Dellより法人向けとして販売されている「Latitude 9430」は、14インチのモバイルノートPCだ。ビジネスユースにおける作業効率と安全性を向上させることに注力し、生産性を高めるプレミアムなモデルとされている。今回、DellよりLatitude 9430の2in1モデルをお借りできたので、実際にどういった機能・性能を持つのかを紹介していこう。

  • 2in1も可能な法人向け高セキュリティ14型ノートPC「Dell Latitude 9430」を試す

    「Latitude 9430」はクラムシェルスタイルを基本とするモバイルノートPCだ

試用機スペック

お借りしたモデルの主なスペックは、CPUがIntel Core i7-1265U(10コア/12スレッド)、メモリが32GB、ストレージがPCIe NVMe対応M.2 SSD500GB、ディスプレイが14インチのタッチパネルで解像度が2,560×1,600ドット、OSがWindows 10 Pro。販売ページの「Dell Latitude 9430 – Build Your Own」モデルのCPUとメモリ容量をアップグレードした状態だ。本体サイズはW310.59×D215.18×H8.42mmで、重量が1.45kg(仕様によって変わる)。

  • グレーぽい黒で落ち着いた雰囲気

ビジネスシーンで活躍する機能満載

仕事でPCを使う際に一番気になるのは、なによりもセキュリティではなかろうか。特に法人利用ならば、その重要度は跳ね上がる。Latitude 9430はそうした要求に応えるため、内蔵カメラを利用した高精度な「のぞき見検知機能」を備えている。自分以外の他人が画面を見つめていることを感知すると、画面にテクスチャー処理を施しプライバシーを高めてくれるのだ。さらに同載する近接検知機能では、離席時にシステムロックを自動的に行なうほか、システムの起動やユーザーのサインインまでも対応しており、セキュリティを非常に重視している。

  • Latitude 9430をカスタマイズするアプリケーション「Dell Optimizer」

  • 存在検知機能から、のぞき見検知機能や接近検知機能のセットアップが行なえる

  • 電源オプションでは、温度やパフォーマンスレベルを設定しバッテリー消費を抑えるといった設定が可能

ビデオ会議にて活用するカメラもセキュリティを意識している。開閉するタイミングを自動化できるため、初期設定を行なえばうっかりカメラから映像を流出してしまうといったことが防げる。それでも不安だと思う方に向けて、キーボードからの操作による直接制御も可能だ。

  • カメラはディスプレイの上部ベゼルに内蔵

そのほかにも、Dellのセキュリティチップ「Dell SafeID」、BIOSの改ざんリスクを軽減する「Dell SafeBIOS」を搭載するうえ、指紋認証リーダーや接触型/非接触型スマート カード リーダーにより不正なログインを防ぐオプションを多数用意している。

多彩なネットワークであらゆる場所を仕事場に

高セキュリティで持ち運ぶことへの安心を得たら、あとはどこで使うかだ。「Latitude 9430」はどんな場所でも仕事場にできるよう、eSIMにも対応する5G/4G LTEオプションを用意している。つまり、SIMカードを挿せばスマートフォンの電波が届く限り好きな場所でPC利用ができるのである。

PC本体以外への追加料金のかかるSIM利用は厳しい場合でも、対応帯域種別の多いWi-Fi 6Eにより高速かつ安定したネットワークの構築も可能となっている。しかもDell製品において初搭載となるマルチネットワーク接続「ExpressConnect」によって、有線と無線のふたつのネットワークを同時に利用しての高速ダウンロードが活用できるのだ。

  • ネットワークの項目では、帯域をビデオ会議アプリへの割り当て状況などの設定ができる

また、持ち歩くとなれば耐久性も重要だ。その点、Latitude 9430は米国国防総省による軍用機器の耐久テストであるMIL-STD 810Hに合格しているほどなので、安心していいだろう。

シックな外観とタイプしやすいキーボード

外観のカラーは全体がグレーがかった黒で統一されており、シックで落ち着いた色合いでありながら高級感も兼ね備えている。これならどんなシーンでも取り出しやすいだろう。
ディスプレイはグレアで映像が非常に美しい。その分、どうしても明かりなどの反射が起きてしまうが、コーティングがいいのか、14型モバイルモデルなので気軽に向きを調節できるからなのか、さほど気にならなかった。

ベゼルは実測で左右が約4mm、上部が約5.5mmと非常に狭い。クラムシェルノートとして使う際の没入感は最高だ。さらに2in1でタブレットとして利用する場合も、画面占有率が高くとても快適である。資料の閲覧、プレゼンといったシーンで活躍するはずだ。

  • 液晶は非常に美しく文字も読み取りやすい。狭額縁ベゼルのため、映像への没入感も高い

ビジネスノートながら、サウンド面においても素晴らしい体験が得られる。キーボードの左右と底面手前に備えられたスピーカーにより、変な軽さなどもなくモバイルノートとはとても思えないレベルの音響を楽しむことができた。エンタメモデルとしても活用できるレベルだ。単純に音楽や映画を楽しむというだけでなく、もちろん会議などのビデオ通話において相手の音声が聞き取りやすいであろう。

