ドイツ・ベルリンで開催したIFA 2024に出展したパナソニックは、現地時間の2024年9月5日12時から、プレスカンファレンスを行い、欧州市場向けに展開するテレビやオーディオ、キッチン家電や理美容家電の新製品などを発表した。また、パナソニック マーケティング ヨーロッパの片山英樹社長は、同社の長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」への取り組みや、欧州で打ち出しているHolistic Wellbeing戦略をさらに進化させていることなどについても言及。「カーボンニュートラル」と「サーキュラーエコノミー」の2つの柱についても、取り組みを説明した。
冒頭のビデオでは、パリオリンピック/パラリンピックにおいて、パナソニックがワールドワイド公式パートナーとして大会をサポート。AV機器やサービスを提供し、とくに新種目となったブレイキン(ブレイクダンス)種目では、公式DJターンテーブルに採用されたことなどを紹介。パナソニック マーケティング ヨーロッパの片山社長は、「オリンピックは、パナソニックが応援するアスリートたちの素晴らしい活躍で幕を閉じた。そして、IFAが100周年を迎えている」と、今年が節目の年であることを示してみせた。
100周年のIFA、2年ぶりの一般ブース、パナソニックの積極姿勢
パナソニックにとっても、2年ぶりに一般来場者向けブースを出展。IFAでの日本企業の存在感が薄れつつあるなかで、同社の積極ぶりが目立った。
パナソニック マーケティング ヨーロッパでは、Holistic Wellbeing戦略を打ち出している。革新的なソリューションと商品を通じて、人や社会、地球のバランスをもたらし、より健康的で、シンプルで、バランスのとれた生活を創造することで、すべての人の総合的なウェルビーイングを促進することを目指しているという。ここでは、「Environmental Wellbeing」、「Nutritional Wellbeing」、「Outer Wellbeing」、「Social Wellbeing」、「Spatial Wellbeing」の5つに取り組んでおり、今回のIFAでは、環境への取り組みを強調して説明。「Environmental Wellbeing」に焦点をあてたほか、長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」において2つの柱となっている「カーボンニュートラル」と「サーキュラーエコノミー」についても時間を割いて説明した。
片山社長は、「カーボンニュートラル」への取り組みとして、パナソニックが全世界に持つ約250工場のうち、2025年3月末までに、CO2排出ゼロ工場を37カ所にする目標を打ち出してきたのに対して、2024年夏までに、すでにこれが44カ所に達したことを報告。さらに、「Panasonic GREEN IMPACT」を実現するためのキーテクロジーと位置づけるRE100ソリューションを、今年50周年を迎えるウェールズ・カーディフ工場に導入し、電子レンジの組立ラインに電力を供給することも発表した。RE100ソリューションは、滋賀県草津の燃料電池工場で実用化しており、工場の屋根に設置した太陽光パネルとリチウムイオン蓄電池、純水素型燃料電池で構成し、AIを活用したエネルギー管理システムによって制御。事業活動で消費するエネルギーを、100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す。年内にはオープニングセレモニーを行う予定だという。
もうひとつの柱である「サーキュラーエコノミー」については、パナソニック ヨーロッパ グリーントランスフォーメーション(GX)オフィス ゼネラルマネージャーのMarkus Reichling氏が説明した。
同氏は、「商品が高品質で、長く愛用できることは、創業以来のパナソニックの信条のひとつである」とし、製品の耐久性と長寿命化、修理可能性の拡大、ハードウェアやソフトウェアによるアップグレード、共同利用や再利用、再生および再製造、マテリアルリサイクルに重点を置いて取り組んでいることを紹介。「サーキュラーエコノミーのいくつかの取り組みは、パナソニックにとっては目新しいものではない」とし、この領域において、長年に渡る経験があることを強調した。
その一方で、「サーキュラーエコノミーは、より持続可能なビジネスのための包括的なアプローチとして理解されるべきである。そのためには、メーカーとそのパートナーがビジネスのやり方を根本的に変える必要がある」と提言。「今後5年から10年の間に、多くのステップを踏む必要があるが、パナソニックは、事業運営を循環型へと移行することに全力を尽くす」と宣言した。
2023年11月に策定した「Panasonic GREEN IMPACT」では、グループサーキュラーエコノミーポリシーのなかで、「素材使用を最小限に抑え、リサイクル素材や再生可能素材の使用を拡大」、「製品寿命の最大化」、「顧客やパートナーとの共同アプローチ」の3点を掲げている。この3点について説明した。
ひとつめの「素材使用を最小限に抑え、リサイクル素材や再生可能素材の使用を拡大」する取り組みでは、循環型製品の開発に着手していることをあげた。その代表例のひとつが2年前に欧州市場において発表したモジュール式パーソナルケアシステム「マルチシェイプ」である。ひとつのボディに複数のアタッチメントを取り付けて利用することが可能で、髭や髪、体毛、鼻毛のトリミング、髭剃りや歯磨きなどに使える。1つの機器だけで様々なの製品の機能を利用でき、資源効率を高めているという。
もうひとつの事例が、新製品に使用する材料を減らすことだ。シェーバーの900sシリーズ(パームインシェーバー)では、コンパクトなデザインを採用し、従来のハンドル付きモデルと比べて、プラスチックの使用量を約40%削減しているという。
2つめの、「製品寿命の最大化」では、従来の販売方法と並行する形で、Product as a Service(PaaS)と呼ぶ手法を、今後1年以内に欧州市場において開始。製品リースの手法を用いて、B2BやB2Cにおける製品利用率を高める提案を行うという。また、日本において「Panasonic Factory Refresh」を開始したことも紹介。使用済み機器をパナソニックの専用工場でメンテナンスや修理を行って再生。パナソニックのオンライン販売チャネルを通じて、メーカー保証がついた中古品として再販売する。
3つめの「顧客やパートナーとの共同アプローチ」では、サーキュラーエミノミーは、生産者だけの課題ではなく、顧客やビジネスパートナーとの連携が必要であり、販売店とともに、シンプルで便利、かつコスト面でも魅力的なソリューションを提供する必要があることを訴えた。
欧州攻略の戦略商品など、パナソニックブースの出展内容
最後に登壇したのが、パナソニック マーケティング ヨーロッパ Marketing Comms & eCommerce, European DirectorのDavid Preece氏だ。
同氏は、IFA 2024のパナソニックブースで展示した新製品や欧州市場向け戦略製品などについて説明した。ここでは、パナソニックブースの展示の様子を交えて紹介する。