のっけから自分語りで恐縮であります。
私、こうして本業としてPC関連ライターをやらせていただいておりますが、実は「ボードゲームデザイナー」みたいなこともしていたりします。とはいっても、個人の趣味としての同人活動なのですが。
その同人ボードゲームデザイナーにとって最も重要な頒布機会となる「ゲームマーケット2023春」が、2023年5月13日と同14日に東京国際展示場の西1ホール2ホールで開催されました。さて、ここでこの記事の中の時間をGW連休直前の4月下旬まで戻してみましょう……。
……さあ、私は今、ゲームマーケット2023春で頒布を予定している新しいボードゲームをデザインしている最中です。この時期、常識的なデザイナーなら印刷所からゲーム盤や駒、そしてルールブックなどが続々と納品され、後はパッケージの中に梱包するだけ、という状態になっているはずです。いやいや、最近の「仕事が早い」系デザイナーチームだったら既に製造はとっくに終わっていて、全力で宣伝しまくっているフェーズです。
それなのにそれなのに嗚呼それなのに。
私の前には「出来上がったボードゲーム」どころか「ボードゲームのパーツ」なんて何ひとつありません。それどころか、印刷所に渡す入稿データさえ「1バイト」も出来上がっていなかったのです。
「イベント当日の朝にでき上がっていればいいんだわ。それが同人のスケジュール感でしょ」
なんて、この期に及んでもどっしり構えていた私ですが、それはそれとして入稿データを印刷所に渡さなければならない期限は迫っています。どう考えてもこれから1週間は全ての時間を入稿データ作成に捧げなければならない。しかし、そんなときに限って本業で外出しなくてはならなかったりしたんですな。
もちろん外出中の作業用としてノートPCは持っていますし、ネットワーク接続さえ確保できればクラウドで入稿データにアクセスできます。ただ、いま使っているノートPCは解像度が1,920×1,080ドット(サイズは14型と程よいのですが)とAdobe系の編集アプリを快適に使うには“ちょっとだけ”狭い。
そして、重さが1.3kgと、最新のモバイルノートPCと比べるとこちらも“ちょっとだけ”重いのです(注:堅牢性を重視したモバイルノートPCでは1.3kgも十分軽量といっていい。これは筆者の超個人的な事情なのだが、少し前に大病を患ってから筋力が大幅に低下し、それ以降少しでも軽いノートPCでないと常時携行が難しくなってしまいました)。
んんー、どうしよっかな(と、軽く言っているが結構深刻な状況)。と、そのとき、奇遇にもマイナビニュース編集部から奇跡的なメールが。
「高解像度がウリのノーパソがありまして、LG gram Styleっていうモデルなんですけどレビューいけますか? よろしゅうです笑」
このLG gram Style、ラインアップに16型ディスプレイ搭載モデルと14型ディスプレイ搭載モデルを用意していますが、14型ディスプレイ搭載モデルは本体重量が999gとかなり軽量です。なおかつ、その上位構成では解像度が2,880×1,800ドットに達します。
え、これって重いものが持てない私でも、外でAdobe IllustratorやAdobe PhotoShopを“がっつり”使ってゲームデザイン作業ができるのでは。もしかしたら、入稿を間に合わせてゲームマーケットに新作を出せるのではないか?(今だから言えるけれど、この連絡をもらう直前まで新作落としたと思っていた)
かくして、自分の不都合な現実を評価用としてやってきたLG gram Styleを使って解決してしまおうという、“思いっきり公私混同”なノートPCレビュー記事計画が、ここに発動したのでありました!
