2023年11月8日から11月10日まで、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムでClaris主催のClaris Engage Japan 2023が開催され、ライブ配信も実施されている。これはFileMakerプラットフォーム、Clarisプラットフォームの開発者やユーザーが集うイベントで、多彩な講演セッションのほか、ワークショップ、Clarisのパートナー企業がブースを出展するショウケースなど、Claris製品を知り、情報を収集できる、日本最大の年次カンファレンスだ。過去3年間はCovid-19禍のためオンラインで開催され、今年は4年ぶりのリアル開催となった。

すでに会期は始まっているが、リアル参加、ライブ配信ともに無料の参加登録を受け付けている。興味のある方はClaris Engage Japan 2023のサイトから登録し、参加してみてはいかがだろうか。

会期初日である8日の午前中には、オープニングセッションが実施され、米国本社のブラッド・フライターグ氏とアンドリュー・ルケイツ氏、また日本のスタッフの講演があった。マイナビニュースではその内容を受け、同日午後にフライターグ氏とルケイツ氏、日比野暢氏に話を聞いた(各氏の肩書きは顔写真とともに記載。以下、記事中は敬称略)。

リアル開催のカンファレンスに手応え

— Claris Engage Japanは4年ぶりのリアル開催となりました。いかがですか?

フライターグ Wonderful! 対面でのイベントは特別なもので、エネルギーに満ちています。こうして対面での機会を得て、開発者やお客様とリアルにつながる機会がなくてさびしく思っていたことをあらためて実感しました。個人的なお祝いや記念日があるように、イベントは仕事での祝祭のようなものです。こうしたイベントを開催できることはコミュニティの強みであり、この先も続いていくでしょう。

  • Claris International Inc. CEO、ブラッド・フライターグ(Brad Freitag)氏

— 2024年2月には米国でClaris Engage 2024が開催されるそうですが、このようなカンファレンスがあるのは日本と米国だけですか?

フライターグ はい、Claris主催のカンファレンスは日米のみです。ヨーロッパではパートナー企業が主催し、Clarisがスポンサーになる形式のイベントがあります。ヨーロッパは言語の違いなどがあり、Claris主催の大型イベントは難しいですね。

ルケイツ 最近ではオーストラリアやベルギーでイベントがありました。やはり皆さんがリアルでのつながりに飢えていた様子がうかがえました。

  • Claris International Inc. Product Marketing & Evangelism Director、アンドリュー・ルケイツ(Andrew LeCates)氏

LLMはエンドユーザーにも開発者にもメリットがある

— オープニングセッションでは、Claris Connectで利用できる、日本の改正電子帳簿保存法に対応したタイムスタンプと署名のソリューションである「iTrustリモート署名サービス」のコネクタが紹介されました。Clarisはグローバル企業でありながら、このような日本独自の事情に対応した機能もリリースしています。開発の優先順位はどのように決めているのでしょうか?

ルケイツ 優先順位を決めるのは難しいことです。大量のバックログ(未解決の課題)がありますから。しかしバックログが多いのは、私たちのプラットフォームにできることがまだまだたくさんあるということです。テクノロジーが今後向かう先や現在のトレンドのバランスを考慮し、ポジティブな影響のあるものを優先しています。現在、私たちが注力しているポイントは3つあります。ほかの技術との強力な統合、パブリックな利用者を対象としたウェブのテクノロジー、AIやLLM(大規模言語モデル)です。Clarisにとって日本は米国に次ぐ世界第2位の市場であり、重要な市場です。日本の皆さんからのフィードバックに感謝し、できるだけ優先順位を上げるようにしています。

— 今、AIやLLMという言葉が出ましたし、オープニングセッションでもAI関連の話題が多く取り上げられていました。FileMakerにAIを取り入れることの利点をどう考えていますか?

