2024年3月24日、東京都にあるEBiS303にて、マイナビが主催する大学生eスポーツ大会「マイナビeカレ 〜esports全国大学選手権 2024〜」(以下、マイナビeカレ)のオフライン決勝が開催されました。
今年の競技タイトルは、バトルロイヤルシューティングゲーム『Apex Legends』(以下、Apex)。予選大会を勝ち抜いた20チーム60名のプレイヤーがオフライン会場で戦った、大学対抗部門の決勝大会の模様をお届けします。
98校133チームがエントリー、豪華アンバサダーの参加も
今年の「マイナビeカレ」では、同じ大学の仲間と3人1組のチームを組んで出場する大学対抗部門と、大学生同士なら誰とでも2人1組で出場できるフレンドデュオ部門を開催。予選大会はどちらもオンラインにて実施され、決勝大会は大学対抗部門のみオフライン、フレンドデュオ部門はオンラインにて行われました。
大学対抗部門には、全国から98校133チームがエントリー。予選大会ではA~Gブロックに分かれて戦い、各ブロック上位2チームと総合ランキング上位6チームが決勝大会に進出しました。決勝出場チームはオフライン会場にて戦うだけでなく、1チームに1人ずつ、『Apex』の著名なプロやストリーマーがアンバサダーとして就任します。
なお、直近『Apex』は公式大会でプレイヤーがハッキングを受ける事象が発生し、安全性に関する問題が浮上しています。これに関して「マイナビeカレ」大学対抗部門は、オフライン会場にて事務局が用意したPCで実施することに加え、エレクトロニック・アーツ社の許諾のもとアカウントの貸し出しを行うことで予定通り実施されました。
ただし、決勝大会の直前に行われるエキシビションマッチは、アンバサダーがオンラインで選手たちと一緒にプレイする予定でしたが、内容を変更。アンバサダーはプレイに参加せず、各チームのボイスチャットに入ってアドバイスなどを行いました。決勝大会においては予定通り、アンバサダーによる各チームの応援配信が実施されています。
60名の選手が集結、『Apex』オフラインならではの醍醐味
オフライン会場には、20チーム60名の選手たちが集結。ステージの両サイドに、大学名とチーム名が掲げられたブースがずらりと並びました。
eスポーツサークルはオンラインで活動していることが多く、この日初めて直接顔を合わせたチームもいくつかあったようです。観客席は200席ほど設けられ、出場選手たちの友人や家族が応援に駆けつけていました。
多くの選手が一堂に会し、あちこちのブースから緊迫した声が飛び交う迫力の空間は、バトルロイヤルシューティングゲームのオフライン大会ならではの醍醐味です。コロナ禍以降、より小さな規模でも開催しやすい5vs5タイトルでのオフライン大会が増えていたため、なかなかこうした光景を見られる機会は減っていました。
「マイナビeカレ」も2023年の大会では、5vs5のタクティカルシューティングゲーム『VALORANT』を競技タイトルに採用していました。昨年の『VALORANT』でオフライン決勝に出場できたのは、4チーム20名。『Apex』が採用された今年は、その3倍にあたる60名がオフライン決勝を経験できたともいえます。
ただ、「マイナビeカレ」の競技タイトルが、『VALORANT』から『Apex』に変わったこと自体は、少し残念に感じていました。タイトルが変わると、昨年出場していたチームや選手が続けて出場することが難しく、「マイナビeカレ」を毎年の目標に掲げられなくなってしまうからです。
一方で、各大学のeスポーツサークルでは、たいていタイトルごとに部門を設けて活動しているため、さまざまな部門に大会出場のチャンスが巡ってくることにも意味があるでしょう。こうした点については、現状はまだ大規模な大学生eスポーツ大会が少なく、歴史も浅いため、試行錯誤の段階にあるといえるかもしれません。
これぞまさにバトロワゲーのオフライン🥺✨️#マイナビeカレ pic.twitter.com/sniioXfTV5
— 綾本ゆかり / Yukari Ayamoto (@ayayuka99) March 24, 2024
最後の最後までわからない、5マッチのハイレベルな激戦