解像度2,880×1,800ドットと超高解像度なLG gram Styleですが、ディスプレイサイズは14型。スケーリング設定を200%ぐらいにしないとフォントが視認できず、結局のところあまり広々と使えないんじゃないの、と思いがちですが、ディスプレイパネルに有機ELを採用したことで表示はかなりくっきりと見やすく、実際に使っていてもズーム設定150%、調子のいいときは125%でも十分にフォントを識別できます。これならば、作業効率を高めるためにAdobe系アプリでパレットをパカパカパカー!と開きまくっても快適に作業できます。
加えて、パネル表面が有機EL採用ディスプレイにありがちな光沢タイプではなく非光沢タイプであったことも、外出中における作業効率の維持という意味で助かりました。有機ELディスプレイを搭載するノートPCの多くは、なぜか光沢パネルを採用しているモデルが多いのですが、この場合、周囲の光や景色が映り込んで表示内容の視認を阻害することになります。
しかし、LG gram Styleが非光沢パネルを採用している点には助けられました。周辺の映り込みに邪魔をされることなく、また、ディスプレイのすみに置いたパレットの視認にも苦労することなく快適な作業環境を維持できたことは、特筆すべき事項です。
自分からディスプレイの表示内容が見やすい分には大いに歓迎なのですが、それはとりもなおさず、周りからもディスプレイの表示内容がとにかく見えやすくなってしまうということであったりします。発表前のデザインを周囲に見られまくりというのはちょっとどうなの?という状況。たぶん分かってくれる人が極端に少ない分野である自分のデザインを、人に見られるのはちょっとな…という思いが無視できません。
そんなとき、LG gramシリーズで導入している「LG Glance by Mirametrix」を有効にしておけば、ディスプレイ上に組み込んだ内蔵カメラ(1080p)でユーザーや周辺にいる人物を常時モニターし、視線の状況に合わせて画面をぼかす機能を利用できます。席を外したときやディスプレイから視線を外したときに周囲から盗み見られることがなく、外出時でも安心して作業を行えました。
14型ディスプレイを搭載しながらも軽いLG gram Style。そこで気になるのが、本体の堅牢性とキーボードの使いやすさでしょう。本体素材には航空機ボディ級のマグネシウム合金を採用しており、堅牢性では「MIL-STD-810H」に準拠したテスト(MIL規格が定める項目のうち、衝撃・落下、振動、高温、低温、低圧、砂塵、塩水噴霧を実施)を複数クリア。実際に使っていてもひ弱な印象は受けませんでした。
また、薄くて軽い(さらに底面積が大きい)ノートPCではボディの強度が不足しがち。キーボードをタイプするとボディがたわみ、キーボードのストロークやクリック感が足りずタイプが不快なモデルも少なくありません。
しかし、LG gram Styleはボディに十分な強度を与えているだけなく、キーを押し下げてもキートップはぐらつかず、かつ、ストロークを十分に認識し、そして、押し下げた指の力を確実に受け止めてくれます。総じてキータイプは快適です。
なお、本体搭載のインタフェースは、2基のThunderbolt 4(USB 4.0 Gen3×2 Type-C)と、1基のUSB 3.2 Gen2 Type-Aを備えるほか、microSD、ヘッドホン&マイクロ端子を用意しています。
なお、先日レビューした「LG gram 16 16ZB90R」では本体にHDMI出力を備えていましたが、LG gram Styleにはありません(16型ディスプレイモデルも同様)。無線インタフェースとしては、Wi-Fi 6EとBluetooth 5.1が利用できます。
ここで処理能力についても見てみましょう。LG gram Styleの14型ディスプレイ搭載モデルには、Core i7を採用したモデルとCore i5を採用したモデルが用意されています。
今回使用した評価機では、CPUに第13世代Intel Coreプロセッサの「Core i5-1340P」を搭載しています。Core i5-1340Pは処理能力優先のPコアを4基、省電力を重視したコアを8基組み込んでおり、Pコアはハイパースレッディングに対応しているので、CPU全体としては12コア16スレッドを利用可能。
ターボ・ブースト利用時の動作クロックはPコアで4.6GHz、Eコアで3.4GHz。TDPはベースで45W~64Wです。グラフィックス処理にはCPU統合のIris Xe Graphicsを利用し、演算ユニットは96基で動作クロックは1.45GHz。
処理能力に影響するシステム構成を見ていくと、試用機のシステムメモリはLPDDR4x-4266を採用しています。容量は8GBで、ユーザーによる増設は不可。ストレージは容量512GBのSSDで試用機にはSamsung製「MZVL2256HCHQ-00B00」を搭載していました。接続バスはNVM Express 1.4(PCI Express 4.0 x4)。
主な仕様 | LG gram Style 14Z90RS |
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CPU | Core i5-1340P |
メモリ | 8GB (LPDDR4-4266) |
ストレージ | SSD 512GB(PCIe 4.0 x4 NVMe、MZVL2256HCHQ-00B00 Samsung) |
