米Googleは6月7日(現地時間)、対話AI・生成AIの実験的プロジェクト「Bard」のアップデートを発表した。インプリシット・コード実行(implicit code execution)によって、数学的な課題、コーディングの質問、文字列操作などのプロンプトに対してより正確に応答できるようになる。また、Google Sheetsへの新しいエクスポート・アクションを追加した。

大規模言語モデル(LLM)のプロンプトに対する振る舞いは予測エンジンに似ており、自然言語処理や作文などのタスクに対して高い精度と一貫性を持っているのに比べて、複雑な推論や高度な数学などの分野における応答の精度は劣る。

Bardに新たに導入する手法は、LLMだけでは対応できないプロンプトに対して、推論や計算能力を高めるコードを生成して実行する。これは自動的に素早く反応する「システム1」と、論理的にじっくりと考える「システム2」思考の2つを組み合わせる、ダニエル・カーネマンの「Thinking, Fast and Slow」に代表される二重過程にヒントを得た方法だ。BardはLLM(システム1)と従来のコード(システム2)を組み合わせ、論理的なコードが有効なプロンプトを特定し、それをインプリシット(暗黙的)に書いて実行し、結果を使用して応答の精度を高める。数学の問題への回答はシステム2の思考と関連することが多いが、それをシステム1だけで解こうとすると、注意深く問題を考えずに思いついた答えを出力してしまう。しかし、2つのモードを正しい手順で使い分ければ、論理的な思考を必要とする問題により適切な結果を提供できる。

今回のアップデートによって、例えば「15683615の素因数は何ですか?」、「貯蓄の成長率を計算して」、「“Lollipop”という単語を逆にして」といったプロンプトにより正確に応答できるようになる。

  • 「Reverse the word “Lollipop” for me」へのBardの応答

    「Reverse the word “Lollipop” for me」というプロンプトに、スペルを逆に綴るPythonコードを生成

プロンプトへの応答を助けるコードが生成されなかったり、コードの誤りなど、Bardが間違うこともあるが、構造化されたロジック主導の応答によって、BardはGoogle内部のチャレンジ・データセットの数学問題や文字列操作などで応答の精度がおよそ30%向上したとのこと。

また、新しいエクスポート・アクションによって、「動物保護施設のボランティア登録のための表を作成してください」というようなプロンプトで、Bardが回答として作成した表を直接エクスポートしてSheetsで利用できるようになった。