• Micron、「LPCAMM2」製品について紹介 - 省電力で小型、高速な新メモリモジュール

米Micronは米国時間の1月9日、容量16GB~64GBのLPCAMM2の出荷準備が整ったことを発表した。これに関するオンラインでの説明会が1月18日に開催されたので、その内容をご紹介したい。

LPCAMM2というかそもそもCAMM2(Compression-Attached Memory Modules 2)は昨年12月5日にJEDECで正式にJESD318として標準化が完了しており、そのSpecificationも入手可能(Photo01)であるが、CAMM2ということはCAMM1(というか、ただのCAMM)という規格が当然これに先んじて存在する。

  • Photo01: JESD318はJEDECのページより無償で入手可能(ただしJEDECへの登録が必要)。

もともとはSO-DIMMに代わる小型のメモリモジュールとしてIntelとDellが共同開発したものがCAMMであり、2022年にDellのPrecision 7000シリーズで採用されている。ただこの時点でのCAMMはあくまでも独自規格であり、Dell以外のノートでは全く採用されていなかった。ただSO-DIMMに比べて利点も多く、またIntel/Dellとしても独自規格のままだとモジュールメーカーが採用してくれないなどの問題があるため、水面下で広範な採用を目指してこのCAMMのJEDECにおける標準化活動をスタートしている。この結果として、例えば昨年6月のCOMPUTEXではADATAがこのCAMMの試作品を展示したりしていた訳だ。最終的にこれがCAMM2になったのは、「CAMMはあくまで独自規格であり、JEDEC標準になったのはCAMM2」という形で区別を行いたかったから、ということのようだ。

さてそのCAMM2であるが、SO-DIMMと比べると色々と違いがある。勿論基板形状も全然違うが、

  • コネクタは上から差し込む方式になり、高さを減じられる
  • モジュール上にPMICを搭載、信号電圧そのものは0.5V(LPDDR Data)/1.05V(LPDDR Clock/Address)/1.1V(DDR5)ながら、入力電圧は5V(VIN_Bulk)になり、電流量を抑えられる様になった。
  • DDR5とLPDDR5の両方に対応。これまでDDR5は兎も角LPDDR5は基板上にはんだ付け、ないしMCMモジュール上に実装、という形での提供のみであり、後から容量を変更したりすることが不可能だった。ところがCAMMを利用することで、LPDDR5であっても後から変更が可能になった(これはBTOにおける柔軟性の獲得につながる)。

といった違いがある。ちなみにDDR5とLPDDR5ではそもそも信号の電圧が全く違うため、区別のためもあってかモジュール形状も全く異なる(Photo02)。なお、JESD318内ではLPCAMM2という呼び方はしておらず、”CAMM2 with DDR5 DRAM”や”CAMM2 with LPDDR5 DRAM”という呼び名になっており、LPCAMM2というのはその意味ではMicronの独自用語ではあるのだが、業界一般に広まりそうな気がする。

  • Photo02: JESD318より。ちなみにDDR5とかLPDDR5と同じく、速度に関する規定はJESD318には含まれていない。

なおこのCAMM2は

  • DDR5 x64 = Single Channel CAMM2
  • DDR5 x72 ECC = Single Channel CAMM2
  • DDR5 x128 = Dual Channel CAMM2
  • DDR5 x144 ECC = Dual Channel CAMM2
  • LPDDR5 x128

の5種類が定義されている。DDR5では72bit(32bit Data+4bit ECC/channel)と80bit(32bit Data+8bit ECC/channel)の2種類のECC DRAMが存在したが、CAMM2は80bitの定義が無い。またLPCAMM2はDual Channelのみで、ECC付きも存在しない。これらの接続方法がこちら(Photo03)。Single Channel要らなくね? と思わなくも無いが、この辺はOEMメーカーからの要望とかを受けた格好かと思う。

  • Photo03: Stackingにすると折角の高さを減じたというメリットが消え失せてしまう気がしなくもないのだが。

さてMicronの発表に移るが、今回同社が発表したのはLPCAMM2、つまりLPDDR5ベースのCAMM2モジュールである(ちなみにJESD318ではLPDDR5とLPDDR5Xを区別していない)(Photo04)。現状でも最大9600Mbpsまでの転送をサポートしているので、DDR5-6400の2ch構成と比較しても50%高速(DDR5-6400×2chが合計102.4GB/sec、LPCAMM2-9600が153.6GB/sec)となることで性能は向上する一方、信号電圧が大幅に下がる事で消費電力は改善しているということで、良い事尽くめな訳だ(Photo05)。しかも容積が大幅に減るという事もあり、特に薄型ノートでも今後はLPCAMM2を使ってメモリ容量を後からユーザーが変更できるモデルが増えそうである。

  • Photo04: Power EfficiencyはDDR5 SO-DIMMとの比較。そりゃまぁLPDDR5Xの方が圧倒的に省電力だから間違いはない。

  • Photo05: ホストプラットフォームは不明。PCMark 10のEssentialsがやたら高速になるのは、App Startupあたりで性能向上が大きいためな気がする。あと消費電力はメモリサブシステムのみの比較で、システム全体では無い。

  • Photo06: 長さだけ僅か(3.1mm)に増えるが、あとは高さ、厚みともに大幅減である。

具体的な出荷時期であるが、Micronの発表に合わせて公開されたビデオではLenovoがLPCAMM2に対応した製品を出すとしているものの時期は不明である。説明会では「今年後半から2025年にかけて、急速にマーケットが立ち上がってゆく」という予想が語られており、実際の出荷開始まではもう少し時間が掛かりそうだ。

ちなみにまだ具体的なSKUは発表されていないが、最大64GBで9600Mbpsという数字は既に公開されている。もっとも今年いきなり9600Mbpsか? というのはちょっと怪しく、Micronの予測では9600Mbpsが主流になるのは2026年頃(直近は7500Mbps程度?)という事だそうだ(実際Product Briefでの表現も”Up to 9.6Gb/s”である)。先に書いたように今のところJESD318では最高速度に制限がないから、2027年以降により高速なLPCAMM2が出てくる可能性も0ではない。ただ業界的にはLPDDR5/5X世代は9600Mbpsまでで、その先は次のLPDDR6にシフトすると見られているので、これ以上高速なLPCAMM2は登場しないかもしれない。

  • Photo07: MicronのProduct Briefより。これはあくまでマーケットトレンドの話で、この数字に合わせてMicronがLPCAMM2なりCAMM2/DIMM/SO-DIMM製品を投入する、という訳ではない。

またJESD318によれば最大容量は128GBまで可能であるが、ただしメモリチップは4つまでになっている(Photo03を見ても、LPDDRの場合は表面のみの実装になっているのが判る:裏面はコネクタがかなりの面積を喰う(Photo08)ので、物理的に実装ができない)。Micronは1βnmプロセスのDRAMでこれを実装するとしているが、流石に1βnmプロセスで128GB(つまりチップあたり16GB)は厳しいのだろう。そんな訳でラインナップは16GB/32GB/64GBの3つのみである。

  • Photo08: 同じくProduct Briefより。裏面の大半がLPCAMM2 connectorで占められることになる。

そんな訳でとりあえずMicronが先鞭を切ったCAMM2であるが、当然これに追従するメーカーは多いだろう。今年のCOMPUTEXあたりでは山の様にCAMM2/LPCAMM2のサンプルが展示されることになるのかもしれない。