決勝大会では5マッチを行い、順位ポイントとキルポイントを合わせた総合ポイントでランキングを決定します。使用マップは、ワールズエッジ。優勝チームには、優勝賞金100万と副賞のゲーミングノートPCなどが贈られます。
ちなみに、PC版の『Apex』はキーボード&マウスとゲームパッド、どちらでもプレイできることが特徴で、プロの競技シーンでも両方が使われています。今回出場している選手たちがどちらを使っているか気になったので、ブースを一通りまわりながら手元を確認してみたところ、ちょうど半々くらいの割合でした。
初戦のマッチ1は、各チーム慎重な戦いぶりからスタート。多くのチームが終盤に残るなか、混戦を切り抜けた明治大学「MeC」が11キルでのチャンピオンを獲得し、好調な滑り出しを見せます。マッチ2では、最後の3on3を制した北見工業大学「medKIT」がチャンピオンを獲得。このマッチでは、積極的な仕掛けで15キルを獲得した北海道大学「Time is Money」も、大きくポイントを稼ぎました。
マッチ3で大きな巻き返しを見せたのは、東京大学「U21」。マッチ2までの総合ランキングでは最下位に沈んでいた東京大学ですが、マッチ3でチャンピオンを獲得し、一気に総合ランキング5位まで浮上します。続くマッチ4では、戦況を的確につかんだ広島工業大学「トムとたぬきとkty」が、高所から制圧してチャンピオンを獲得しました。
マッチ4終了時点での総合ランキングは、北見工業大学が48ポイントでトップ。続いて、広島工業大学が46ポイント、明治大学と北海道大学が37ポイント、東京大学が31ポイントと続きます。ポイント差は小さく、最終マッチの結果次第で多くのチームに優勝のチャンスが残されていました。
そして、いよいよ最終マッチがスタート。激しい戦闘が続いたこのマッチでは、トップを走っていた北見工業大学が早々に脱落し、波乱の展開を迎えます。
終盤に残ったのは、いずれもランキング上位の広島工業大学、東京大学、明治大学の3チーム。ただ、東京大学と明治大学は人数が欠けており、厳しい戦いを強いられます。最後は人数有利を活かした広島工業大学が勝ち切り、見事2連続チャンピオンでの優勝を手にしました。
1マッチ目のチャンピオンは、
明治大学MeC @meijiesports !!勝利の瞬間🙌🔥#マイナビeカレ pic.twitter.com/ONcTGMe7UZ
— 綾本ゆかり / Yukari Ayamoto (@ayayuka99) March 24, 2024
今年の優勝に輝いた広島工業大学の3人にインタビュー
大会終了後、優勝した広島工業大学「トムとたぬきとkty」チームの3人にインタビューを行いました。メンバーは全員、広島工業大学のサークル「e-sports愛好会」に所属。サークル代表のktyfx選手、サークルのApex部門代表を務めるtanukiking8516選手、そして最高ランク「プレデター」到達者のmuneyuusann7262選手の3人です。
――最初に、皆さんの学年と『Apex』の最高ランクを教えてください。
ktyfx:学年は3年生で、最高ランクはマスターです。
tanukiking8516:2年生で、最高ランクはマスターです。
muneyuusann7262:1年生で、最高ランクはプレデターです。
――皆さんゲームパッドを使われていましたが、もともとコンシューマ版の『Apex』をプレイしていたのでしょうか?
ktyfx:そうです。全員もともとはPlayStationやXboxでプレイしていて、PCに移行してきました。
――この大会に向けて、チームでどれくらい練習をしてきましたか?
tanukiking8516:普段から一緒にランクをしたり、射撃訓練場で1vs1をしたりしていました。ただ、それぞれバイトや用事で予定が合わず、スクリム(練習試合)がなかなかできていなくて……。予選も決勝も、それに向けたスクリムが開催されたのですが、どちらも1回ずつしか参加できませんでした。
――それでも、かなり的確なチームの連携や判断を見せていましたね。
tanukiking8516:予定を合わせるのが難しいなかでも、週2回くらいは集まって練習していました。日々のランクでの経験も活きたのかなと思います。
――皆さんが所属している広島工業大学の「e-sports愛好会」について、簡単に紹介していただけますか?