  • 底面手前にもスピーカーを備える

インタフェースは右側面にはUSB 3.2 Gen1Type-A×1を装備。左側面にはセキュリティロックホールのほか、HDMI 2.0×1、Thunderbolt 4(Power DeliveryおよびDisplayPort対応)Type-C×2、MicroSDメモリーカードスロット、uSIMカードスロット、4極オーディオジャックが並ぶ。電源もType-C端子から供給する方式になっており、非常にすっきりしているうえ拡張性も十分にある。

  • USB Type-A端子ひとつを備える右側面

  • 多くの端子はこの左側面に並んでいる。電源端子も兼ねるUSB Type-C端子もこちらだ

キーボードは、メイン部分はピッチを実測で約19mmを確保。ストロークも深めでクリック感があり非常に打ちやすい。右のエンターキー周囲は少し狭くなっているが、ほとんど使用することのない部分なこともありあっという間に慣れられる程度だ。長時間の作業も楽にこなせるだろう。右上には指紋センサーを兼ねたスリープボタンを配置している。

  • タイプしやすいキーボード。その左右にはスピーカーを搭載している

2in1スタイルについても語っておこう。クラムシェルノート状態からディスプレイ部分を180度以上開くと、タブレットモードになる。270度ほど開いてキーボード面を下にしたスタンドディスプレイのスタイルや、360度開いてタブレットスタイルでの利用ができる。CPUの性能もあってスワイプ、ピンチなど様々な操作は軽快に動作する。高精細なパネルなのでじっくりと書類を閲覧するのも快適だ。また、これらの状態においては通常時の底面にあるスピーカーから音が鳴る。これがまた非常に高音質なので、映画を見るといった活用にも向いている。

  • 360度開けばタブレットスタイルだ

  • キーボード面をスタンドにした状態

様々な作業を軽々とこなす高いスペック

環境が整っていてもスペックがなければ作業が捗らないのは周知の事実である。各種ベンチマークにて、マシンパワーをチェックしていこう。

まずは総合力を計測する「PCMark10」。総合スコアは5665とそこそこであった。だが詳細をチェックすると、ウェブブラウズ、ビデオ会議、アプリ起動時間などを見る「Essentials」では10760という高スコアとなっている。さらにWordなどのオフィスアプリケーションのパフォーマンスを見る「Productivity」では7197とこちらも高スコアだ。写真・動画編集などの処理能力を見る「Digital Content Creation」においても、6371という十分な能力を示している。さらにその詳細の中を確認してみるとレンダリング周りのスコアが3680と低くなっており、これが総合スコアを低く見せているのであろう。とはいえCPU統合グラフィックスであれば十分過ぎるほどの能力である。

  • PCMark10のスコア

CPUのみのパフォーマンスを計測する「CINEBENCH R23」では、マルチコアでは9113pts、シングルコアでも1781ptsというスコアであった。コアが16や24も搭載されたCPUにはさすがに勝てないものの、モバイル系CPUではトップクラスの性能である。

  • CINEBENCH R23のスコア

ストレージ速度は「CrystalDiskMark 8.0.2」だ。結果は以下の画像を見ていただければわかるとおり、かなりの高速である。ファイル操作は快適の一言だ。

  • CrystalDiskMarkのスコア

法人向けビジネスPCでゲームをすることはないと思うが、3D処理能力をチェックするため「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」を走らせてみた。設定は解像度が「1920×1080」、画質が「高品質(ノートPC)、表示モードは「フルスクリーン」だ。これで5720というスコアで評価は「普通」と出ている。ノートPCで快適に遊べるだろう。これをベースに自分の好みで調節するのもいい。

  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレのスコア

さらに3D処理チェックとして「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」を利用。設定は画質が「軽量品質」、解像度が「1920×1080」、表示は「フルスクリーン」だ。結構ヘビーなベンチマークなのだが、この設定であればスコアが3085の評価は「普通」。それなりに遊べてしまうわけだ。

  • FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマークのスコア

あまりに3D系ベンチマークの結果がいいので、CPU統合グラフィックスではあるが「3DMARK」も走らせる。その中でもDirectX 11用の 「Fire Strike」では、スコアが4669と出た。CPU統合グラフィックス用ベンチマークの「Night Raid」では、スコアは15897と高い結果であった。

  • Fire Strikeのスコア。Time Spyは途中で停止してしまった

  • Night Raidのスコア

ビジネスモバイルとしては最高クラスのモデル

Latitude 9430は、高いセキュリティ性を備えているためビジネスユースには最適なモデルである。さらにCPUに採用しているIntel Core i7-1265Uにより、一般的なビジネス用途であれば軽々とこなしてくれるスペックを誇る。これだけの機能を14型のサイズに収めているうえに重量も1.2~1.4kg(仕様により変動する)なため、家と仕事場などをPCを持って往復するのもとてもラクだ。ビジネスマンを高いレベルでサポートしてくれる素晴らしい相棒となってくれるだろう。