2023年10月15日~22日の期間中、オーストラリア・シドニーで国際展示会「SXSW Sydney 2023」が開催されました。SXSWとはSouth by Southwestのこと。「Tech & Innovation / Games / Music / Screen」を4本の柱として掲げているイベントで、性質的にはそこまでテック系というよりは、どちらかといえばカルチャー風味が強いタイプの展示会です。
実はアメリカ・オースティンで35年以上にわたって開催されてきたイベントで、アジア・パシフィックでの開催は初めてです。今回、このイベントにおけるTech & Innovation領域でIntelと協賛しているHPが、オーストラリア・シドニーでの現地取材に日本メディアを多数招待。マイナビニュースも参加してきました。
忙しい方向けにまとめておくと、HP新製品としては持ち運べる一体型デスクトップPCとフォルダブルノートPCをアピール。コロナ禍明けでPC市場はかなり軟調な局面に差し掛かっていますが、ハイブリッドワークにおけるリーダーシップを維持していきたい考えです。
お値段なんと約80万円、でも3-in-1仕様としてはそれなりに妥当という発想
なんといっても目玉製品は折りたたみノートPC「HP Spectre Foldable PC」。第12世代Intel Coreプロセッサを内蔵しており、17型の大画面有機ELパネルを搭載しています。単体でタブレットとして、キーボードを手前においてデスクトップPCとして、キーボードを本体の上に載せてノートPCとして利用できる、“3-in-1”な仕様が特徴。すでに日本への発売も決定しており、12月下旬以降に798,600円前後での発売を予定します。
今回製品について聞いた中で、個人的には可搬性にちゃんと配慮している点と、キーボードの使い勝手に注力されている点がとても好感触でした。発表の中では「17型折りたたみPCとしては世界最薄」とアピールされていますが、これは要するにASUS「Zenbook 17 Fold OLED」よりも薄いということ。後発品のほうが分厚いようでは話にならないうえ、体感しやすい数字で優位性があるのは大きなポイントになりそう。
また、PCの手前に置いたり、載せたりして使う専用物理キーボードの使い勝手もかなりよかった点が気に入りました。タイピングの感触はHP Spectreシリーズの名に恥じない立派なものだったことはもちろん、なんと無線充電機能を内蔵。PCからキーボードに無線で給電できるため、ケーブル接続の手間を排除することに成功しています。
キーボードを載せて使う際の微妙な位置も、なかなか興味深いところ。ヒンジの折り目に沿わせるわけではなく、微妙に手前へとずらしたことで、パームレスト部のちょうどいい傾斜を備えつつ、十分なサイズのタッチパッドを搭載。キーボード上部に画面表示領域を設け、一般的なノートPCとは一線を画したスタイルを実現しています。
ちなみに、特徴的なアスペクト比もあってディスプレイが「IMAX enhanced certification」を取得している点もポイント。日本でも一部の映画館で導入されている「IMAX レーザー / GTテクノロジー」で鑑賞できる「1.43:1」のような映像を表示できるとのこと。どこから対応規格に準拠したコンテンツが供給されるのかは不明ですが、2.5K解像度の有機ELでリッチな映画鑑賞体験を実現します。
折りたたみノートPCに加えて、持ち運べる一体型PC「HP ENVY Move All-in-One」も発表されています。一体型PCとは大画面のディスプレイをPCに“一体化”させたというデスクトップPCの一種で、これにキーボードやマウスをつなげて使うことができるというもの。今回の新製品では、上部にハンドルを備えている点がポイント。家やオフィスで持ち歩き、好きな場所で使えるとことが特徴です。
何気に便利そうだと思ったのは、バッテリーがちゃんと内蔵されているところ。PCをコンセントに縫い留め、可搬性を阻害する電源ケーブルを排除できるとなれば、コンセプト倒れにならず手間なく持ち運んで便利に使えるでしょう。
加えて、オフィス向けのプリンター新製品「HP OfficeJet Pro 9130eシリーズ」もありました。サステナビリティへの大きな需要にこたえるべく、もちろんインクタンク搭載モデル。セキュアな無線接続や高速印刷、ボディへの再利用素材採用を訴求します。
ICC会場ブースを見てきた! すぐ隣の会場で“IEM”開催中、Intelブースも連携
最後に、ICC Sydney(シドニー国際会議場)でHPとIntelのブースの様子をご紹介。HPブースでは新製品の折りたたみPCや持ち運びPCの実機を眺められたほか、ゲーミングブランドのOMENからの製品を展示していました。会場の外には真っ青なIntel Coreブルーをまとった専用エリアも用意する力の入りよう。
また、なんと折よく「IEM(Intel Extreme Masters)」がシドニーで開催中でした。伝統と格式あるESL公認のeスポーツ大会で、その歴史は2006年まで遡ります。これに連動してSXSW内のIntelブースはIEM一色。これも折よく先日発表されていたデスクトップ向け第14世代Intel Coreプロセッサを猛アピールし、『Counter-Strike 2』の試遊台も多数設置。立ち寄った人たちでチームを急造して楽しむ参加型イベントも開催されていました。
HPから感じるアジア・パシフィック領域への攻勢
今回のイベントもそうですが、HPがアジア・パシフィック市場を重視しているという姿勢がこれまでよりさらに強まったように感じます。どうしても北米で開催されがちなグローバルイベントですが、SXSWのようにオーストラリア開催のイベントも見逃さずに展示を実施。媒体を多数招待する施策も、ちょっとやそっとの予算で実施できるはずがありません。つい先日もグレート・アジア向けと銘打ち、日本でイベントを開催していたことも、この印象を強めています。
PCメーカーといわれても、量販店で見る製品の一企業でしかないようにふつうは思うものですが、今回のオーストラリア取材を通して、HPという会社がいかに大きく強い影響力を持ったグローバル企業であるかを思い知ったような気がしました。