ポケトークは11月9日、「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」のWebブラウザ版を提供開始しました。ポケトーク代表取締役社長の松田憲幸氏は、日本企業の海外展開を後押しすると意気込みます。海外展開を目指しているけれど通訳者がいない、あるいは通訳にコストをかけられない会社などに向け、ブラウザ版を通じて製品を訴求していく考えです。
そもそも「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」とは、オンライン会議や動画で流れた音声を認識して文字起こしし、それを翻訳して読み上げるサービス。相手が話す言語は10言語(英語、日本語、韓国語、中国語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語)に対応し、音声が流れるのとほぼ同時に、74言語で字幕を表示できます。
海外の会社とのオンライン会議や、インバウンドによる外国人観光客への対応などに役立つ本製品、もとはPC向けのソフトウェアとして、Windows版が2023年3月14日から、Mac版が4月17日から販売されていました。
「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」ブラウザ版で何ができる?
今回、「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」がリニューアルし、Webブラウザ版として公開されました。所定のURLにアクセスするだけで利用できるため、例えば社給PCなど、セキュリティの関係で外部のソフトウェアを導入できないPCや、iPhone・Androidスマートフォン、タブレットなどでも利用できることが大きな特徴です。
具体的にどんなことができるのか?ということで、英語が母国語の話者によるプレゼンテーションを、Webブラウザ版の「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」で、日本語に翻訳しながら聞いてみました(同製品の発表会場で行われたデモンストレーションです)。
自分の手元には、スマートフォンのWebブラウザでログインした「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」があり、(翻訳元)英語→(翻訳先)日本語の設定で、マイクで拾った言葉が順次、翻訳されていきます。
これまでのポケトークデバイスでは、1台で自分の言葉を翻訳し、また相手の言葉も翻訳する、といった使い方ができましたが、「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」は基本的に自分のみで使うサービス。自分の言葉を相手に伝えるには、相手にも「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」を起動してもらうか、言語の設定を都度切り替える必要があります。
翻訳されたプレゼンテーションの内容を見ながら、こちらから日本語で質問をしてみたところ、相手が起動していたWebブラウザ版の「ポケトーク for BUSINESS 同時通訳」が質問を英語に翻訳し、相手が英語で回答した内容を自分のスマートフォンで確認する、といった形でコミュニケーションがとれました。
今回のデモンストレーションは、あらかじめ用意された英文を大きな継ぎ目なく話す、という形で、翻訳速度はそれほど速くは感じませんでしたが、それでも話の概要は伝わりました(しかし翻訳の文字に注目してしまい、相手が実際に何を言ったか聞き逃す場面も)。実際の会議やカンファレンスでは相手の発言を待ったり、緩急をつけながらゆっくり話す、といったケースが多いと思われるので、よりリアルタイムに近い形での翻訳が期待できそうです。
また、ボタンを押すとずっと録音・翻訳モードが続くため、Google翻訳アプリなどと異なり、オンライン会議でのプレゼンテーションや商品説明など、相手が長い間話をするようなときにより便利に使えそうでした。
なおセキュリティに関しては、翻訳内容の漏洩といったトラブルが起きないよう、コンプライアンス規則であるHIPAA(米国連邦規制基準)、GDPR(EU一般データ保護規則)に準拠しているとのことでした。
“言葉の壁”が一気に崩れる – 日本企業の海外展開を後押し
ポケトーク代表取締役社長の松田憲幸氏は、2017年にスタートしたAI通訳機「ポケトーク」から6年が経ったとし、今回のWebブラウザ版について「起業して30年、こんなに感動した製品はない。“言葉の壁”が一気に崩れる」と紹介しました。この6年の間には、ユーザーからは「スマホで使いたい」「逐一ボタンを押さなくてもハンズフリーで使いたい」といった要望があったといいます。
これらの要望を活かしたWebブラウザ版には、下記のような特徴があります。
- スマートフォンやタブレットで使える
- 最初にスタートボタンを押したら、後はハンズフリー
- 対面でもオンラインでも使える
- 相手に気づかれることなく手元で使える
- 話した内容の履歴が見られる
- 会話をダウンロードして保存できる
この中で便利そうだと感じたのが「手元で使える」という方法。外国語での説明会やカンファレンスなどを聞きながら、手元のスマートフォンでWebブラウザ版を起動し、流れてくる外国語の内容を記録、翻訳して概要をつかむ……というのは仕事に役立ちそうです。個人で使う場合であれば、英語学習で海外ドラマを聞きながら日本語でも概要をチェックする、あるいは好きなアーティストの外国語インタビューを翻訳する、といった使い方もよさそうだと感じました。
ソフトウェア版との大きな機能差はありませんが、ソフトウェア版ではビデオ会議で使った際、自分の画像の上に、自分の発言を字幕として見せる機能があったところ、Webブラウザ版ではこの機能が省かれました。双方が相手の言葉を聞くだけでコミュニケーションを取れることを目的にした製品のため、よりシンプルにした方が使いやすいと判断したためとのこと。また、機能を追加した際にアップデートが不要な点も、Webブラウザ版のメリットだといいます。
料金は月額3,300円/年額39,600円(毎月30分無料)。月額2,200円だったソフトウェア版と比べ1,100円高額となりますが、今後はこの価格でソフトウェア版からWebブラウザ版へ切り替えていく考えです。値上げになった状態ですが、現時点で(月額2,200円で)ソフトウェア版をサブスクリプションで契約しているユーザーは、元の金額のまま使い続けられます。また毎月30分ぶんを無料で使えるフリーミアムがあるほか、2023年12月8日までは年額の利用料金を33%オフにするキャンペーンが実施されています。