東プレの高級キーボード・REALFORCEシリーズに、「REALFORCE R3S」という新機種がひっそりと追加されました。主力のREALFORCE R3に代わる新型というわけではなく、R3登場後もラインアップを絞りつつ継続販売されていたREALFORCE R2を置き換えるマイナーチェンジ版です。

一見地味な変化のように見えて、注意深く観察すると「これを待ってたんだよ!」という人も意外といそうな本製品。今回は、日本語配列/テンキーレス/キー荷重45g/非静音の「R3SC31」(直販価格20,900円)というモデルを試用しました。

  • REALFORCE R3S(R3SC31)

    REALFORCE R3S(R3SC31)

見た目はほぼR2、短くなったスペースキーに注目

ラインアップは今のところ日本語配列のみで、フルサイズ/テンキーレス、通常/静音スイッチ、キー荷重(30g/45g/変荷重)、ボディカラー(ブラック/スーパーホワイト)を選択できる12種展開です。接続方法はR2シリーズと同様に有線(USB)のみとなります。

REALFORCE R2の形状を踏襲しており、REALFORCE R3と比べると奥行が約2cm短く、幅も約1cm狭いため(テンキーレスモデルの場合)、狭いデスクでも取り回しやすいサイズです。そして、無駄のない印象を与える直線的なデザインが好みという人も少なくないでしょう。

  • サイズは約369×142×39mm/1.1kg(テンキーレス)。R3シリーズよりも奥行が狭くコンパクトだ

    サイズは約369×142×39mm/1.1kg(テンキーレス)。R3シリーズよりも奥行が狭くコンパクトだ

一目見て、外観だけでR2とR3Sの見分けがつく人はきっとかなりのREALFORCE通。よく見ればスペースキーが4.25uから3.5uに短縮されており、ここはR3シリーズに近付いています。

R2は日本語配列のキーボードとしてはスペースキーが長く、両サイドの変換/無変換キーがホームポジション(F/Jキー)の真下から大きく外れてしまうため、操作性の面で不満の声も聞かれる部分でした。筆者自身「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」の元ユーザーですが、使い始めはやはり違和感があったことを覚えています。R3やR3Sでは一般的な日本語配列のキーボードに近い長さとなり、馴染みやすくなりました。

  • REALFORCEの日本語配列モデルのスペースキーは、初代からR2で長くなり、R3で再び短縮された。R3SではR3相当の3.5uサイズとなっている

    REALFORCEの日本語配列モデルのスペースキーは、初代からR2で長くなり、R3で再び短縮された。R3SではR3相当の3.5uサイズとなっている

REALFORCEのキーキャップの刻印には、レーザー印刷と昇華印刷という2種類の印字方法が使われています。昇華印刷とはキーキャップの樹脂にインクを深く染み込ませる印刷方法で、コストはかかりますが印字が消えにくいということで上位モデルを中心に採用されています。比較的安価なR3Sは、どのタイプを選んでも通常のレーザー印刷仕様です。

過去製品では、レーザー印刷はABS素材、昇華印刷はPBT素材というように、印刷方法とセットでキーキャップの素材も差別化されていました。R3やR3Sではレーザー印刷モデルにもPBT素材が使われるようになり、指に吸い付くような質感で摩耗耐性も高いものになりました。旧型のレーザー印刷モデルを想像しつつ手に取ると、昇華印刷モデルに近い期待以上の高級感があります。

「REALFORCE CONNECT」で全キー入れ替え&4段階APCに対応

見た目はほぼREALFORCE R2のままですが、中身はR3シリーズの機能を取り入れ、現行世代の機種にも見劣りしないものに進化しました。主な変更点としては、専用ソフトウェア「REALFORCE CONNECT」を使ってキーマップを自由に入れ替えられ、4段階のAPC機能(アクチュエーションポイントチェンジャー)も使えます。