光学ドライブ | なし |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU統合) |
ディスプレイ | 14型 (2880×1800ドット)非光沢 |
ネットワーク | IEEE802.11a/b/g/n/ac/ax対応無線LAN、Bluetooth 5.1 |
サイズ / 重量 | W313.4×D215.2×H16.8mm / 約999g |
OS | Windows 11 Home 64bit |
Core i5-1340Pを搭載した16ZB90Rの処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、3DMark Night Raid、CINEBENCH R23、CrystalDiskMark 8.0.4 x64、そしてファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを実施してみました。
ベンチマークテスト | 14Z90RS |
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PCMark 10 | 5249 |
PCMark 10 Essential | 10037 |
PCMark 10 Productivity | 6253 |
PCMark 10 Digital Content Creation | 6252 |
CINEBENCH R23 CPU | 8159 |
CINEBENCH R23 CPU(single) | 1552 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Read | 6430.47 |
CrystalDiskMark 8.0.4 x64 Seq1M Q8T1 Write | 2688.33 |
3DMark Night Raid | 13678 |
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) | 2939「やや快適」 |
搭載するCPUはミドルレンジの下位モデル、システムメモリの容量が8GBと、いまの基準から見ればAdobe系アプリを動かすにはちょっと控えめなように見えますが、特にストレスを感じることなく使えていました。
なお、バッテリー駆動時間を評価するPCMark 10 Battery Life Benchmarkで測定したところ、Modern Officeのスコアは11時間25分(Performance 4291)となりました(ディスプレイ輝度は10段階の下から6レベル、電源プランはパフォーマンス寄りのバランスにそれぞれ設定)。
バッテリー駆動時間は、公式データにおいてJEITA 2.0の測定条件で最大17時間となっています。内蔵するバッテリーの容量はPCMark 10のSystem informationで検出した値は69,840mAhでした。
外出先で使うときに気になる騒音と、薄型モバイルノートPCで注意したい表面温度を把握するために、電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行。CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パークレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになっています。なお、LG gramシリーズにはクーラーファンの回転数を制御するユーティリティ「LG Smart Assistant」がありますが、こちらは「正常」に設定しています。
表面温度(Fキー) | 44.7度 |
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表面温度(Jキー) | 39.0度 |
表面温度(パームレスト左側) | 28.4度 |
表面温度(パームレスト右側) | 27.0度 |
表面温度(底面) | 51.9度 |
発生音(暗騒音36.7dBA) | 48.7dBA |
パームレストは左右とも熱くなることはありません。ただ、キートップ、特にFキーを含めた左側が温かくなります。触れる時間が短いので熱い! とまではいきませんが、手のひらが何となく汗ばみます。底面は明らかに熱くなります。騒音は数値としてそれほど突出して高くありませんが、高めの音なので耳に入ってきやすいです。図書館など静寂な状況だと隣に人に聞こえてしまうこともあるかもしれません。
とにもかくにも。
今回試用したLG gram Styleのおかげで、日々外出を重ねながらも、その先々で入稿データの制作を続けたことで、数日後にはルールブックも含めた全ての原稿を印刷所に入稿でき(とんでもない超特急料金となりましたが)、めでたくゲームマーケット2023春で新作を頒布することができたのでありました。
先に述べたようにCPUとシステムメモリ容量が控えめな仕様でしたが、2,880×1,800ドットという解像度を1kg弱のボディに収めてどこにでも持ち運べ、かつ、有機ELのくっきり明瞭な表示と邪魔される隅々まで見やすい非光沢パネルのおかげで、処理能力以上にAdobe系アプリの使い勝手は良好でした。
屋外移動中におけるLG gramとAdobe系アプリの良好な関係は、いまから4年前にも体験していたものの、今回のLG gram StyleとAdobe系アプリの関係性はさらなる進化を遂げていると身を持って体験したのでありました。
めでたしめでたし。