4月29日~30日の2日間、幕張メッセで「ニコニコ超会議2022」が開催中! 新型コロナウイルスの拡大によってオンライン開催を余儀なくされていた前回、前々回を経て、ついに今年はニコニコ超会議が幕張メッセに帰ってきました。キャッチコピーには『「ただいま。」「おかえり。」』とついており、オフライン開催成功への強い思いが感じ取れます。
さまざまな企業から多くのブースが出展していますが、この記事では主にKADOKAWAが出展している『超ダ・ヴィンチストア by KADOKAWA』について紹介します。なんでも「VRやメタバースでの書店再現、AIによるリコメンドなど、DX化された未来の書店を体験できるブース」になっているとのこと。出版社が表現する未来の書店とは、どのようなものなのでしょうか。
「超ダ・ヴィンチストア」でVR書店を体験!
そもそも「超ダ・ヴィンチストア」とは、KADOKAWAが所在するところざわサクラタウンにあるリアル書店「ダ・ヴィンチストア」をVRで再現したもの。DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用し、KADOKAWAがイメージするサステナブルな未来の書店を表現した、と特設ページで紹介されています。
筆者は紙で本を読むのが好きなので、書店にもよく通います。紙媒体の本をネット通販で買うことはあまりなく、電子書籍もかなりやむを得ない場合以外使いません。とはいえ最近は「少年ジャンプ+」「ヤンジャン!」での初見無料タイトルを楽しむことも増え、電子書籍にやや親しみを感じてきたところ。そんな背景もあって、今回KADOKAWAが表現する“未来の書店”が気になったというわけ。
そんな超ダ・ヴィンチストアは、HALL 4の入ってすぐのエリアに出展しています。話題の新刊が外壁にあしらわれており、他社のシンプルなブースからは大きく異彩を放っていました。
ナツネイターという命名でピンときた人もいるかも知れませんが、これは選択肢から人物を類推するシステム「アキネイター」をフィーチャーしたもの。やり取りに加え、表情解析を用いてぴったりの本をオススメしてくれます。
「どんなジャンルが好きか」「どんな本を読むか」などの質問や、「どんな表情をしているか」という要素からオススメの書籍を紹介してもらえる「ナツネイター」。オススメしてもらえた本は現地で購入でき、家に届けてもらうことも可能です。もしオススメに不満がある場合は、KADOKAWAが刊行するほぼすべての書籍からほしい本を探せる「全冊検索」を使いましょう。
なんといっても、目玉はVR系のコンテンツ。ところざわサクラタウンのダ・ヴィンチストアを仮想空間上に再現した「メタバース書店」や、角川武蔵野ミュージアムの本棚劇場を仮想空間に再現した「VR本棚劇場」のデモを体験できます。大変恐れ入りますが、スクリーンショット等の撮影を行えなかったので、文字での紹介となることご了承下さい。
ちなみに、「VR本棚劇場」はOculus Quest 2を使えば家でもVRで体験可能。「メタバース書店」なら、スマートフォンで実際に歩き回ることもできます。動作環境やアプリのダウンロードについては、特設サイトをご確認ください。
個人的にとても関心があったメタバース書店は、仮想空間で本屋を再現するというコンセプトに割と忠実で感心しました。試し読みできるタイトルはリアル書店よりもはるかに充実しており、デジタルであることの強みを感じます。空間の制限がないため、すべての本が面陳列(表紙を前に向ける陳列方法で、リアル書店では場所をとるため多用しない)されている点も新鮮です。
本にはポップアップが表示され、本を読んだ人の感想を買う前に見ておくこともできました。ちなみにKADOKAWAは「読書メーター」の感想をプロダクトページに表示しているので、おそらくメタバース書店のポップアップも読書メーターから引用したものだと思います。
ただ、実験的な試みとはいえ少し気になる点もありました。1つめは、メリットにも挙げていた面陳列です。現実の書店では棚にぎっちりと書籍が詰まっているため、これに比べるとメタバース書店の本棚はスカスカに感じられました。VRでは視点移動に困難があるためか、平積み棚がなかったのもやや物足りません。もし本格的に書籍を買う体験そのものをDXするつもりなら、本棚(商品陳列レイアウト)そのもののUI/UXをデザインし直す必要があると思います。
2つめに気になったのは、書店員の不在を強く感じた点です。というのも、紙媒体の本をリアル書店で買うことに固執する筆者にとって、書店員が売り手の立場から作るポップや売り場がとても重要だからです。出版社でも読者でもない第三者視点の情報にとても価値があると考えており、他では代替できないユニークな要素だと思っています。今回のVR書店の体験は、逆にリアル書店での書店員の存在を強く感じた体験になりました。
書店をDXするのか、書籍購入体験をDXするのか
「超ダ・ヴィンチストア」を体験してみて、書店のDXというより電子書籍販売サイトのVR化ではないかというのが素直な感想。リアル書店が読者に対して発揮している役割はあまり表現されておらず、現段階ではリアル書店に取って代わるものにはならないと感じます。もしなにかの機会に次なる書店のDXが試みられるなら、リアル書店のどんな要素がユーザーに作用しているかを、より深く検討してみてほしいと思いました。