R2シリーズではCaps Lock/Ctrlキーのみ入れ替え可能でしたが、R3SはR3シリーズと同様にすべてのキーの機能をカスタムできます。

  • REALFORCE CONNECTのキーマップ設定画面。下のリストから設定したい操作を選び、上側の図にドラッグ&ドロップすると設定できる

    REALFORCE CONNECTのキーマップ設定画面。下のリストから設定したい操作を選び、上側の図にドラッグ&ドロップすると設定できる

後述のAPC機能も含めて、REALFORCE CONNECTで設定した内容はソフトではなくキーボード本体に記録されるため、設定時に使ったPCとは別のPCにつなぎ変えてもそのままの設定で動作します。自宅のPCで好みの状態に一旦セッティングしておけば、自由にソフトウェアを追加できない会社のPCでも快適に使えるというわけです。

APCはキーを押し込んだ際に反応する深さを変えられる機能で、R2シリーズのAPC対応モデルでは3段階のところ、R3Sは0.8mm/1.5mm/2.2mm/3.0mmの4段階に設定の幅が広がりました。タイピングスピードを重視するなら浅め、操作の確実性を重視するなら深めというように、自分のスタイルに合ったキーボードに仕上げられます。

  • REALFORCE CONNECTのAPC設定画面。初期値は2.2mmとなっている

    REALFORCE CONNECTのAPC設定画面。初期値は2.2mmとなっている

エントリーユーザーもこだわり派も注目の隠れた逸品

ここまでは「R3よりR2が好き」というこだわり派のユーザーにおすすめできる正常進化版という目線でお伝えしてきましたが、見方を変えればREALFORCEシリーズの入門機というポジションを担う機種でもあります。

REALFORCEといえばやはりキーボードの中では高級品。有線/無線のどちらでも使えるハイブリッドモデルが中心となっているR3シリーズから選ぶなら、ほとんどの場合は3万円以上の出費を覚悟しなければなりません。

しかし、旧モデルの資産をうまく活かしながら最新世代の機能を取り込んだREALFORCE R3Sなら価格はぐっと下がって20,900円~23,540円。それでもキーボード沼にハマっている人を除けば勇気のいる値段だとは思いますが、メカニカルキーボード+αのコストで選べるとなればだいぶ現実的な選択肢になってきます。

  • 普段の業務に利用している「Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S」と

    普段の業務に利用している「Happy Hacking Keyboard Professional HYBRID Type-S」と

最後に、購入を後押しする“悪魔のささやき”をしておくと、REALFORCEをはじめとする静電容量無接点方式のキーボードは単に打ち心地が良く作業がはかどるというだけではなく、スイッチ寿命5,000万回以上という耐久性の高さもメリットです。

仕事柄、REALFORCEやHHKBを愛用している編集者やライターの知人は多数いますが、人並み以上の文字数を日々タイピングしているはずの彼らでさえ10年以上使い続けられている例を何人も見ています。

安価なキーボードを数年おきに買い直すか、高価でもはるかに長持ちするキーボードを思い切って買ってしまうかと考えると、実は意外と懐に優しいようにも思えてきます。それが主力モデルの2/3の価格となればなおさらで、REALFORCE R3SはこれからREALFORCEを使ってみたい方にもおすすめできる機種です。

  • 今回お借りした「R3SC31」は非静音モデ

    今回お借りした「R3SC31」は非静音モデル。普段は同じ静電容量無接点仕様ながら静音スイッチのキーボードを使っているが、静音仕様とて無音ではないため、不必要な底打ちに注意すればさほどうるさくは感じなかった。ただし差額は2,000円程度なので、オフィスなどの共有スペースで使うなら静音仕様をおすすめする

  • ステップスカルプチャー構造を採用しており、横から見ると一段ごとに異なる角度が付けられている

    ステップスカルプチャー構造を採用しており、横から見ると一段ごとに異なる角度が付けられている

  • REALFORCE CONNECTにはキーマップやAPCの設定機能のほか、総打鍵数や使用頻度の高いキーが分かるヒートマップ表示機能もある

    REALFORCE CONNECTにはキーマップやAPCの設定機能のほか、総打鍵数や使用頻度の高いキーが分かるヒートマップ表示機能もある