インテルは日本国内で「Evo」プラットフォームのマーケティング活動を強化する方針のようだ。特に今年の年末商戦に向けて改めてEvo PCの魅力を強く打ち出したいという。同社日本法人のマーケティング本部長である上野晶子氏が説明した。

上野氏は、2003年から10年ほどインテルでマーケティングを担当、一度同社を離れたが、3年前にインテルに復帰、現在は同社マーケティング本部を率いる立場にある。その経験から、往年の「Centrino」(セントリーノ)や「Ultrabook」(ウルトラブック)プラットフォームを世の中に浸透させた取り組みへの理解も深い。「私自身は、割とプラットフォームと一緒にいたので、古き良き時代、今の激変する業界もわかっているつもり」(上野氏)という。

  • セントリーノやウルトラを目指し「Evo」を育てたいインテル、今週末には秋葉原イベント

    懐かしいウルトラブックとセントリーノのノベルティを手に、「Evo買った?」と人の噂になるくらいにしたい、というのが今の上野氏の野望なのだとか

いちユーザー目線で思い出しても、ウルトラブックの「ウル虎」や、セントリーノの「セン鳥ーノ」といったイメージは、今でも覚えている人が多いのではないかと思う。当時、複雑なスペックなど意識せずとも、「Centrino」プラットフォームのPCであれば「インターネットにワイヤレスでつながるパソコン」だったし、「Ultrabook」であれば、「薄くて軽くて速いパソコン」だと、ユーザーが自らの体験がどう変わるのかをすぐに感じ取ることができた。だから当時は、お店で「外出先でインターネットを使用したいから、Centrinoください」と指名できるような状況が生まれた。

上野氏は、「Evo」をこれから、「Centrino」や「Ultrabook」のように、「指名」してもらえるようなプラットフォームにすべく取り組むとしている。Evoプラットフォームのパソコンであることを示す「バッジ」を取得するためには、高水準のスペック要件などを満たす必要があるため、バッジは生産性の高いPCであることを保証してくれるが、CentrinoやUltrabookに比べると、それで何が出来るのか? というイメージのフォーカスは甘かったかもしれない。

Evo PCがあれば「素敵なことがはじめられる」

Intelの共同創業者のひとり、ロバート・ノイス氏の生前の言葉で、「Do Something wonderful (素敵なことをはじめよう)」があるという。インテルのテクノロジーのすべては、人々の生活を豊かにするためにあり、マーケティング活動でも「これを忘れないようにしている」(上野氏)そうだ。だからEvoは、ユーザーが「素敵なことがはじめられる」プラットフォームになっているという。

  • 「素敵なことをはじめよう」というロバート・ノイス氏の言葉

Evoプラットフォームでインテルが特に打ち出す「素敵なこと」は2つあるといい、それが「コンテンツ制作」と「ゲーミング」だそうだ。その浸透のために、Evoの登場から今年にかけて、インテルは2つの大きなプロジェクトを立ち上げている。

  • インテル Blue Carpet Project

ひとつは「インテル Blue Carpet Project」。これはクリエイター市場に向けたプロジェクトで、インテルが次世代を担うクリエイターを支援するというもの。クリエイターを支援することで全体の底上げを行い、コンテンツが多くの人に届くようにするという目的も持っている。日本においては、国内のトップクリエイターが世界で活躍できるよう手助けし、その活躍によって次世代のクリエイター、学生らの「できるかも、やってみよう」という機運を高め、成長を後押したいという活動になっている。

  • こんなことができるんだ、こんなことをやってみたいをインテルが応援する

国内のクリエイターに対し具体的には、機材環境を細かく聞いて回ったり、使用するアプリケーションの最適化の努力をしたり、様々な課題の解決に取り組んだり、「地味な作業だがしっかり寄り添う活動」(上野氏)をしているそうだ。この市場にがAppleという非常に手ごわい競合がいるわけだが、「クリエイターと本当に長期にわたっての関係性を築きたい。そして、インテルがいてよかったという存在になりたい」(同)という目標をもって、この地味な取り組みを積み上げているそうだ。

現状ではまだ、「Windowsベースではクリエイティブな作業はできない」と思っている人が、意外と多いのだそう。だが、例えば3Dとかゲーム開発とか、実はWindowsベースで最適化が進んでいる分野もあり、乗り換えてもらいやすい状況は整っていると、上野氏は説明する。またインテルプラットフォームの良さは、オープンプラットフォームであることだといい、そのため、クリエイター同士で、コンテンツのジャンルも超えてつながり、さらにその成果を見た人が、自分も参加したいと思えるような、オープンなコミュニティを創れたら面白い、という考えもプロジェクト内で出てきているそうだ。

