の公式ベンチマークを試そう。オーバーウォッチ2はbotマッチを実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。
なお、今回DLSS SR/FSR SRという表記はSuper Resolutionの略で、モンスターハンターワイルズだけは画質ウルトラのプリセットに従って「クオリティ」設定を採用しているが、それ以外のゲームではすべて「パフォーマンス」設定だ。FGはFrame Generationの略でフレーム生成を指す。MFGはMulti Frame Generationの略でDLSS 4のマルチフレーム生成を指し、1フレームに対して3枚の生成をMFG x4と表記している。
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『オーバーウォッチ2』実行時の性能
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『モンスターハンターワイルズ』実行時の性能
オーバーウォッチ2は、アップスケーラーやフレーム生成を使っていないので、従来からのラスタライズ性能比較になる。基本的には3DMarkと同じ傾向だ。これを見るとRTX 4090との差は大きい。とは言え、RTX 5070は4Kの最高画質でも平均115.3fps出ており、快適なプレイが可能だ。モンスターハンターワイルズでは、4Kだと平均56.4fpsと何とかプレイできるというフレームレートだ。4Kなど高負荷な状況では、RTX 5070 TiやRTX 4090との差は大きくなる。
ちなみに、RTX 3070はDLSSのフレーム生成に非対応なので、FSRのアップスケーラーとフレーム生成を利用した。フルHDで平均47.8fpsと快適なプレイは厳しい。画質設定をもっと下げる必要がある。世代差を感じる部分だ。
では、今回もっとも注目と言えるDLSS 4のマルチフレーム生成に対応したゲームを実行していこう。「マーベル・ライバルズ」、「ホグワーツ・レガシー」、「サイバーパンク2077」、「インディ・ジョーンズ/大いなる円環」を用意した。
マーベル・ライバルズは訓練場の一定コースを移動した際のフレームレート、ホグワーツ・レガシーは寮内の一定コースを移動した際のフレームレート、サイバーパンク2077はゲーム内のベンチマーク機能を実行した際のフレームレート、インディ・ジョーンズ/大いなる円環はバチカンの一定コースを移動した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
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『マーベル・ライバルズ』実行時の性能
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『ホグワーツ・レガシー』実行時の性能
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『サイバーパンク2077』実行時の性能
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『インディ・ジョーンズ/大いなる円環』実行時の性能
マーベル・ライバルズ、ホグワーツ・レガシー、サイバーパンク2077では、見事にマルチフレーム生成でRTX 4090超えを達成した。ただし、WQHDまでという条件は付くが。高負荷な4K解像度では、マルチフレーム生成を持ってしてもRTX 4090が上回る。それでも、マルチフレーム生成に対応してれば、RTX 5070でも4K高画質でヌルヌルとした動きを体験できるのは素晴らしいことだ。
その一方で、インディ・ジョーンズ/大いなる円環は画質のプリセットを最上位から2段階下のウルトラ設定にして、パストレーシングをオフにしても描画負荷は強烈だ。フルHDではRTX 4090をかろうじて上回るが、WQHD以上では大きな差を付けられた。4Kでは平均21.9fpsとまとにもプレイできないほどガクガクに。RTX 3070にいたってはビデオメモリ不足で起動すらできなかった。起動するだけでも画質設定を落とす必要がある。
CGレンダリングや画像生成も試す
続いて、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。
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『Blender Open Data Benchmark』実行時の性能
一定時間内にどれほどレンダリングできるかとスコア化するテストだ。ここではCUDAコア数の多さが効き、RTX 4090の圧勝だ。
RTX 50シリーズはAIモデルの演算精度としてFP4(4ビット浮動小数点演算)が新たに加わった。ここでは、高品質な画像生成AIのFLUX.1を使って、1,024×1,024ドットの画像を4枚生成するのにかかる時間を「Procyon FLUX.1 AI Image Generation Demo for NVIDIA」を使って測定した。
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『Procyon FLUX.1 AI Image Generation Demo for NVIDIA』実行時の性能
RTX 5070でRTX 4090よりも高速に画像生成が可能と、FP4に正式対応するRTX 50シリーズの強さが見えるテストだ。今後FP4を活用するAIアプリが増えることを願わずにはいられない。
消費電力はRTX 4070とあまり変わらず
ここからはRTX 5070カード単体とシステム全体の消費電力をチェックしよう。カード単体はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を使用した。サイバーパンク2077の各解像度での消費電力を測定している。システム全体は、OS起動10分後のアイドル時とサイバーパンク2077実行時の最大値を計測している。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。
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『サイバーパンク2077』実行時の電力消費
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システム全体の電力消費
カード単体の消費電力では、RTX 5070とRTX 4090のフルHDに注目したい。フレームレートでは上回るRTX 5070のほうが100W以上も消費電力が少ない。マルチフレーム生成は電力効率のよい技術と言えるだろう。基本性能においてもRTX 4070を上回りながら、消費電力はほとんど変わらないという点もポイントだ。RTX 50シリーズは消費電力が大きいイメージもあるが、RTX 5070はかなり大人しい。
と、ここまでがGeForce RTX 5070のテスト結果だ。RTX 5070 Tiよりもスペックは大きくダウンしているが、前世代のRTX 4070をしっかりと上回り、マルチフレーム生成を使えばWQHD解像度まではRTX 4090を上回れることを証明した。マルチフレーム生成は下位モデルほどフレームレートを底上げできる切り札と言えそうだ。それだけにDLSS 4に対応するタイトルが今後どれだけ増えるかが、普及のカギになるだろう。