フライターグ まずエンドユーザーにとっては、オープニングセッションでFileMakerのデータを自然言語で検索する例をお見せしたように、データ分析の専門家に頼らなくても自分自身でいろいろなことができるようになり、新しいユースケースが出てくると思いますし、より良いインサイトを得られるようになるでしょう。蓄積したデータをさらに活用できるようになるわけです。一方、開発者はAIによって仕事を奪われるのではないかといった議論もありますが、そうではなく、AIを活用することで生産性が上がり、開発者として生き残れるのではないでしょうか。

ルケイツ FileMakerは38年の歴史があるプロダクトで、ドキュメントやオンラインでのディスカッションといった膨大なナレッジがあります。これを使ってGPTでまあまあの精度でFileMakerのスクリプトを作れることを確認しています。開発初心者にとっては学習曲線を急カーブで上げることができますし、Claris社内のベテランの開発者がLLMを使ってカスタム関数を作った例もあります。

— FileMakerと連係できるLLMはGPTに限定されているわけではないのですよね?

ルケイツ はい、GPTは一例です。例えば、データが社外に流れてしまうことを懸念するならローカルのLLMを使うといったケースが考えられます。

フライターグ 私たちはLLMのパートナーを特に決めてはいません。LLMはお客様が選ぶものだと思います。現時点ではどのLLMに収斂するのか、どのLLMに競争力があるのかわからないので、さまざまなテストをしているところです。

日本でのClaris Studioのサービス開始は2024年前半から段階的に

— オープニングセッションでは、書籍の『Claris FileMaker ガイドブック』や、短い動画シリーズの「Claris FileMaker – 10分でスキルアップ」など、日本語で利用できる充実したトレーニング教材が紹介されました。これらは日本独自のものですか?

日比野 『Claris FileMaker ガイドブック』の元になったのは、米国の『FileMaker Training Series』です。これに対して、「Claris FileMaker – 10分でスキルアップ」は日本オリジナルです。これは、コールセンターで受けたお問い合わせの情報を集め、その解決策を動画にしているんです。ですから、このシリーズには日本ならではの課題があると思います。

Claris North Asia Sales Director、日比野暢氏

— Claris Connectの無料枠を利用できるようになってから半年経ちました。利用者数は増えていますか?

日比野 はい、急速に増えています。ただ、現時点では実装を試したり、社内でセキュリティ面などの調整をしたりしている段階の企業が多いようで、本格的に稼働開始となるまでには時間のかかるプロダクトのように見受けられます。ちなみに、FileMaker Cloudも好調で、前年比で2桁の成長となっています。

— 日本でのClaris Studioのサービス開始は東京データセンターの開設時とのことで、オープニングキーノートでは2024年前半から段階的に開始予定と説明がありました。現在はどのような状況ですか?

フライターグ インスタンスはすでに立ち上がっているのですが、品質管理がまだ十分ではない状態です。

ルケイツ Claris Studioは今後、アジャイルにリリースしていきます。現在は一部のユーザーがテストし、フィードバックをしている段階です。こうしたテストを経て、確実性を上げてから本格的なリリースを開始します。

日比野 動作しているのですが、日本語で使うには厳しい状態です。日本のお客様は品質に対する目が厳しいので、もう少し時間をかけて、確実な製品を提供したいと考えています。

ルケイツ 現在テストをしていて、次の段階としてはおそらくClarisのパートナーの方々に展開するでしょう。その後、さらに別の方々へ、というふうに進んでいくと思います。

Clarisのプラットフォームを選ぶ理由は?

— ローコードのプラットフォームもAIを取り入れたツールもたくさんありますが、その中でClarisのプラットフォームを選ぶ理由は何でしょうか?

フライターグ 私たちはほかのプラットフォームとは違うと自負しています。具体的には、グローバルなコミュニティの大きさと強さ、Appleとの連係、40年近く続いてきた永続性、オンプレミスやウェブなどのオプションにハイブリッドに対応、そしてユーザーとの関係性を大切にしつつ新しい分野にも投資している点が挙げられます。

日比野 Clarisのブログでも「ローコード開発のプラットフォームを選ぶときのポイント7選」という記事を掲載しています。参考にしてください。