  • インテル Blue Community Project

もうひとつのプロジェクトが「インテル Blue Community Project」。これはPCゲームのパートナーとの関係構築を目指すプロジェクトだ。ちなみに今年は、同社CEOのパット・ゲルシンガー氏も「インテルにとってゲーミングはトッププライオリティ」と話すなど、近年のインテルは、ハードウェアとしてGPUの開発に本腰を入れたり、ゲームデベロッパーとの連携を強めたりと、ゲーミングPCにとても注力している。

日本では、ゲームと言えば比較的にコンソール機(プレステやSwitchなど)が強いが、国産大型タイトルでもPC版が用意されたり、ゲーミングPCやeスポーツの認知度が一般化したり、潮目が変わってきた感がある。上野氏は「日本のゲームは、優れたグラフィックスや音楽が、アートとしても成り立っている業界」という認識だ。このコミュニティを通して、日本のゲーム業界が、国内のPCゲームの活性化によって世界で戦う土壌を手に入れるという狙いもあるのだろう。第一歩として、日本でもPCでのより豊かなゲーム体験を浸透させ、まずは「PCでもゲームができるんだ」と人々にわかってもらうよう取り組むそうだ。

  • 写真は今年の東京ゲームショウのインテルブースの様子。多くのゲーミングPCと、多くの(そして有力な)PCゲームタイトルを体験できるブースとなっていた

上野氏はここで、過去を振り返り、東京オリンピックの種目にeスポーツが採用されるかも、という話が盛り上がっていた頃の話、国外で、「日本はゲーマーが凄く多いのに、PCでゲームする人が少ないよね」と言われ、課題を感じていたそうだ。当時、コロナ禍前の東京ゲームショウに、インテルも小さなブースを構えたが、その頃はゲームメーカーもPCゲームには懐疑的。そこから、メーカーにPCゲームをつくりましょうという働きかけ、同じ考えを持つメーカーやパートナーとの協力を続け、今年の東京ゲームショウでは、実にたくさんのPCゲームを紹介することができたという、実感を得たそうだ。今では、PCゲームのプレイヤーはどんどん増えており、「コンソールを超えるんじゃないかという勢い」(上野氏)だそうだ。Blue Community Projectは「ようやく花開く」集大成として取り組みを加速する、つまり国産AAAタイトルが続々誕生、なんて夢にも近づいているのかもしれない。

今週末、11月19日~20日に東京・秋葉原で久々のユーザーイベント

そして、第13世代Intel Coreの発売で、環境が一変したこのタイミングで、インテルは東京・秋葉原のAKIBA SQUAREを会場に、最新PCのパフォーマンスを体験できるイベント「圧巻のパフォーマンスを体験しよう!TOUCH & TRY EVENT」を開催する。開催期間は11月19日・20日の2日間だ。最新PCの威力を一気に体感できるインテルのイベントが、コロナ禍前のような姿で、久々に秋葉原に帰ってくる。イベントの内容はこちらの告知記事を参照いただきたい。

  • 今週末、第13世代Intel Core搭載PCのタッチ&トライイベントを秋葉原で開催

このイベントに関連して、上野氏は、「PCを選ぶ」ことが「ワクワクドキドキ」することなんだと訴求したいと話していた。「かなえたい夢、やりたいこと、その実現に必要な道具を選ぶことは、楽しいことのはず」という。ただ、「何をどう選べばよいか、例えば量販店に行けばPCがずらっと並んでいて、よくわからなくなってしまう」という現状は少なからずあり、課題と捉えているそうだ。

これに対しインテルのマーケティング活動としては、「Evoのバッジが貼ってあるパソコンから選んでね」から、「○○がやりたいからEvoください」と名指ししてもらえることを目指すそうだ。CentrinoやUltrabookがわかりやすかったように、「これを買えば、ゲームと配信ができる」など、わかりやすい店頭展示の提案などが今のところ具体化しつつあるようだ。

  • 例えば「やりたいこと」基準で店頭にPCを展示するというアイデア。社内に売り場サンプルをつくって、販売店向けの内覧会もやってみたいと上野氏

  • 年末商戦はゲームとクリエイティブがキーワード