2023年の幕開けに、パーソナルコンピュータのハードウェア技術の動向を占う「PCテクノロジートレンド」をお届けする。本稿はチップセット編だ。
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Intel/AMD共に、新アーキテクチャを採用したハイエンドプロセッサを年末に出し、翌年その下のSKUを充実させる、という流れが定着してしまい、Chipsetも年末にハイエンド品が出て、翌年その下のSKUが追加されるという形になってしまっている。しかも2023年は両社とも、Desktopに関しては新プラットフォームの投入が無い。そんな訳であまり新しい話は無かったりする。
Intel Chipset(Photo02)
既報の通り、Intelは新しいDesktop/Mobile向けプロセッサをリリースした訳だが、このリリースには新しいChipsetの話は含まれていなかった。なのだが、Intel Arkにはしれっと新しくB760/H770の情報が追加されていたので、ここでその詳細を説明しておきたい。
表1が今回リリースされたB760/H770と、既に発売済のZ790を加えた特徴の一覧である。コア及びBCLKのOverclockの機能を持つのはZ790のみで、B760/H770はメモリの動作周波数しか変更できない事、それとChipsetから出るPCIe/USBのLane数が若干減らされている事以外は、H770とZ790はかなり近いと言える。一方のB760はDMIのLaneもx4に減らされており、これに伴いI/Oの数も大幅に減っている。とは言え、B760でも普通に使う限りにおいては何ら支障のないスペックではあるのだが。ちなみにお値段の方は、Z790が1個$57とかなり高いのに対し、H770は$36、B760は$31と猛烈に値段が下がっている。勿論I/Oの数も減っているが、この差の$20ほどがほぼCore/BCLKのOverclockのPremierという事になる。
ところで表1を見ると、RST EnterpriseとかStandard Manageability、SIPP/TETといったFeatureには一切未対応である。これらはvPro向けの機能であり、現状まだvPro対応プロセッサがリリースされていないから要らないということでもあるが、逆に言えばvPro対応プロセッサのリリースに合わせて、Chipsetの方もこれに対応したものが新たに追加される、という意味でもあるのだが、どうも現在の話を聞いている限りでは追加されないらしい。
ではどうするか? というと、既に発売済のQ670がこれに対応する形になるらしい。そもそもビジネス向けはConsumer向けと異なり、Chipsetを変更して新しいマザーボードを販売する、といったビジネスではないし、むしろChipsetが変わるとVerificationに時間が取られる事になるので、むしろ既存のChipsetをそのまま使い続ける方が好まれる。Raptor LakeはAlder Lakeと互換性があるし、機能的にも何か追加する必要があるか? というと特に見当たらない。だったら既存のQ670そのままで問題ない、という判断の様だ。ついでに言えば、B760の更に下にあたるスペックのH610も、これをH710にするのではなく引き続きH610のまま販売、という事になるようだ。H610は更に安い$28で販売されており、エントリ向けマザーボードなどで広く利用されている。このマーケットも、新しいチップセットを導入したからといって買い替えが発生する訳ではないので、引き続き継続提供で問題ない、という判断と思われる。
一つだけ例外があるのがWorkstation向け。このマーケットは現在Alder LakeベースのCoreプロセッサを利用したローエンド向けのW680と、Ice Lake-SPベースのXeon Wプロセッサを利用したメインストリーム~ハイエンド向けのC621が使われていた。このうちW680はQ670にECC Memoryのサポートを追加したような構成であり、当初はW780にアップデートされるとされていたが、現実問題としてRaptor Lakeでもそのまま利用できる(Workstation向けだからそもそもOverclock動作とかはしない)ということで、そのまま行きそうである。ただし、その上のXeon W向けに関しては、こちらのCPU編の記事の所で述べた様にSapphire Rapidsベースに切り替わる関係で新しいチップセットがどうしても必要になる。この新チップセットがW790になるらしい。こちらはSapphire RapidsベースのXeon Wとあわせ、恐らく2023年前半中に投入されるものと思われる。
その先であるが、これもCPU編で説明したように、Meteor Lake-Sが無くなり、Raptor Lake Refreshで代替されることになった。恐らくこのRaptor Lake Refreshに合わせてZ890が投入されると思われるが、これはZ790 Refreshとでもいうべき製品で、元々開発していた800 Series Chipsetとは異なるものである(元々の800 Seriesは、恐らく2024年に900 Seriesとして投入されることになるだろう)。
ちなみにMeteor Lake-SではLGA 1851になる予定だったらしいという話も触れたが、この主な理由は消費電力増への対応と、PCIe Gen5への対応である。Alder Lake/Raptor Lakeは、CPU PackageからPCIe Gen5×16とPCIe Gen4×4(これはM.2向け)、それとDMI 4.0×8(=PCIe Gen4×8)が出る構成だったが、Meteor LakeではこれがPCIe Gen5×16+PCIe Gen5×4(これはM.2向け)+DMI 5.0×8(=PCIe Gen5×8)という具合にPCIe 5.0に統一される筈だった「らしい」。ということでこのDMI 5.0への対応がChipsetの側にも必要になる訳だ。StorageがPCIe 5.0に移行するにあたり、DMI 4.0ではそろそろ帯域が不足するから、というのがその最大の理由であろう。あと何気にWi-Fi 7とかLANの2.5G/5Gへの移行など、より広帯域なNetworkへの対応を考えると、そろそろPCHの側にもPCIe Gen5が必要という判断だったと思われる。それはともかくとして、PCIe 4.0→5.0ではシンボル速度そのものは変わらず、なのでピン数そのものが増える理由にはならない。なので150以上もピンが増える理由はもう電力供給を更に増やすため、ということになる。今でも250Wとかをピークで供給している訳だが、恐らくLGA 1851ではピークで300W近くまで行くものと考えられる。どこかでこの流れ、止まらないものだろうか?