2023年春に、mini LEDバックライトを搭載した「AQUOS XLED」を米国市場に投入。スマートテレビ向けOS「Roku」を搭載した有機ELテレビや液晶テレビも同時に発売する。

  • シャープが米国テレビ市場に再参入、撤退から7年 「AQUOS XLED」で狙う失地回復

    シャープが今春、米国テレビ市場に本格再参入する

シャープ スマートディスプレイシステム事業本部欧米TV事業部長兼米州事業推進部長の吉田宏之氏は、「シャープのフラッグシップモデルであるAQUOS XLEDを投入することで、米国市場において、AQUOSブランドのテレビの価値を、改めて感じてもらいたい。また、普及価格帯の商品も含むフルラインアップ展開によって、シェア拡大も同時に目指す。2025年度までには、かつての販売台数シェアにまで回復させたい」と意気込む。米国で継続的にテレビ事業を行うために、将来的には5%以上のシェア獲得が目標となりそうだ。

  • シャープ スマートディスプレイシステム事業本部欧米TV事業部長兼米州事業推進部長の吉田宏之氏

同社では、米ラスベガスで1月5日(現地時間)から開催しているCES 2023のシャープブースにおいて、米国市場向けに投入するテレビを一堂に展示。本格的に再参入する姿勢を、米国市場に向けてアピールした。

「米国市場では、映画視聴に適した大画面、コントラストの高さ、音質の良さなどを訴求したい。AQUOSが持つ高画質、高音質、デザイン性に優れた大画面テレビとしてのイメージをさらに高めていく考えだ。米国市場での存在感を高めることは、グローバル展開にもプラスに働く」とする。

米国市場向けに投入する「AQUOS XLED」は、日本の最新モデルであるEP1ラインをベースに開発。高密度に敷き詰めたmini LEDバックライトを搭載し、これを2,000個以上のエリアに分割して明暗を制御する「Xtreme mini LED」技術や、量子ドットを活用した光波長変換によって、バックライトの光から純度の高い3原色を生成するDeep Chroma QD技術を採用。輝度やコントラスト、色彩表現において、優れた表示性能を発揮する。

  • 日本で発売しているAQUOS XLED EP1ライン

シャープ スマートディスプレイシステム事業本部Global商品企画統轄部長兼海外商品戦略推進部長の小祝岳夫氏は、「日本では2021年から投入したAQUOS XLEDは、2022年11月に第2弾モデルを発売。それをベースに、今回の米国市場向けに展開する。液晶テレビは明るさに特徴があるが、黒の再現性には限界がある。また、有機ELテレビは、黒の表現には優れているが、明るい部屋で視聴するにはあまり適していない。XLEDは、双方の特徴を活かし、短所を補うことができる技術であり、従来の液晶テレビよりも黒に強く、有機ELよりも明るく表示し、自然界にある色を正しく再現できる。色の再現性は、従来に比べて20%向上。コントラストを拡張し、6倍のピーク輝度を実現している」という。

  • シャープ スマートディスプレイシステム事業本部Global商品企画統轄部長兼海外商品戦略推進部長の小祝岳夫氏

画面の上下部に11個のスピーカーを搭載したARSSスピーカーシステムを採用。没入感のある音場と、その場にいるような臨場感を実現。Google TVを搭載しており、各種サービスやアプリも利用できる。また、余計なデザインを排除し、画面を目立たせ、インテリアにも調和させたものになっている。

米国での販売に続き、カナダやメキシコ、中国、台湾、ASEAN、中近東でも販売を開始する予定だ。

さらに、Rokuを搭載した有機ELテレビとして、65型および55型の2機種を発売。液晶テレビでは、75型、65型、55型、50型を投入することも発表した。「Roku TVは、米国の消費者に人気が高く、使いやすさにも定評がある。2019年秋に先行して再参入を果たしたメキシコ市場においては、Roku TVが好評を博しており、米国市場にも展開を決定した。幅広いラインアップ展開により、ユーザーの多様なニーズに応えたい」と語る。

  • Rokuを搭載した有機ELテレビとして、65型および55型の2機種を発売

  • 液晶テレビでは、75型、65型、55型、50型を投入

現在、全米に展開している大手量販店や専門店などと商談を進めており、具体的な販売プロモーションについては、今後検討していくことになる。「CES 2023の展示は、テレビ事業の商談の場になる」(シャープの吉田事業部長)としている。

シャープは、2001年1月に、液晶テレビ「AQUOS」の第1号機を発売。同年、米国でもAQUOSの販売を開始した。だが、全社業績悪化の影響を受け、米国市場におけるテレビ事業については、中国ハイセンスに、シャープおよびAQUOSのブランドを供与。2016年1月からは、米国市場向けのAQUOSブランドのBtoC向けテレビは、ハイセンスを通じて販売されていた。しかし、2019年5月に、ハイセンスと新たな協力関係を構築することで合意。現在は、2016年以前と同様に、シャープは米国市場においてAQUOSブランドでのテレビ事業を独自に展開することが可能になっている。

2020年に試験販売を行ったほか、2022年10~11月にかけて、米家電量販店のベストバイ(Best Buy)において、Rokuを搭載した65型液晶テレビの1機種に限定して販売を開始。本格参入の機会を模索してきた。

シャープの吉田事業部長は、「米国テレビ市場では、コロナ禍による巣ごもり需要の反動もあり、販売は低迷。流通在庫の消化にも苦戦している状況にあるが、ベストバイでの期間限定での販売は、予定よりも早く売り切ってしまうほどで、AQUOSブランドに対する認知度の高さが維持されており、市場からの期待感にも手応えがある」とする。

また、「テレビの販売を通じて、お客様に価値ある視聴体験をお届けするのはテレビメーカーとしての我々の使命である」と前置きし、「今後は、テレビと家電機器を連携した各種サービスを提供するゲートウェイとしても提供する。すでに、米国では、電子レンジや空気清浄機、冷蔵庫などを市場投入しており、今後、調理家電などを中心に、カテゴリーを増やしていく。これにより、シャープ独自のAIoT家電を活用し、テレビをゲートウェイとしたスマートホームを提案したい。米国テレビ市場への本格再参入は、今後のスマートホーム事業の海外展開のマイルストーンとして大きな意味を持つだろう。さらに、米国テレビメーカー各社が取り組んでいる広告などによるリカーリングビジネスにも乗り出したい。米国での実績をもとに、テレビ事業の新たなビジネスモデルをグローバルに展開していくこともできる」とコメント。米国への本格再参入が、今後の海外テレビ事業拡大に向けた試金石になることを示唆した。

なお、シャープは、2023年に創業111周年を迎え、1953年に国産第1号のテレビの量産を開始してから70年目となる。