Dropbox Japanは4月14日、バックアップソリューション「Dropbox Backup」の提供開始にあたっての製品発表会をオンラインで開催しました。プレゼンテーションでは「Dropbox Backup」の概要と、それを支えるDropboxのインフラ・テクノロジーが紹介されました。
ユーザーのニーズにこたえる「Dropbox Backup」
冒頭には代表取締役社長の梅田成二氏が登壇。同氏は「Dropboxが創業してから15年の間に、デジタルエコシステムは急速な発展を見せ、コンテンツがアプリの中やブラウザのタブなどに分散するようになりました」とデータを管理することがますます難しくなっている現状を語ります。そんな中でDropboxは、ユーザーがコンテンツを整理し作業を円滑に進められるよう、Dropboxの機能を拡張してきました。その最新のソリューションが、このたび発表された「Dropbox Backup」というわけです。
そして同氏は、同社が行ったアンケートの、クラウドサービスの用途・利用目的を尋ねた設問の回答を紹介。上位の3項目を、データの保存やバックアップに関する項目が占めていることを示し、このソリューションがユーザーのニーズにこたえたものであると語ります。そして本日の技術発表では、「Dropbox Backup」」を紹介するとともに、その機能を実現するための課題や、それを解決するためにどんな技術を実装してきたかを説明したいと話しました。
信頼性と拡張性を向上させるため、「デジタル負債」解消を断行
梅田氏に続いて登壇したのは、アジア太平洋・日本地域統括ソリューション本部長の岡崎隆之氏です。
Dropboxのユーザーは全世界で7億人。データ総量は数エクサバイトにのぼるそうです。この多くのユーザーと膨大なデータを支えるのが、「Magic Pocket」と呼ばれる自社設計/自社運用のストレージです。このストレージには、高密度のSMR(シングル磁気記録)方式のドライブを採用しています。2019年の導入当時、ペタバイト単位の運用は世界初だったそうですが、その後も順調に運用を続けているとのこと。このドライブに高速なネットワークを接続し、世界中どこからでもアクセスしても数テラビット単位のデータ転送を実現しているそうです。
「2030年までにカーボンニュートラルを実現する」というサステナビリティ対応についても紹介。その最初のマイルストーンとして、データセンターの熱抑制設計、ストレージの制御などにより、ストレージサーバーのカーボンニュートラルを達成したといいます。制御の一環として、アクセスの少ないディスクに対しては回転を停止するようなことも行っているとのことでしたが、ユーザーのエクスペリエンスを損なわずに消費電力を抑制するための制御は非常に難しいものなのだそうです。
各データセンターの電力については、その源が再生可能エネルギーであるか化石燃料であるかをモニターしており、ストレージサーバーは現状でも100%、再生可能エネルギーでまかなえているそうです。今後は他のサーバー群も再生可能エネルギーへの移行を進めていくとのことでした。
高効率化/高品質化のにはAIを活用。たとえばさまざまなファイルタイプに対応したプレビュー機能にも機械学習を活用しており、その省エネルギー化によるコスト削減は年間170万ドル規模にもなっています。
また、創業初期に作られたプログラムコードが残存していることによるデメリットを解消するため、古いコードを新しいコードで置き換える作業も進めています。「デジタル負債の解消」と呼ぶこの種の作業には岡崎氏自身も前職で関わったことがあるそうで、「感慨深い」「問題なく動いているシステムを書き換えるのは勇気がいる」と語っていましたが、プログラム書き換えにより拡張性は向上し、このたびの「Dropbox Backup」もその恩恵を受けているそうです。
バックアップにまつわる“3つの誤解”
このようなインフラ/テクノロジーを背景として登場する「Dropbox Backup」を紹介するにあたり、岡崎氏は「バックアップに関する誤解というのは、だいたい3つに集約されます」といいます。それは「クラウドよりローカルのほうが安全」「クラウドよりローカルのほうが安い」「バックアップはとれているから心配ない」という3つです。
こういった誤解に対して、岡崎氏は「バックアップの適切な運用は難しいのです」と言います。その理由は、機器故障、壊れたバックアップでの上書き、保管場所の確保・運用の手間、バックアップ忘れ、復元待ちの長時間化など多岐にわたります。
これらを考えると、先の3つの誤解はやはり誤解であり、クラウドよりもローカルのほうが安全かつ安価とも言い難いし、現在利用されているバックアップが十分なものとは言えない場合も多いのでは――というわけです。
そういった問題を解消するのがクラウドバックアップということになります。信頼性の高いインフラと専任チームによる運用管理のメリットを享受でき、自動バックアップ/無制限の世代数管理でバックアップ忘れや壊れたファイルによる上書きを回避。リストアからの復元も比較的容易になります。
シンプルで安全、復元も迅速な「Dropbox Backup」
そういったクラウドバックアップのメリットを提供できるサービスが「Dropbox Backup」です。先に挙げたようなローカルバックアップに対するクラウドバックアップのアドバンテージはすべてカバーします。
提供形態は2つ。Dropboxの有料プランに加入していないユーザー向けの「Dropbox Backupプラン」は、コンピューター1台と外部ドライブ1台が対象で、バージョン履歴は30日分残すことができ、容量は無制限です。またこのプランに加入すると、バックアップ分の容量以外に、2GBのクラウドストレージストレージが利用できます。
既存のDropboxの有料プランに加入している場合は、デバイス数/バージョン履歴/容量上限は通常のDropbox利用の制限に準じるとのことですので、制限や容量は従来どおりのまま、面倒なくバックアップを行える管理機能が新たに利用できるようになったと考えればよいでしょう。
「Dropbox Backup」はあくまでもコンシューマー向けのサービス
サービス紹介後の質疑応答では、「ファイルサーバーでの利用は可能か」という質問もあったが、岡崎氏は「サポートしているプラットフォームはクライアントPCを想定しており、サーバーOSは想定していません。外付けドライブも、WindowsのNTFSやMacOSのAPFSなどのファイルシステムを採用したUSB等で直接接続されているドライブに限定しており、NASなどは対象としていません」とのこと。あくまで今回のサービスはコンシューマー向けのものだということです。
また、PCの故障などの際に、バックアップを行ったパソコンとは別のパソコンにリストアを行うことは可能かという質問に対しては、「新しいパソコンでDropboxにログインしていただきますと、作成済みのバックアップからリストアするかを聞かれるようになっており、そこでリストアが可能です」との回答でした。
「すでにDropboxをバックアップとして利用しているユーザーは多いと思うが、そういうユーザーにとってDropbox Backupのメリットとは?」と問われると、「私自身もDropboxをバックアップに利用しているのですが、今回外部ドライブのバックアップができるようになったことが大きな違いです」とその利点をアピールしていました。