ktyfx:部室はなくオンラインで活動しているサークルで、人数は50人以上います。活動タイトルとしては『Apex』のほかに、『VALORANT』、『League of Legend』、『PUBG MOBILE』、『大乱闘スマッシュブラザーズSP』、『ウイニングイレブン』などの部門があり、それぞれ週1~2回くらいで活動しています。
――今大会では2連続チャンピオンでの見事な優勝を果たしましたが、どんなところが勝因だったと思いますか?
tanukiking8516:声掛けだと思います。IGL(インゲームリーダー)に頼るだけでなく、IGLをカバーする声掛けを意識していました。
ktyfx:声掛け以外なら、普段の練習を真面目にやっていたことかなと。練習の成果が出せたと思います。
――IGLとしては、主にどんな戦略を意識していましたか?
muneyuusann7262:キルポイントの獲得上限がないので、キルを取りたいという焦りもあるのですが、やはり順位ポイントも重要です。私たちはスカイフックと試練を降下場所としていて、そこではなるべく敵に会わないように漁りながら、中盤や終盤でキルを取っていくことを考えていました。
――5マッチのなかで、他チームの動きを見て修正したポイントなどはありましたか?
muneyuusann7262:実はスカイフックにもう1パーティ降下していて、私たちが左側、敵チームが右側を漁っていました。私たちはスカイフックと試練に分かれて降りていたので、敵チームが初動ファイトを仕掛けてきた場合、どうしても不利な戦いになってしまいます。なので、スカイフックに降りている2人に、敵チームの動きを注視してもらい、危なくなったら試練に逃げようといった作戦を話し合っていました。
――今回オフライン大会に選手として出場して、初めて経験することがたくさんあったと思います。特にどんなことが印象的でしたか?
ktyfx:選手として出場するだけでなく、こうしたオフライン会場に来ること自体が初めてでした。そのなかでも、特に感じたのは選手をまとめる運営の方々の力です。スタッフの方がマッチごとに「準備できていますか?」と素早く声掛けをしてくださり、配信を含めてトラブルなくスムーズに進行されていて、本当にすごいなと思いました。
tanukiking8516:選手のイレギュラーな出来事にも、インカムを使ってスタッフの方々がすぐに対応してくださって、連携力がすごかったです。僕も最初ちょっとしたトラブルがあったのですが、それも瞬時に対応していただけて、とても尊敬できるなと思いました。
muneyuusann7262:私自身は、別のゲームタイトルでオンライン大会に出たことがあったのですが、オフライン大会には来るのも出るのも初めてでした。実際に会場でプレイして、「こんなに会場が広くて、こんなに歓声がすごいんだ!」と驚きました。
――また来年も「マイナビeカレ」があったら期待したいこと、もしくは自身の目標にしたいことがあれば教えてください。
ktyfx:今回の大会でも、チャンピオンを取った選手がカメラに映ったりして、選手にスポットが当たるところがすごくいいなと思いました。今後もそういった、選手の一人ひとりにスポットが当たる大会が開催されることを期待したいです。
tanukiking8516:この規模で開催される大学生eスポーツ大会はなかなかないので、「マイナビeカレ」も含めて、企業が主催する大規模な大会がたくさん開かれるようになってほしいです。そうしたら、僕たちのサークルも活動がより活性化するのではないかと感じます。
muneyuusann7262:私はサークルのApex部門で、次期代表をすることが決まっています。まだまだ成長できると思っているので、IGLとしてもっとプレイをレベルアップさせていきたいですね。もし来年もタイトルが『Apex』なら、一緒に出るメンバーがいれば連覇を目指したいです。そうでなかったとしても練習を続けて、大会などのチャンスがあれば挑戦したいです。
――広島工業大学の皆さん、ありがとうございました!